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川田十夢公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。https://twitter.com/cmrr_xxxhttp://alternativedesign.jp/

青雲、それは君が見た光。

川田十夢
公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://alternativedesign.jp/

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山田を軸にして考える、どうぶつしょうぎについて。

2012.06.13

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まるで隣り合わないものを、僕の偏見と時間軸でつなぎあわせてみたら、うっかり新しく見えてくるものがあるかも知れない。始点終点というシリーズがありまして。今夜はそのカテゴリで書いてみたくなりました。

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山田うどん
山田うどんが気になっていた。僕の関心を見透かしているかのように、季刊レポ7号の特集が山田うどんだった。所用で文学フリマに立ち寄っていた僕は、すかさずそれを手にして読み耽った。なんて肌理が細かい特集なんだ。「なぜいま山田うどんなのか」にはじまり、「青春の山田うどん」「山田うどんの背景に息ずく物」「山田ロードサイド」「いざ、山田へ(本丸攻め)」「いざ、山田へ(小田原攻め)」で滔々とその史実と実態について掘り下げたかと思えば、「山田うどんの煮玉子」では存在しないはずの共有体験とノスタルジーに浸らせ、ついには「山田がおりてきた」「山田うどん元年、すべてはここから、これからだ。」で、どんぶりに残した汁をすするように締める。なんて無駄がないんだ。山田うどんそのものには存在しないコシとノドゴシさえ、感じられた。素晴らしいのひとことだった。
しかし、なんとなく読み飛ばしていた「やまだうどんのおもいで」が、更にその絶賛に追い打ちをかけ、やがて全てを一蹴した。大人が寄って集って作り上げた山田うどん特集に匹敵する情報量を、幼少時の乙幡啓子(おつはたけいこ)が、ひらがなと拙い絵と少ない文量で仕上げていたのである。

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どうぶつしょうぎ
某おもちゃメーカーに呼ばれて、未来のおもちゃについて考えて欲しいと言われた。何のフィーもオファーも発生していない段階での唐突な呼び出し。他に、オファー前提で多くの人を待たせている状態。露骨に難色を示した。が、その担当は口にした。

「どうぶつしょうぎみたいなヒット、出したいんです。」

なにそのネーミング。確かに、将棋はこどもには分かり難い。桂馬とか香車と言われたところで、それが具体的になんであるか大人である僕でさえよく分からない。それを動物のフォルムや動きをヒントに将棋盤ごと単純化できるとしたら、なんて素晴らしいんだ。まだ見てもいないどうぶつしょうぎの存在に、心が踊った。

「なんすか?そのどうぶつしょうぎって?」

「女流棋士の北尾まどかさんが、主に子供への将棋普及のために考えた新しい将棋です。歩をひよこ、と金をにわとり、王をライオン、角をぞう、飛車をきりんとすることで、盤面も3×4=12マスと再設定することで、子供から大人まで楽しめるものとなっています。このシリーズは、発売された2010年の段階で17万を越える大ヒットとなっており、玩具つきの絵本としては先進的な事例となっています。」

プロフェッショナルだからできる本質残しの引き算。子供に難解を容易にするシンプル設計。どうぶつディフォルメ。子供と大人が垣根なく一緒になって遊べる。全てが完璧ではないか。どうして僕がこれを思いつかなかったんだろう。これこそ、玩具の拡張ではないか。僕が思いついたことにならないだろうか。色々考えているうちに、このヒットを越えるなにがしかの発明がしたくなって、さっきまでの示していたごりごりの難色は無色透明のさらさらに、引き続き未来の玩具について考えますということで事なきを得た。

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子供が考える大人の世界、大人が考える子供の世界。いづれにせよ、どちらかが「所詮、こんなもんだろう。」という線を引いた時点で、それはどちらにも機能しないものになってしまうだろう。どうせなら、大人にも子供にもあんまり機能してなさそうな、山田を軸にして考えてゆきたいものである。

*6月15日発売の季刊レポ8号に僕の文章「急に出る山田、急に出す山田うどん。」が掲載されています。7号を読んでtwitterで興奮していたところを、編集・発行人の北尾トロさんに拾われました。やまだかつてない展開。ぜひご一読ください。

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