vol.42

BEAMS fennica buyer Interview

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衣・食・住。ライフスタイルの全てを豊かに。
「クオリティ オブ ライフ」という概念に先鞭をつけた二人の物語です。

デザインとクラフトの橋渡しをテーマに、ファッション、家具、雑貨、食品など多種多様なアイテムを展開するビームスのレーベル「フェニカ」。流行を一歩先取りするようなセレクト、奥行きを感じさせる審美眼には業界の注目が集まっています。今回はバイヤーである、北村恵子さんとテリー・エリスさんの二人にその辺のお話を伺いました。司会進行役はお馴染みビームス青野賢一さんにお願いしました。

洋服だけではなく、ライフスタイル全体に気を配るということ。

青野賢一氏(以下、青野。敬称略):フェニカというレーベルは、「デザインとクラフトの橋渡し」ということをキャッチフレーズに展開していますが、そもそものスタートは、またもうちょっと違うところから、ビームスとの関わりが始まっていますよね。

北村恵子氏(以下、北村。敬称略):そうですね。

青野:僕は80年代の後半から、二人がやっていることを割と近いところで見てきて。そういう中で改めて、80年代の後半くらいから今に繋がってく一連の流れというか、考えの変化のようなものが聴けたら、面白いかなと思ってます。

テリー・エリス氏(以下、エリス。敬称略):わかりました。

青野:当時からロンドンをベースにして、最初はあまり日本に紹介されていない、コアなデザイナーを日本にどんどん紹介してきていましたね。で、そのうち「ビームス モダンリビング」というセクションができました。それが94年位のことだと思うんですけど。まずはその辺をざっくり教えてもらえますか?

北村:最初はファッション中心でやってきたんですけど、94年って自分たちも30代半ばにさしかかる頃で。洋服以外のデザインにすごく興味が湧いてきたんですね。と同時に、ビームスで学生の頃からお買い物してくださってるお客様も、家庭を持って、お家を持ってっていう時期になってきてますよね。で、そういう方たちも、もしかしたら家具や雑貨で、家族といる空間を居心地良くしたいと思ってるのかなって。

エリス:時代の流れとしても、オシャレでかっこいい服を着てるっていうことだけがファッショナブルということではなくて、関わってるもの全てに気を使っていこうみたいな感じになってきていた時期だと思います。

青野:僕らビームスにいる人たちは、やっぱりエリスと北村さんの影響って、すごく受けてると思うんですけど、お二人にとってファッション以外の分野に特別興味を持つようになったきっかけってなんだったんですか?

北村:タッシェン(TASCHEN)でずーっとすごいデザイン本とか出してる、ピーター・フィールっていう人がいて。そのフィールさんが、90年代の初めの頃にキングスロードにお店を持ってたのね。ミッドセンチュリーの家具が見られるお店は、当時ロンドンでそこしかなかったから、そこで見るもの全部が楽しくて。でもあの頃は私たち借家に住んでて。イギリスの家って家具付きでしょ。だから、全部が揃っちゃってるんですよ。

エリス: でも、いつかこういう物を手に入れようって、まずはビンテージのそんなに高くない物をちょっとずつ集めるようになりました。

北村:そう。なので、94年にモダンリビングを立ち上げる頃には、マットソン(ブルーノ・マットソン)とかウェグナー(ハンス・J.ウェグナー)とか、けっこう色々な物がありましたね。色々試してみないと不安だったから。で、自分たちの家を持ってからは色々テストとか実験みたいな感じで、じゃあこれ使ってみようかってやってました。それが95年くらいの時だったと思います。

青野:その辺が分かると、一連の流れを理解しやすいですよね。やっぱり変化がある時って、絶対きっかけがあるから。で、最初は北欧の家具を中心にスタート。昔から変わらない製法で丁寧に作ってて、デザインも時代に払拭されないで長く続いていて、かつモダンな物っていうのを中心にやってきたと思うんですけど。そこに辿りついたのはどんな流れだったんですか?

北村:まず当時は、洋服屋の中で家具を売るっていうことは、あり得なかったのね。他に前例がなかったから、スペースもすごく限られていて。その中で、洋服の隣に並べてもおかしくないもの。あと、日本の住環境を考えた大きさっていうのもすごく大事だったし。それとその時に日本で流行っていたものじゃないもの(笑)。そんなことをふまえてリサーチしていくうちに、北欧には昔と同じ製法、工房で作っているみたいなところがけっこう残っていて。日本に北欧ブームがきたのも、70年代とけっこう前だし、もう忘れられてるからいいんじゃないかって、北欧ピンポイントでいくことにしたんです。

エリス:当時東京には、モダン エイジ ギャラリーとミッド センチュリー モダンっていう二つのお店がありました。で、その二つのお店はアメリカものを中心に展開していたので、そこはやっぱり触らずにいようって。住み分けをしていかなければいけないから。その辺はすごく考えましたね。

北村:リサーチしていくうちに、北欧のものづくりする人たちと、日本のものづくりする人たちの考え方の共通点が、すごく見えてきたんです。だから、なおさら日本の家に北欧の家具を置いてもらいたいって思うようになって、そういうこともセレクトするのに当たって、背中を押してくれましたね。

エリス:でも、当時って北欧もの自体が全然ファッショナブルじゃなかったんです。なんていうか、お父さん、お母さんとかが使うイメージというか。だから少しリスキーなところもありました。

青野:確かに(笑)。

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旧知の仲である青野さんにインタビューアーを務めて頂いたおかげで、現場は終始和やかな雰囲気でした。ここには書けなかった興味深いお話もたっぷり伺うことができました。


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原宿にある「インターナショナルギャラリー ビームス」のメンズフロアの中にある、「フェニカ」のスペース。家具、洋服、雑貨、食品などバラエティに富んだ品揃えで僕らを楽しませてくれます。


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「フェニカ」にて展示販売されていた、ロッキングチェアー。期間中は7種類ものロッキングチェアーに実際に座り、触り、その質感を楽しむことができました。北欧家具との相性もバッチリとのことです。


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店内に置いてある商品一つ一つを丁寧に説明して下さった北村さん。それぞれに思い入れがあるようで、慈しむように商品に触れていたのが印象的でした。


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フェニカの定番「ラグハンドル トート」です。何度目かの再入荷を経て、今もショップにあるそうです。持ち手のフィンランドのヴィンテージ生地の布の組み合わせが一点一点異なります。


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エリス、北村両氏もお気に入りの「ラグハンドル トート」。制作はお馴染み〈吉田カバン〉製。白いキャンバス素材とカラフルな取っ手は夏にこそ持ちたい逸品ですね。

Photos_Tadayuki Uemura
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