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草彅洋平(東京ピストル)株式会社東京ピストル代表取締役1976年東京生まれ。あらゆるネタに対応、きわめて高い打率で人の会話に出塁することからついたあだ名は「トークのイチロー」。インテリア会社である株式会社イデー退社後、2006年株式会社東京ピストルを設立。ブランディングからプロモーション、紙からWEB媒体まで幅広く手がけるクリエイティブカンパニーの代表として、広告から書籍まで幅広く企画立案等を手がける次世代型編集者として活躍中。www.tokyopistol.com/

トークのイチロー就活日誌

草彅洋平(東京ピストル)
株式会社東京ピストル代表取締役
1976年東京生まれ。あらゆるネタに対応、きわめて高い打率で人の会話に出塁することからついたあだ名は「トークのイチロー」。インテリア会社である株式会社イデー退社後、2006年株式会社東京ピストルを設立。ブランディングからプロモーション、紙からWEB媒体まで幅広く手がけるクリエイティブカンパニーの代表として、広告から書籍まで幅広く企画立案等を手がける次世代型編集者として活躍中。
www.tokyopistol.com/

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僕がグラノーラ屋をはじめた理由(前編)

2013.07.30

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はじめに物件があった

小田急線・千代田線「代々木上原」駅から3分ほどにある、井の頭通り側の古民家レストランIRIの隣の物件が空いたので借りませんか、という連絡を今年の4月のはじめに受けた。IRIは日頃お世話になっている家入一真さんオーナーのお店。空いたという場所にはとても可愛らしいお花屋さんが入っていたのだが、偶然にも僕の前職(株式会社イデー)で同期だった子が経営していたお店であった。丁度ONSENBUNDANと立て続けにオープンしたばかりだったため、躊躇したものの、興味本位で見に行ってみると物件に一目惚れしてしまった。そう、元イデーの人(特に2000年初頭に在籍していた人たち)のセンスは大概悪くないものなのだ。中は狭いが家賃も安く雰囲気もいい。思わず即決で借りてしまった。すべては「なんとなく」である。何をやるのかは決めず、ただ借りた。あとから何かついてくると漠然と考えたのだ。

 
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やっぱり迷走

借りた後、まず自分が相談できる方々に物件の話してみた。「なにしたらいいですかね?」と僕。みなさん、僕の質問に飽きれるものの「古本屋をやってみたら?」「本屋は?」と親切にも言ってくれるのだが、その世界が厳しいことを重々知っているため、残念ながらその話はお断りさせて頂いた。そもそもの物件のスペックを考えた結果、ジュエリー屋かメガネ屋をやるしかないだろうと思っていた。在庫面積をとらず単価の高い商売を中心に考えたのだ。でも餅屋は餅屋。ジュエリーもメガネもうまく話がまとまらない。奇をてらって斬新なマカロン専門店も考えた。知り合った有名な若手パティシェの方に相談して、かなり踏み込んでみた。でも、店のすぐ側に有名なケーキ屋があるのを知って「この世界、先輩の近くに店を出すのはダメなんですよね」と若手パティシェに断られてしまった。世の中はなかなかうまいこといかないことばかり。さっそく暗礁に乗り上げてしまって悩んだ。さて、なにしたらいいですかね?

 

グラノーラかもしれない!?

この業界(クリエイティブ業界?)に長年いると、「なんとなく」という感覚がとても大切なものに感じてくる。なんとなくいいな、と思ったら流行るし、なんとなくダメだな、と思ったらその人間がクズだったりすることが多々あったり。だから直感を信じるのがまず一番だ。僕の直感は人生における日々の訓練の結果かなりの精度を示すようになり、ほとんど外さなくなってきているのだが、その良いイメージの線上にグラノーラというキーワードがある時から出てくるようになった、という話を書いていかなければならない。

グラノーラが浮かんだのは、いつからなのか定かではないが、「グラノーラを趣味で作っている」と話してくれる周りの女の子たちが増えてきたことが大きかったのかもしれない。いや、そう言えば聞こえはいいが、たまたま手に取って読んだ「ELLE」のグラノーラ特集号といった雑誌の影響も大きい。アメリカのグラノーラがパリでいまちょっと流行ってるという記事だ。調べてみるとすでにフラクタスGMTといった先駆的に専門店があったことも可能性があるように思えた。さらにフラクタスの成田さんとは以前僕がイデー時代から知っていたことが判明したり、KUKI'S GRANORAの赤枝さんがイデー関係者の紹介で以前お会いしていたことが分かるなど、身近な人のリンクばかりがグラノーラ周辺にはあった。そう、元イデーの人のセンスは大概悪くないものなのだ(僕も含めて)。というわけでグラノーラがいま重要なカルチャーになりつつあるのを実感しつつ、これは面白いのでは、と興味を持ちだした。

 

絶品のカレー

さて、グラノーラ屋をやるにしろ誰にグラノーラを作ってもらおうか、そう考えていたときに僕はたまたま西所沢のカレー屋にいた。この日はももクロのお仕事でたまたま所沢近辺にやって来たため、忙しい時間をぬって「ネゴンボ33」に再訪したのである。すべてのカレー好きに言おう。ここのカレーは本物だ。カレーのみならず、サラダも、そしてコーヒーもとてつもなく斬新で美味く、僕のカレーランキングでは現在一位となっている(ちなみに二位は荻窪トマトだが、これ以上書くと話がそれるのでやめておく)。前回食事した際に感激のあまり店主の山田さんと話して、多くのカレー関係者が訪れているという事実に納得、また再訪したいと願っていたからこそやって来たわけだが、相変わらず美味しいサラダとカレーをパクパク食べていると山田さんがデザートを出してくれた。


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「今日はカルダモンのプリンを作ってみたんです。意外とスパイスが合うんですよ」

「カルダモン!? それって美味しいんですか...? パクリ。うっ...、なんという美味しさ。口の中に香りが花開いて...激ウマっす〜!!!」

まさかデザートまで美味しいとは目からウロコだ。その手腕にホレボレしている僕の姿を笑顔で眺める山田さんが「これもよかったらどうですか? 美味しいですよ」と差し出してくれたのはスプーンの入った小さなグラス。

「何ですかね?」と僕。

「グラノーラですよ」と山田さん。

この瞬間、すべての点と点がつながった。

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ベースは決まった!

「ネゴンボ33」の横には山田珈琲焙煎所という店がある。カレーで忙しい山田さんの代わりに奥さまが珈琲やスパイス、手製のクッキーなどを販売しているのだ。だからネゴンボで素晴らしい珈琲が提供できるというのは理解していたが、まさかグラノーラまで作られていたとは驚きであった。オーガニックで作られているグラノーラは素朴でとても美味しい。すぐに僕がグラノーラ屋をやろうと考えていると伝え、現状を相談したところ、山田さん夫妻が一緒にグラノーラを開発してくれることになった。こうなると話が早い。一刻も早くグラノーラ屋を作ることを決断した。


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だがちょっと待って欲しい。僕はビーガンでもマクロビ愛好家でもなく、ましてやグラノーラを日頃食べているわけでもない、いわばグラノーラの世界の素人。一緒にこの事業をやろうと相談した珈琲のプロである阿部くん(東京ピストルの飲食マネージャ)も「あまり知らない」らしいときている。まずはイチから勉強する必要がある。というわけで僕のグラノーラに関する研究がはじまったのだ。

後半に続く


GANORI
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