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小西康陽音楽家NHK-FM「これからの人生。」は毎月最終水曜日夜11時から放送中。編曲家としての近作である八代亜紀『夜のアルバム』は来年2月アナログ発売決定。現在、予約受付中。都内でのレギュラー・パーティーは現在のところ、毎月第1金曜「大都会交響楽」@新宿OTO、そして毎月第3金曜「真夜中の昭和ダンスパーティー」@渋谷オルガンバー。詳しいDJスケジュールは「レディメイド・ジャーナル」をご覧ください。pizzicato1.jphttp://maezono-group.com/http://www.readymade.co.jp/journal

小西康陽・軽い読み物など。

小西康陽
音楽家

NHK-FM「これからの人生。」は毎月最終水曜日夜11時から放送中。編曲家としての近作である八代亜紀『夜のアルバム』は来年2月アナログ発売決定。現在、予約受付中。都内でのレギュラー・パーティーは現在のところ、毎月第1金曜「大都会交響楽」@新宿OTO、そして毎月第3金曜「真夜中の昭和ダンスパーティー」@渋谷オルガンバー。詳しいDJスケジュールは「レディメイド・ジャーナル」をご覧ください。
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ブログ放置・2

2011.09.08

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八月に観た映画のことを思い出している。
 
「エッセンシャル・キリング」
「ザ・ファイター」
「コクリコ坂から」
「ふたりのヌーヴェル・ヴァーグ トリュフォーとゴダール」
 
そして昨日は
「ヒマラヤ 運命の山」
「アップサイドダウン〜クリエイションレコーズ・ストーリー」
の二本を観た。
 

 
昨日観た「ヒマラヤ 運命の山」は意外な拾い物だった。
 
実は他の劇場で「大鹿村騒動記」を観るつもりで、ある映画情報サイトで上映時間を調べて駆けつけると、なんと映画は始まって既に30分近く経っていた。怒りに震えながら劇場の窓口を去り、それでも第二候補である「ゴーストライター」を上映している劇場へ行くと、こちらも既に上映を開始していた。
 
ひどく落胆したのだが、同じ劇場の「シアター2」で掛かっている映画はちょうどこれから始まるところだった。その映画が「ヒマラヤ」、という作品だった。
 
じつはこの映画のことは、まったく知らなかった。周囲の映画好きの人間も誰ひとり話題にしていなかった。ポスターに使われているスティルも初めて見た。題名さえ聞いたことがなかった。
 
窓口でこの映画と、夜9時過ぎからレイトショー上映される「アップサイドダウン〜クリエイションレコーズ・ストーリー」の座席指定をして、領収書を受け取り劇場に入ると間もなく明かりが落ちていった。
 
なんと、ドイツ映画だった。ドイツの山岳映画。「山と渓谷」の協賛が付いている。
 
ヒマラヤのナンガ・パルバート、という前人未踏の高山に挑戦した若き登山家兄弟の真実に基づくストーリー。
 
映画で聞く、劇場で聞くドイツ語の響きが何とも新鮮だった。そして、いまから40〜50年前のドイツの男たちの服装が素晴らしい。普段着も、クライミングの時の装備も美しい。ファッション映画としても、充分に見応えがあるのではないか。
 
主人公の兄弟が魅力的なのはもちろんだが、この映画では悪役、として描かれている医師、カール博士を演じている俳優も素晴らしい。この人の着ている服も観る人によっては洒落ていると感じることだろう。
 
それより何より、自分は予備知識の全く無い映画を観る、という体験にすっかり酔っていた。
 
旅先で時間を持て余した時に、「飛び込み」で映画館に入り、時間を潰す。それはかつて武満徹や殿山泰司のエッセイなどで読んだ記憶のある、「大人の」体験ではないか。いま、そう書いていて苦笑してしまった。
 

 
さて、もう一本の「アップサイドダウン〜クリエイションレコーズ・ストーリー」だが。
 
ジーザス&メリーチェイン、プライマル・スクリーム、ライド、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン、オアシスと次々に大物バンドを発掘したアラン・マッギーと彼のレーベルの、お馴染みの<成功と凋落>の物語。
 
音楽ファンと音楽関係者にとっては、じつに刺激的な伝説だが、やはり劇場で観る映画ではなかった。家でDVDで鑑賞する方が似合っている、と思った。
 

 
そして8月に観た映画では、何と言ってもイエジー・スコリモフスキー監督の「エッセンシャル・キリング」が圧倒的に素晴らしかった。渋谷のイメージフォーラム、という小さな上映館で観たのだが、こんなに良い映画なら、もっと大きなスクリーンで観たい、とさえ思った。
 
米軍の捕虜収容所から逃れて、雪山の中をひたすら逃げ回る中東?のテロ工作員の男。ストーリーはこれだけ。セリフはほとんど無く、サイレント映画に近い。じつにシンプルな映画だが、とにかく息を呑むようなサスペンスに溢れていて、いつの間にか心を奪われてしまう。
 
いっぽう、どこか黒澤明の映画を連想する要素もある。三船敏郎と木村功を足して二で割ったような主人公が追い詰められる映画、と書いても、観た人なら納得してくれると思うのだが。
 
そしてラストシーンの詩的なイメージ。ひとりでも多くの人に観てもらいたい、と思うほど、自分はこの映画を気に入ってしまったのだが、それなら早くブログに書けば良かったのに。だが、八月はブログ放置の日々だったのだ。
 
そういえば、この作品もポーランドのイエジー・スコリモフスキー監督の作品、という知識のみで、内容も知らずに観た。エンド・クレジットで主演がヴィンセント・ギャロだったことを知ったとき、驚きのあまり、やはり笑ってしまった。
 
もうひとつ。いまさらながら、という話で恐縮だが、「ヒマラヤ 運命の山」にしても、「エッセンシャル・キリング」にしても、思わず素晴らしい、と思ってしまうのは、けっきょく自分は雪の風景に弱い、ということの証明か。今年作ったアルバムのジャケットを思い出しながら、そんなことを考えている。
 
まだ上映していると良いのだが。