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Interview with Grant Brittain 〜スケートシーンを影で支えてきた男、グラント・ブリテンについて〜

2014.07.15

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1970年代、サーファーたちが波のないときに歩道や駐車場で遊んでいたスケートボード。それがひとつのカルチャーとして発展を遂げた80年代。ZEPHYR、DOGTOWN、Z-BOYS、BONES BRIGADEなど、当時を紐解くキーワードはたくさんあります。でも、そのなかで忘れてはならないのが、フォトグラファーのグラント・ブリテン(Grant Brittain)です。スケート写真一筋30年、スケートボード雑誌を開けば必ず載っている彼の名前。そんな一時代を築いた彼が、5月末に開催された「GREENROOM FESTIVAL」に自身の作品を携え来日。その展示の合間にお話を伺うことができました。御年60歳にして現役、これまでとこれからのグラント・ブリテンについて18の質問から探っていきます。

Photo_Naoto Hayasaka
Edit_Jun Nakada

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グラント・ブリテン(Grant Brittain)
1955年7月28日生まれ。1983年にフォト・エディターとして「Transworld Skateboarding magazine」の立ち上げから20年間携わり、スケートボード雑誌を世に広めた第一人者。2003年に「The Skateboard Mag」を創刊。30年に渡りトップスケートボーダーを写真に収め、いまだシーンの第一線で活躍中。
www.jgrantbrittain.com

01_写真の勉強はどちらで?

 元々、カリフォルニアにあるデルマースケートランチというスケートパークで働いている時に撮り始めたのが最初。同じ時期にパロマカレッジのアートクラスも受講していたし。当時のルームメイトで、今はサーフムービーを作っているソニー・ミラーがカレッジの暗室に連れて行ってくれた時に、初めて自分が撮影したネガのプリントを見て、どっぷり写真にハマってしまったね。パロマカレッジの先生でアート課のダグ・デュラントと写真課のキーン・ウィルコックスからはとても影響を受けた。30〜40年経った今でも2人とは時々連絡を取り合っているよ。

02_自分が最も影響を受けた写真家は?

スケートだったら70年代のフォトグラファーだね、スケート雑誌の写真から多くを学んだから。例えば、ウォーレン・ボルスター、ジェームズ・カシムス、テッド・テレボーン、クレイグ・ステシック、ジム・グッドリッチ、グレン・フリードマンといった人たち。スケート以外だったらパロマのカレッジで写真の歴史について学んでいた時に知った20世紀の偉大な写真家たちだね。彼らについて勉強したことで、自分自身の方向性やスタイルを確立することが出来たと言ってもいいくらい。ウォーカー・エバンス、リチャード・アヴェドン、ラルフ・ギブソン、アンリ・カルティエ-ブレッソン、バウハウス、マイナー・ホワイト、ウェストンズ、アーヴィング・ペンや他にもたくさん好きな写真家がいるけど、彼らが写真の世界の奥深さや幅広さを教えてくれた。今もまだ本を読んだり、ショーを見に行ったりするし、最も好きな現代の写真家キース・カーターのワークショップにも参加している。

03_現在使用しているカメラ、レンズは何ですか?

最初のカメラは〈コニカ ミノルタ(KONICA MINOLTA)〉の「SRT20」で、その後〈ニコン(Nikon)〉も使ったけど、ここ20年以上はずっと〈キャノン(Canon)〉だね。今は「5D」と〈キャノン〉のレンズ(15mm、16-35mm、50mm、70-200mm)。〈クアンタム(Quantum)〉のフラッシュ「Q'flash Turbo」をスケート写真に、〈プロフォト(Profoto)〉のライトをスタジオ用に使っています。あとは〈ハッセルブラッド(Hasselblad)〉の「503CW」や35mmと50mmの「ライカM6」を使うこともある。他にもいろんな変なカメラやトイカメラも持っているよ。

04_フィルム撮影で好きな照明設定は?

可能であれば自然光での撮影の方が好きだね。ポートレートだったら窓からの光が少ないとしても反射板での光は欲しい。スケートの撮影に関してはいくつかのQフラッシュをフレームのすぐ外側に置いて撮る。スタジオのポートレート撮影だったらソフトボックスでのストロボかアンブレラを使うね。〈ライカ〉や〈ハッセルブラッド〉で撮影するアート写真は自然光だけで撮影している。

05_デジタルでの撮影時のモード設定は?

常にマニュアル露出、マニュアルフォーカスで光の条件に応じてホワイトバランスを調整している。

06_これまで使ってきたカメラで一番のお気に入りは?

〈ニコン〉のFM2はこれまで作られたカメラの中でも最高。あのカメラでは1/250秒の早いフラッシュシンクロが可能なので、日中のスケート撮影でフラッシュを使うことができた。もちろん今も使っている〈ハッセルブラッド〉と過〈ライカ〉もいい。こいつらのクオリティーはどんなカメラでも勝てないね。墓場まで持っていくよ。

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07_スケート撮影では、どんな瞬間を狙って撮っているんですか?

アクションのピークの瞬間、頂点の部分、レールの中央か一番上、フリップのキャッチとかだね。写真はテイクオフ地点、アクション、ランディング地点といった参照できる場所を入れて1つのストーリーになるようにしている。ただ"空中にいる人"みたいなクロップした写真だとダメなんだ。

08_いま気になる写真のスタイル、写真家はいますか?

常に何か"違う"ものを探しているよ。最近は何もかも(アングル、カメラ、レンズ、照明)人の真似で、似たような写真が溢れている。そんな中でも光っている存在としては18歳のジェイコブ・メセックスが挙げられるね。他にもアンソニー・アコスタやマット・プライス、マイク・ブラバックを含む数人はすごくいいと思う。

09_写真家以外でお気に入りのアーティストはいますか?

ポートレートや風景、ファインアートの写真家が好きで、キース・カーター、ダン・ウィンタース、マイケル・ケンナとかは特に好き。過去に遡ると、先の質問で答えたフォトグラファーに加えてダイアン・アーバス、マン・レイ、デビッド・ベイリー、アルバート・ワトソン、ハリー・キャラハン、アーロン・シスキンド、ロバート・フランク、そして近年その優れた才能が発見されたヴィヴィアン・ミラーらは素晴らしいと思うよ。とにかくいろんな人の作品を常にチェックするようにしていて、いまだに良い所はスポンジの様に吸収している(笑)

10_これまで自分が撮ってきたスケート写真ベスト3を教えてください。

ポールカメラで撮ったクリス・ミラー、トッド・スワンクのプッシュしている写真、そしてチンランプでのボーンズブリゲイドの写真。

11_他の写真家の作品を持っていますか? もしあれば教えてください。

スケート写真の作品は持っていないけどキース・カーターのプリントは持っている。

12_自分の目で見た(撮影した)最高のトリックは?

ダニー・ウェイが中国の万里の長城でやったジャンプとヘリコプターからのアクション。あれは本当にクレイジーだったね。

13_今まで撮影してきて楽しかった時代は?

写真の撮り方を学んだ80年代はスケートボードにとって大きな変化の時だったし、フリースタイル、ストリート、バートといった異なるものが同時に1つの新しいスケートボードへと変化したんだ。あの時期は自分にとって黄金の時代だったと思う。同時にカメラもシャッタースピードやフラッシュシンクロ、リモートフラッシュやスレイブユニット、日中でのストロボ撮影が可能になったり、大きな変化があって全てが変わった時期だったね。もちろん今も撮影を楽しんでいるけど、80年代、90年代の日々変化していくスケートボードを間近で見られたのはラッキーだったと思う。

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14_人生の教訓を教えてください。

まず自分にとってラッキーだったのは、写真を始めた頃、スケートボードの人気が無くなって上の世代のフォトグラファーの多くがシーンを離れていって、新しい流れが生まれ始めていたこと。だから良いタイミングで自分にチャンスが舞い込んで来たんだと思う、しかも当時はスケートボードのフォトグラファーは数える程しか居なかったから。それでずっとやり続けているだけなんだ。人生で簡単に手に入る物なんかない。誰もが何か優れたところがあるんだけど、そこに辿り着くには長くつらい道のりを乗り越えなければいけない。

15_五万といる写真家のなかで、ひとつ抜きに出るために必要なことは?

自分を信じる勇気を失わないこと。忍耐力が鍵かな。

16_写真家にとって一番重要なことは?

自分自身のスタイル、声、見せ方を見つけること。例えば自分たちのようなスケートボードのフォトグラファーは基本的には同じような事をやっているはず。でも、そこに少しの違いを"出せる"こと、それがポイントかな。

17_現在進行形のプロジェクトはありますか?

ずっと構想を練っている自身の作品集を、きちんとした装丁で写真集という形で出したいと思っている。あと、常に昔の写真を見返しては自分のオンラインストアやソーシャルメディアにアップしてるし、単独やグループでショーも開催してる。もちろん「The Skateboard Mag」のオーナーの1人だし、プロダクションマネージャーとしても関わっているから、そこに対してもかなりの時間を費やしている。

18_もし生まれ変わっても写真家に?

スケートボードの写真を撮り始めた理由の1つにスケートフォトグラファーってスケーターの次にカッコいいんじゃないか、と思ったことがあって。だから、また2回目もありだね。

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着用しているのは〈ニクソン〉からリリースされたグラント・ブリテンのフォトTシャツ。
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