vol.56

BURBERRY BLACK LABEL Special 3

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右近氏の目線で解剖! 今季の注目アウター
ダウンジャケット&ミリタリーコートの魅力と歴史に迫る。

雑誌「HUgE」ディレクターで、以前フイナム本誌でもコラムの連載をしていただいていた右近 亨さんにインタビュー。現在のトレンドを伺いつつ、今季の注目アウター"ダウンジャケット"と"ミリタリーコート"についてお聞きしました。それぞれのアイテムがもつルーツなどを交えたお話は、要必見! 今年の冬、アウターを着るのが楽しくなること間違いなしです。

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温暖化は進んでいるけど、いつの時代もダウンは必要!!

ーさっそくですが、右近さんがアウターを選ぶときの基準はありますか?

バーバリーマークが付いているかどうかじゃないですか(笑)。 これは余談なんですが、僕は北海道出身で、〈エンジニアド ガーメンツ〉のデザイナーの鈴木さんは青森出身で、彼も言っていましたけど、北海道、東北では"アウター"のことを「バーバリ」って呼ぶんですよ。今の若い子達は言ってないだろうけど、僕らの父親達の年代の人は、全てどのブランドのコートも「バーバリ」って呼んでましたね。昔、コピー機のことを「ゼロックス」と呼んだのと同じで少なくとも北海道、青森に住んでいる昭和30年代の子供の親はみんな言ってたと思いますよ。

ー[一同感嘆]

本題に戻りますが、どういうアウターを選んでいるかというと、北海道は1年の半分くらいアウターを着るので、ワードローブの基本になることが多いんですよ。なので、アウターって普通はそんなに持っていないものだと思うんですけど、ジャケットとかパンツとかと同じくらいの量を持っていて。なので、何を基準というよりは、ありとあらゆるカテゴリーのアウターが欲しくなるタイプです。実際に、〈バーバリー〉のトレンチコートも新品ではなかなか買えないので、古着でかなり持っています。40歳を過ぎてからは、時代がタイトなシルエットになってきたので、レディースも持っています。

ーワンシーズンどのくらいの量のアウターを買われるんですか?

それは言えないです(笑)。バカじゃないかと思うぐらい買ってしまうので。

ー(笑)。ということは、もちろんダウンもたくさんお持ちですよね?

そうですね。ダウンこそ1枚持っていればいいと思うんですが、毎年買ってしまいます(笑)。毎年ロケに必要だと思って買っていて、去年もロケがあったはずなので、持っていると思うんですけどね。やっぱり買ってしまうんですよね。

ーダウンお好きなんですね。

だいたいのアウターは全部好きです。僕がファッションを志したのが1970年代の中盤で、その時が世界的にダウンが登場した時期なんですよ。これは、僕が高校生のときにずっと読んでいた雑誌『MEN'S CLUB』なんですけど【写真右】。76年と77年のものなので、僕が高校3年生の頃かな。その前の年に『Made in U.S.A. catalog』という雑誌が出て、一気に本物のアメリカファッションが日本に広がって。その中に出てくるファッションは、今でいうアメカジのベースなんですけど、すごく衝撃的でしたね。ダウンベストを着たスタイルも出てくるんですが、かっこよかったですよ。さっきの余談と一緒で、45歳以上の人はダウンを「羽毛」って呼ぶんですけど、羽毛は布団っていうイメージがありましたから、それを着るっていうのがすごく奇妙でした。

ーダウンジャケットじゃなくベストが主流だったんですか?

最初は、ベストですね。その当時のアメリカのスナップを見てもそうだし。本当に急に出てきたっていう印象がすごく強くて、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも主人公が赤いダウンベストを着ているんですけど、過去に行って「お前なんで救命胴衣着ているんだ?」って言って笑われる会話があるくらいなんで、日本だけでなく世界のカジュアルシーンに突如出てきた衝撃的なアイテムだったんでしょうね。その当時の資料をみると、もちろんダウンジャケットもあって、探検家とか登山家に供給してはいたんですけど、街着としては合わなかったんでしょうね。そんなに寒くないだろっていう。そういう流れを目の当たりにしている世代なので、ダウンに対する憧れは強かったですね。かなり高かったですし。冬になってダウンが着れるっていうステータスは今だに感じます。

ー今年着られるご予定のものは、どういうものですか?

僕はウール素材のダウンを買ったんですけど、以前のダウンでは考えられないくらいオシャレになっていますよね。機能だけでなくちゃんとファッションになっていて。昔のアウターは、重いけど暖かさを求めるみたいなところがあったけど、ダウンは軽いのに暖かいっていうところが命題で、それがある程度クリアできたから、最近のはオシャレが加わっていて。

ー実際に〈バーバリー・ブラックレーベル〉のダウンをご覧になっていかがですか?

昔は、ダウンを着るとダルマみたいになりましたけど、軽くて本当オシャレですよね。このフェザーの感じもすごくいいですね。昔のこういう羽は、堅くて首にささっていましたからね(笑)。

ーストレッチがきいているものもあるんですよ。

ストレッチとかありえなかったですよね。あと、さっき言った70年代のアウトドア用に作られたダウンは、マッドブラックとか考えられなかったですよ。山に着ていけないだろ! みたいな。トレッキングシューズのヒモが赤になっているみたいに、遭難したときに目立つデザインっていう考え方ですからね。街着向けにどんどん進化していますね。最近暖かくなってきて、地球は温暖化でダウンを着る機会が減ってきているかもしれないけど、人間の心が冷たくなっているので、温暖化は進んでるけど、ダウンはいつの時代も必要ですね(笑)。

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プロフィール
右近 亨(Toru Ukon)/メンズファッション誌「HUgE」のディレクター。ファッションに対する強いこだわりと、幅広い知識で、業界内外に多くのファンをもつ。以前フイナムで連載していた「男の言い訳」は、歴代No.1の人気企画。再読は、メンバーページからバックナンバーをどうぞ。www.houyhnhnm.jp/member/login/

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右近さんがファッションに目覚めた高校生時代に読んでいたファッション誌『MEN'S CLUB』。右の表紙でダウンベストが着用されているが、この頃はまだ世界的にダウンが登場して間もない。

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4WAYで着られるタイプとマッドブラックでストレッチの効いたダウンジャケットを見た右近さん。「これは売れそうですね」と大絶賛。

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さらに、実際に着て着心地を確認。「軽いし、タイトなのにストレッチが効いているから、動きやすいですね」と、着用後の評価も上々です。

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