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川田十夢公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。https://twitter.com/cmrr_xxxhttp://alternativedesign.jp/

青雲、それは君が見た光。

川田十夢
公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://alternativedesign.jp/

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「無職」から始まる「転職」について

2011.08.04

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「無職」だという自覚が、僕には最初からあった。何故、みんな保育園や学校に行かなくちゃいけないのか。つまらない会話と時間を重ねなくちゃいけないのか。変わった行動をとって集団を乱してはいけないのか。親や先生のいうことは絶対なのか。門限があるのか。全部、「無職だから」の一言で説明がついた。
かと言って、僕の家が厳格だったかというとそうでもない。至って自由。学校も行かなくていいし、つまらない人とは会わなくていいし、変わった行動をして目立ったら褒めてくれたし、親も先生も誰も僕に命令をしなかった。無職だからという自覚と後ろめたさからか、沢山の習い事をした。水泳・民謡・吹奏楽・サッカー・野球・ソロバンなど、何一つとしてモノにならなかった。プロにはなれないと思い知った瞬間、孤独しか残らなかった。誰かと、必然性を以てつながりたかった。

「無職」:1976-1996年
今考えている全てのことが、世界と剥離していたらどうしよう。考え過ぎて頭がトチ狂っていても、誰もそれを指摘してくれない。僕の孤独は、イドの方向へ加速していた。少しでも誰かと密接な関係を持ちたい。それには「職」に就くのが一番テットリ早かったし、高校生の頃からそれはできた。でも、僕には無理だった。ありとあらゆるバイトに挫折したからだ。
ただ「落ちた」のであれば、やり直しが効いたかも知れない。僕の落ち方はちょっと人と違っていた。たとえば、ある大手コンビニのバイトに行ったことがあった。僕はそこで変な採用のされ方をした。面接中、店長が僕と話をしているうちになにやら色めき立って、震える手で誰かに電話をした。その三日後、僕はそのコンビニ系列の経営をしているという人の豪邸に招かれた。そこで僕は、「ぶらぶら社員」という人の役割を聞いた。時給や月給をもらいながら、ただ遊び回るという役割の人だ。何が流行っているかを察知し、一週間に一度レポートを書けばいいと言う。他者や外部との関係性を築きたい僕にとっては、地獄のような仕事内容だった。もちろん、断った。
ゴルフの打ちっぱなしのバイトに受かったこともあった。自室が与えられ、機械のティーアップのゴムが破損したときにそれを交換するという簡単な仕事だった。ほとんど人と会わない。暇過ぎてゴルフの練習に従事しても、誰からも怒られない。専属のレッスンプロが居て、この人が僕の孤独を埋めてくれるだろうと熱心に講義を受けていたら、うっかりその人よりもスイングが巧くなってしまい、彼はすっかり自信を失っていなくなってしまった。このバイトで最も孤独だったのは、見たくもないUFOを目撃したときだった。18時になると、近くに併設されたテニスコートの灯りを消すのも僕の仕事だった。ある日、消したはずの灯りの周りにボワボワと浮遊する何かがあるなと思ったら、UFOだった。そのUFOは、ヴィンヴィンいいながら8の字を描きながら2の2乗の速度で増殖を続け、最終的には2の8乗の猛スピードで僕の頭を追い越していった。振り返るとそこに音はなく、僕は誰に伝えるでもない興奮を、埋み火のようにしまうしかなかった。

「転職」:1997-2011年
二十年もの無職のあと、僕はいよいよ「転職」することになる。僕の「転職」は、「無職」の孤独からの脱皮でもあった。人と必然性を以て関われるのが、ただ楽しかった。掃除屋・引越屋・道路工事・ガス管工などの肉体労働、ピザ屋・お好み焼き屋などの飲食店、デザインや企画などのクリエイティブ、特許開発やシステム構築や展示会設計などのメーカー仕事、転々と転職を繰り返したあと、AR三兄弟という職を自ら作ってはたらいている。

見方によっては、「無職」に戻ってしまったように見えるかも知れない。でも、僕の元には様々な職業の人が話を聞きに来てくれる。孤独の理由について聞きに来てくれる。僕はその孤独の理由を見出し、剥離してしまった接点としての物語の続きを考える。明日は、個人に限った物語の続きを一緒に考えたいと思っている。

LV20からの大人相談室 〜AR(拡張現実)編〜
日時:2011年8月5日 19:30-22:00(予定/懇親会含む) 
会場:リクルート銀座8丁目ビル(G8) 
住所:東京都中央区銀座8-4-17 リクルート銀座8丁目ビル(地図) 
*参加申込はコチラから!

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