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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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映画ミレニアム

2010.02.12

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「読んでから見るか、見てから読むか」。

 これは昔の角川映画のコピー。確か「人間の証明」だったか。良くできた物語は小説でも映画でも楽しいということだ。しかし、長編小説を映画にするとおよそ2時間のという尺の中に物語を詰め込まなくてはならないので、映画のほうが不利なような気がする。 

 あまり映画を数多く見る方では無いのだが、両方で楽しませてもらったと真に感じたのは、スティーブン・キングの「ショーシャンクの空に」(小説原題は、刑務所のリタ・ヘイワース)とスコット・B・スミスの「シンプルプラン」。他にもいくつかあったような気もするが、いまぱっと頭に浮かんだのはこの両作品。

 基本的に小説が先で映画が後、という見方をすることが多い。基本的にノベライゼーションは好きではない。

 シネマライズでミレニアムを観た。先週末金曜から月曜の朝にかけて読んだスエーデン産長編ミステリー小説の映画である。世界中で累計2100万部売ったと言う小説だけあって、小説は本当に面白かった。

 映画はハリウッドが作ったんではなく、作品同様スエーデン産。なので日本では配給が単館系というか、メジャー扱いではない。確かに日本で知られている俳優は皆無なので仕方な無いことである。どんなに売れた小説とはいえ、そんなもんである。

 映画は2時間半あまり。長い方だと思う。長く複雑に入り組んだ物語なので仕方の無いところだろう。それでもかなりの部分のハショリはあったし、原作では死んでない人が死んでいたり(自然死ね)、時短のための工夫が随所に見られた。そんなところが見所ではないのだが。

 そんなことよりも一方の主人公、ミカエル・ブルムクヴィストの造形が原作と大きく違うような気がしてそれがかなりの違和感になった。原作ではハンサムなプレイボーイで、会う女性とどんどん関係を持つ。おお、これぞ我々の考えるスエーデンのフリーセックスだ的存在なのであるが、映画のミカエルはかなりストイックなイメージ。その上、どう見てもハンサムとは言えないし、ユーモアのセンスもなさそうだし、体型もカッコよくない。冴えない、とはいえないまでもセクシーなジャーナリスト像を求めていくと落胆する。日本の女性にはあまり受けなさそうなので、こういうところもメジャーが買い求めなかった理由なのかも知れない。

 それでもぼくにはこの映画、とても面白かった。音楽が好きだったし、たぶんはじめて観たスエーデン映画だし、彼地の俳優さんたちの演技力の高さも総じて好ましかった。ちょっとネタバレになるのだが、最後の方に出てくる女性の日焼け具合というか、メイクでやってんのか分からないが、そういう細かいディテールのこだわりにも好感を持った。

 それにしても全編を通して、誰も笑うシーンのない、暗い映画である。リスベット・サランデル役の女性も微妙に可愛く、微妙にブサイクだし。そういう意味では文字通りリアルなキャスティングだななんて思った。これがハリウッドならまったく違うキャスティングと演出なんだろうな。

 エンドロールが終わった後で、第2部の「火と戯れる女」の予告編が流れる。たぶん観に行く。

 石光くんではないけど、五つ星中、星3つ。

★★★

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