Number 23
荻窪 トマト

カレーと漢方を突き詰めた境地。

数あるスパイスをそれぞれのマナー、分量で調合、調理。そのオリジナリティは、ざっくり括ってしまえば中国発のラーメンが日本で独自の進化を遂げているのと同じように、発祥の国インドを離れ、圧倒的進化を、やはりここ日本で遂げている、カレー。つまり調理人の数だけ味があり、もはや国民的食物と言って過言でないその広大な世界で、"聖地"と呼ばれている店がある。カレーの名店、荻窪「トマト」。

「カレーとシチュー、両方に使う食材だからですね」
 トマトはカレーの"聖地"であり、同時に、シチューでもかなりの人気を集める。
「カレーとシチューは、つくる行程がかなり違うのでやめようかと思ったこともありますが、シチューでその方々の顔が浮かんでくるくらい愛してくださるお客様もいまして、やめられないんですね」
 つくるのに2週間からかかるというシチューは、一度売切れてしまうと次までの時間も必要で、この日も残念ながらなく、どうか事前に電話でご確認を、とのこと。

「トマトの、なる時に一つに選定しないと、幾つもが鈴なりに連なってなる感じもよかったんです」
 28年前のオープン当初7種だったスパイスは、現在36種。今日まで一貫した、お店のカード裏にある「もっと美味しく、健康に良いものを」の姿勢が凝縮したカレーの深く広がる風味は、カレーと漢方を突き詰めて辿り着いた境地。常連さんがほぼ皆頼む"野菜入り"は、器からこぼれそうに野菜がカレーに盛られ、しかし女性もペロリとたいらげる。315円で250g相当の野菜が入るのもすごいが、そもそも、たくさんの野菜が煮込まれ、溶け込んだルーの栄養価もすごいはず。
 「何より、お客さんに喜んでいただくことが一番です」とおっしゃるマスターと奥様の人柄が、口の中で、時々歯に当たっては言葉にできない味わいを織り成すスパイスを通じて、染み渡る。

荻窪 トマト
住所:東京都杉並区区荻窪5-20-7 吉田ビル1F
TEL:03-3393-3262
営業時間:11:30〜13:30、18:30〜20:30(売り切れ次第終了)
定休日:木曜日


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食べる前から口内によだれを溢れさせ、一瞬苦味とも思える直後にやってくる、スパイスが絡み合い、深く広がる旨味をつくる36の原因たち。
福神漬けも添加物等無しで、マリネの玉ねぎは肉厚なものを産地から厳選。
レーズンとチーズ入りのご飯が、スパイスの中のマイルドさを演出。
骨もそのまま、豪快なチキンカレー。
どの角度からも体に優しいであろう、季節の野菜カレー。
それにチーズを乗せると蓋をしたようになる。チーズもスパイスほどではないが、何種類もブレンド。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
皆既日食以上のピークのないまま夏も終わり、それ以上のピークがないまま今年いっぱい終えてしまいそうで、すべての運を使い果たしたか心配な日々はmadfoot.jp「独壇場」にて。