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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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おれの行列

2013.06.03

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 地方からちょびっと遊びに来た友人などと話をしているとまれにだが「東京の人は並ぶのが好きだから」的な発言を耳にすることがある。仕方なく行列に並んでいるのではなく、並ぶのが好きだから並ぶという意味がそこには含まれている。ちょっと待て。それはどこから来ている話しなんだい?

 人の話を途中で腰を折るのも悪いし失礼なので話を続いて聞くと、ラーメン屋に限らず、カレー屋でも回転寿司でもなんでも東京の人は並んでいる。味なんか関係なく、むしろ並びたくて並んでいるみたいな暴論のようなことを言う人さえいる。そこでなんでそう思うのかと聞いてみると、「テレビで見た」というのである。

 このような会話とは交わる地点がこの先数年はなさそうなので、こちらとしてもあえてそれ以上の発言は差し控える。

 ミスリードというかなんというか。テレビ放送をそのまま疑いなく見て自分なりに曲解しているある。別にその人には罪はない。いやあるのか。それは分からない。最近の某大阪首長さんの発言問題に見られるような、話の交わらなさ。出口なしである。

 それはともかく、昨日日曜日。所要があり恵比寿へ出かけた。事前の予想では天気は曇りか雨、ということであったが、あに図らんや、空は晴れていた。気温もぐんぐんあがり、今夜はビールが美味そうだなんていう午後であった。

 恵比寿と言えばキッチン・ボン。昔の佇まいは店もそうだが、味自体もどっかいってしまった名店であるが、店のある五叉路から恵比寿駅へ向かう途中に大群の群衆がおしくらまんじゅうをしている。昔恵比寿の行列といえばらーめん香月だったが、いまではこちら。おれのフレンチである。

 店自体はもうみなさんご存知でしょうから説明しないが、平日は大体3時すぎから何人か並んで開店を待っているのだが、昨日の人数はこれまで見た中で最も多いものだった。たぶん50人は並んでいたと思う。時刻は3時半。らーめん一杯食って帰るという店ではないので、2回転目の人は一体何時間待つのだろうなどとぼんやり考えてその前を通り過ぎた。周りのお店がくすんで見える。

 確かにこの姿を見ると地方の友人のいっていることもそうハズレではないかなとも思う。東京の人は並ぶのが好き。

 いや待て。彼らは決して並ぶのが好きでならんでいるのではない。話題の店で一度食事してみたい。どんな味なのか。評判通りなのか、あるいは違うのか。一度食べてみないことには話題についていけないし、いや食べたら話題の主になれる。そんな好奇心、探究心から仕方なくならんでいるのだろう。並ぶのが好きで並ぶ人なんていない。

 並ぶというのは一般的に言えば退屈なことである。時間の無駄遣いといってもいい。その大切な時間を好奇心やら探究心やらと天秤にかけて、こっちが大事と思ったから並んでいるのだ。好きだから並んでいるのではない。

 それにしてもと思う。この行列の最後の人がお店に入れるのは何時だろう? 並んだ先にそれだけの価値のあるご褒美はあったのだろうか。

 ちなみにぼくは並ぶのはダメな体質です。好奇心より忍耐力がないのが勝り、ラーメン屋の5~6人くらいの行列までが限度。小学生のころ、大阪万博へ行ってアメリカ館の月の石を見るための行列を見て、家族みんなで諦めたという生粋の並びベタ。でもいつかこの店には挑戦したいとは思います。


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