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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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Ignorance is not innocence but sin.

2008.05.23

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 科学技術の発展、利便な製品の発明などにより人々の暮らしは、日進月歩に便利になった。電話がない時代、クルマがない生活、冷蔵庫や洗濯機、果てはエアコンや電灯なしで生活するなんてもはや考えられない。
作用には必ず反作用がある。
クルマやエレベーターは脚力を、エアコンは気温に対する耐性を、掃除機や洗濯機、食洗機などは労働を人から奪ってしまった。別に悪いと言っているわけではない。客観的事実だ。
テレビやDVDは楽しさを与えてくれる代わりに思考力を奪う。
世の中、便利に楽しくなればなるほど人間の身体的能力が退化していっている。こんなことで良いのだろうか。
興味深い記事があった。

字幕読めない若者急増

FujiSankei Business i. からの引用を貼っておく。

 若者の活字離れが進むなか、映画会社が洋画の字幕づくりに苦慮している。文字数を減らすだけでなく、漢字の使用を最小限にし、極力ふりがなをふる気の使いよう。「読み」だけでなく、中学生レベルの歴史的事実すら知らないというケースも。こうした事情を反映し、アニメだけでなく、実写映画でも吹き替え版が急増。映画業界では「若者の知的レベルがこれほど下がっているとは…」と驚いている。(産経新聞文化部 岡田敏一)

 日本初の字幕映画は1931年公開の米作品「モロッコ」。吹き替え作業の設備などが不十分で字幕という苦肉の策を取ったが、この作品の大ヒットで字幕が定着した。

 映画各社によると、戦前の字幕はスクリーンの右端にひとつのセリフで最大縦13字で3行だったが、戦後は10字2行とやや少なめに。人間が1秒に読めるのは4文字程度というのが理由だった。

 文字数が再び増えるのが1980年代半ば。ビデオレンタルが普及するにつれ、テレビでも見やすいようにと、スクリーンの中央下に最大横13字で2行の形式が定着した。

 しかし、ここ数年、13字の字幕を読み切れないという若者が増加。映画離れを食い止めようと、製作、配給会社では苦肉の対応を余儀なくされている。

 字幕づくりの現場では、10字前後で区切って行数を増やしたり、漢字を省いたり…。さらに、字幕を必要としない吹き替え版へシフトする動きもある。

 東宝東和では8月から10月の3カ月間で計3本のハリウッド大作を公開するが「吹き替え版を過去最大級の手厚さで用意する」と話す。ワーナー・ブラザース映画も「ハリー・ポッターシリーズの場合、吹き替えが6割で字幕版を上回っている。その他の作品でも吹き替えの比率は年々高まっている」と説明する。

 字幕以前の問題も。ある映画会社の製作担当者は「スパイ系作品の試写会後『ソ連って何ですか?』『ナチスって何ですか?』との感想が寄せられ、本当に驚いた」と打ち明ける。

 「スパイダーマン」シリーズなど計約1000本の映画の字幕づくりを担当したこの道約30年のベテラン、菊地浩司さん(60)は「知っていて当然の日本語を知らない若者が増えているようだ」と話している。

(以上)


ぼくらが学生の頃には吹き替えの映画なんてなかった。吹き替えについていけなければ映画を楽しめないという環境が普通であった。楽しむためには速読し、画面を追うという作業を同時にこなすしかなかった。木も見る森も見る、だ。
目に入った文字を瞬時に理解し、聞こえる言葉の抑揚で感情を判断し、画面で展開を知るという作業を同時にこなす。結構骨の折れる映画鑑賞である。
しかし最高のエンターテインメントを楽しみながら、右脳左脳に神経を行きわたらせ、さまざまに思考しながら物語を追うというのは、それはそれでなんとなく脳ミソの訓練になったのではないかと思う。
一方でいまの若者は子供の頃から吹き替えのサービスが始まっている。楽なサービスを知っている者にいまさら退行しているサービスを提供するのは無理がある。
20年後の日本人は、昭和の成人とはまったく違う人種になっているだろう。
それにしても「ナチス」や「ソ連」を知らないとは。日本がロシアやアメリカと戦争したことがあるなんてことも知らないだろうね。

無知は無垢ではない。罪である。
ーロバート・ブラウニング

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