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武田篤典ライター67年大阪生まれ・京都育ち・藤沢住まい。『R25』インタビューとか『スマートモテリーマン講座』とかを書いています。このブログは、かつて『ポパイ』『ハナコウエスト』誌に連載していたコラムのリメイク。街で見かけた赤の他人から勝手にいろいろ学んでいきます。

見知らぬあなた

武田篤典
ライター
67年大阪生まれ・京都育ち・藤沢住まい。『R25』インタビューとか『スマートモテリーマン講座』とかを書いています。このブログは、かつて『ポパイ』『ハナコウエスト』誌に連載していたコラムのリメイク。街で見かけた赤の他人から勝手にいろいろ学んでいきます。

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アウェイでは好きなこと言っていいシンドローム

2011.12.13

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こんにちは、たいそうごぶさたしています。

ごぶさたしているうちに、嵐の人と会いました。

以上で自慢をおわり、本題に入ります。


これから書くのはJリーグを観に行ったときの話。ああ、もう、かれこれ

1カ月も前のことなのだ。もはやリーグ戦も終わり、優勝チームも昇格・

降格チームも決まってしまった。

このブログが、ナウでクールな最新情報をお届けするような場でなくて、

本当によかった。1カ月遅れのクールな最新情報なんて、誰もいらないだ

ろうし。下手すりゃ朝日新聞の文化欄でも取り上げられてるはずだ。

その点ここは、


ただ単に人生の真理を探求する場だ。


1カ月遅れでも、人生の真理は古びたりはしないだろうし、

たぶん朝日新聞文化欄も報じたりはしないだろう。


今回は、平塚競技場に向かうバスの中で聞いた、知らない人の会話。

わが湘南ベルマーレが徳島ヴォルティスとゲームを行った日のこと。


おれは藤沢市というところに13年ほど住んでおり、

地元クラブの湘南ベルマーレを応援しているのです。


たぶん、みなさんの中には「知らん」って人もいるでしょう。

まあしょうがない。J2だし。

でも、その昔はベルマーレ平塚という名で、天皇杯や、今で言うアジア

チャンピオンズリーグで優勝したこともあるし、かの中田英寿氏が日本で

唯一在籍したクラブだったりもする。

どころか、地球を襲う巨大な怪獣を退治したこともあるし。


ともあれ。

30代ぐらいの徳島サポーターふたりが、こんなことを話していた。


①「今日は内容より勝利。だから縦ポンに徹するべき。でもトクシゲは90分もたない」

②「夏場にサトーをフォローできるフォワードを獲得したかったが、結局サイトーしか獲れなかった」

③「徳島では、鳴門に行くのに、山間部からだと2〜3時間かかる。県全体の人口は78万人。これって茅ヶ崎市とおなじぐらい。だから集客は厳しい。というか、そもそも県内で2000〜3000人集まるイベント自体が珍しい」


①の「内容より勝利」には納得。そのとき徳島はJ1昇格を狙える位置に

いたので(結局ダメでした)、とにかく勝たねばならなかった。

「縦ポン」というのは、細かくパスをつないだりドリブルで勝負するので

はなく、前線にポーンとロングパスを渡してゴールを狙うやり方。

おれは非常に生ぬるいサッカーファンなので、有名な選手とわがチームの

選手以外はあんまりよく知らない。

まあ「トクシゲ」っていうのは徳島のフォワードなんでしょうね。


②で、徳島に「サトー」というフォワードがいることが判明。事情はよく

わからないけれど、プレーに不安があるということも。それを補う人材を

獲得したかったのに、獲得できたのは、結局「サイトー」ひとり。

「サトー+サイトー」では盤石とは言いがたいのでしょう、きっと。


③は、ちょっとしたケンミンショー。

「ナルト」が徳島のホームスタジアムの名前であることぐらいはわかる。

鳴門というからには、たぶん海のほうでしょう。ということは県の端のほ

うにあるわけで、そこに山の方からアプローチしようとすると2〜3時間

かかるらしい。県内は意外と広く、交通の便からも集客は寂しい。

だいたい普通のイベントに3000人集めるのも結構厳しい。

徳島って広くて寂しいのだ(いや、おれではなく

徳島の人が言っているのですよ)。


聞いてる間、ずっと「ふーん」とか「へー」とか思っていたのが、

最後に来て「あれれ、そうか?」ってなった。

「徳島県の人口は78万人で茅ヶ崎とだいたい同じ」というくだりだ。

茅ヶ崎は隣の市なのでちょっとは知っている。たぶん人口78万人もいない。

試合が終わって(負けて)帰って調べてみたら、23万人ちょい


かすりもしていない。


どころか、トリプルスコアで負けている。


......で、電撃的に気づいた。


ああ、アウェイなら何を言っても平気

なんだ!


と。

イヤミとかじゃないですよ。

おれが徳島のことを「ふーん」「へー」と聞いていたのは、言っていたの

が徳島の人だったから。

だって徳島の人は、平塚においては"本場の人"だもの。

"徳島のいろんな事情について詳しい"と思ってしまうのは当たり前です

よね? たしかに詳しい。少なくとも湘南乃人(なぜこんな変換!?)より

は間違いなく詳しい。......のだけれど、その詳しさが際立つのは、


「徳島じゃない場所でしゃべってるか

ら」なのだ。

彼らが今回述べていた①〜③の事柄は、ひょっとしたら徳島のホームでは

常識なのかもしれない。彼らだけの見解という可能性もあるけれど、いず

れにしても、もしホームにいたら、今回みたいに無防備に声高に話すこと

はできないような気がする。


たとえば「トクシゲは90分持たない」という件。

これが仮に常識だとしたら、わざわざ声高に言わなくてもいいでしょ? 

そんなことホームならみんな知ってるんだから。会話に盛り込むなとは

言いませんけどね。

あるいは、もし彼らだけの見解だとしても、やっぱり声高に、周知の事

実みたいには言わないほうがいい。おれは徳島の人じゃないから、素直

に「ふーん」「へー」と聞いてるけれど、ホームには違う意見の持ち主

もいるだろうから。熱心なトクシゲ信者が噛み付いてくるかもしれない。

地元の常識であれ、単なる自分の見解であれ、


アウェイなればこそ安心して、

でかい声でズバーンと話せるのだ。


ただし、自分のホームの事柄に関してのみ。今回だって、徳島の話だけ

されていたなら、おれも最後まで納得していたはずだったのが、

ポロッと「茅ヶ崎」と聞こえたから、ギモンが生まれたわけで。


この、いわば、


「アウェイではホームのこ


とを無防備に主張してもい


いシンドローム」なんですけど、


徳島の人の会話から学ぶまでもなかった。

思えば、東京の関西人によって強烈に体感させられていたのだ。

やれ「大阪の地下鉄では会話

が漫才やでー」だの、


やれ「たこ焼き器のない家な

んか大阪にはないでー」だの、


やれ「つっこまんかいー。ボ

ケとんねやー」だの。

............いやいやいやいや。


大阪人全員がオモロイわけやないわ!

ほなパリのメトロに乗ったら会話は全部「エマニエル夫人」か!

ピロートークなんか!

おれの東大阪の家にはたこ焼き器なかったし、

つっこんでほしいねやったらそれに値するボケをクリエイトせえ!


と。


アウェイでは誰もがホームの事柄を主張できる、というのは事実。

だが同時に、

アウェイだからといって、周囲全員アウェイではない。

時折、同じホームのヤツに聞かれて、こんなふうに思われてる危険性もあ

ると認識しておかねばならないのだ。

かくいうおれの、湘南ベルマーレや「縦ポン」の説明だって、

ここがサッカーを語る場じゃないから成立しているわけで、

「君の書いていることは事実とは言えないね」と思っているような、

サッカー方面の人もいるかもしれない。


もしそういう人がいたら、ゴメンナサイ。先に謝っておきます。

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