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もう、そういう時代じゃなくなったんだなぁって、そんな風に思いますね。(小西)

―ピチカート・ファイヴの解散から10年の間、音楽的な部分や人間的な部分、色々な変化があったと思うのですが?

小西:ひとつは、音楽業界の方が規模を縮小して、衰退しているとは言わないですが、今までの働き方とは変えなきゃなっていうのはありましたね。

―それはとても大きな出来事ですね。その他にも、つい先日の話だと地震があったり...

小西:ほんと、その通りで...この10年間ほんとうに色んなことを考えましたよ。あの、僕たち子供の頃って、基本的に小学校や中学校で教育を受けるとき、人は卒業して、学校出て就職するとしたら、基本的にひとつのところで一生仕事をする、って思いません?

―そうですね、なんとなくそういう風潮はありますよね。

小西:色々細分化はされていなくても、なんとなく一生ひとつの仕事をしていくのが当たり前だ、みたいなとこってあるじゃないですか? もう、そういう時代じゃなくなったんだなって、そんな風に思いますね。あのね、僕の両親が小さい印刷屋さんをやっていたんですけど、60歳の手前にパタリと辞めてしまって。まだまだ体力的には働ける人なのに、辞めちゃった。僕はそれをすごく残念というか、腹立たしく思いましたね。「働けよ」って(笑)

―完全にリタイアですか?

小西:そう。毎日テレビばっかり見てた(笑)で、僕が昔親父のレコードコレクションから盗んだレコードを、いきなり返せと電話を掛けてくるんですよ(笑)

―(笑)

小西:そこでね、思ったんですよ。僕は音楽の仕事をしていきたいと思っていたんですが、もしかしたら、業界からお呼びじゃなくなっちゃうかもしれない。そういう時代なんだ、と。そんなことを思った10年間でしたね。みなさんも、今とは別の仕事に就くなんて、想像しにくいじゃないですか?

―そうですね...

小西:子供に対して、仕事は一生ひとつだとか、結婚は理想だとか、そういう固定観念を卒業した新しい教育をしないといけないんじゃないかとは思いますね。ほんと、定年まで勤め上げて、少しずつ積み上げて、なんていうのは幻想だって小さいときに教えてあげた方がいいですよね。だいたい、童話なんてそんなことばっかり教えるじゃないですか。お父さん靴屋で、一生みんな幸せ、みたいな感じで(笑)

―なるほど、その通りですよね。そういった意味ではこの10年、9.11があって3.11の地震があって、と。ある種そういった当たり前の神話みたいなのが崩壊したディケイドでしたね。それは音楽業界も然りで。そうした中で、9.11の「Imagine」に始まり、3.11後のソロ・アルバム誕生に至る。小西さんにとっても、意味深い10年だったわけですね。

小西:そこまではまったく予想していなかったわけですが(笑)