コントに、粘土に、寺山修司 片桐仁が止まらない。『粘土道』と『レミング』 パルコ連続出演にかける思い
2013.04.11
-『感涙の大秘宝展』とバトンタッチするように、2013年演劇界の最大の事件と言われている『レミング ~世界の涯までつれてって~』が始まりますが、ラーメンズ片桐仁と俳優片桐仁、自分の中での演じ分けはありますか?
片桐: 演じ分けっていうのはおこがましいですけど、どこかでやっぱりラーメンズの片桐仁がゲストで出ているという思いは今でもあります。「何やっても片桐さんですね」って言われる時もあるんですけど、その場その場で、ちゃんとそこに、その役に入れるようにと自分の中では心がけているつもりです。だから、分けるという実感ではなく、なるべく素直な自分で挑むということでしょうか。でも、この歳になると、共演者とかも何か思ったことがあっても、なかなか言って貰えなくなる。あれは、恐いですねぇ。だから、頂いたアドバイスは素直に受け入れるようにしています。
-演じるということでは、今回、非常に演劇的な寺山作品を演じてみた感想は?
片桐: ふいに寺山さんぽいエキスがジュワーって沸いているシーンとかがあって、いいなぁって思いますね。意味なんかないんだ!感じるんだ!というエネルギーみたいなもの。巨大なエネルギーになって、みんな一糸乱れずっていうのは、朝の品川駅港南口で、同じ方向へ無表情で、何千人という単位で歩くサラリーマンの行列を思い出します。今回、寺山さんの本も都市論ということで、そこに都市東京の、個人の人格でなく集団化した会社員が行列するようなイメージもリンクしたりする。そのあたりが過去の寺山作品にはなかった感覚。(維新派の)松本さんがもたらしたものだと思います。その2つの世界が融合して、観客の誰もが感情を揺さぶられる芝居になっていると思います。
-『レミング ~世界の涯までつれてって~』での片桐さんの役どころは?
片桐: 八嶋(智人)さん演じる主人公がコック1、僕はコック2。タロ・ジロっていうんですけど、一緒に四畳半で暮らしながらコック見習いをしている。部屋で料理の練習をするシーンから始まるんですが、一切、料理とかはしないですね。都会に翻弄されながら、自分の外と中の世界であったりとか、心の壁だったりとか、社会の壁だったり、いろんな壁を感じて生きている。物語の主人公の一端を担っています。
-そんな寺山修司の世界に新たな解釈で挑む松本雄吉さん、上演台本の天野天街さんの演出はいかがですか?
片桐: お芝居そのものの演出、芝居パートに関しては、天街さんが結構細かく付けてくださいます。一方、松本さんの方はすごく俯瞰で見てて、もともと美術家の方なので「この絵がいいね」とか大きな展望で舞台を捉える。「この絵がなんか『受胎告知』みたいでええね」とか、「片桐は男やけどな、なんか孕んだみたいで」とか...。素敵な例えされるなぁって、そういう会話を演出家さんとするのは初めてですね。すごく繊細な、物語に入って見るというよりは、全体を通して見る感覚。照明とか装置にも、物凄くこだわる方だと思うので、上演が楽しみです。
-いよいよ21日から、新解釈の寺山作品が始まりますが、もともと片桐さんにとっての寺山修司とはどんな存在でしたか?
片桐: 大学時代に『田園に死す』や『さらば方舟』など寺山映画がリバイバル上映されて、友だちのマホちゃんてコが見に行ったんです。感想を聞いたら、池袋文芸座の前で嘔吐したと聞いて、恐くて見れなくなった(笑)。卒業してからようやく見て、芝居とかVTRも見て、吐きはしなかったけど、エネルギーの凄さに驚きましたね。あれはもう、アート・パフォーマンスとか1つの運動ですよね。その時代の世の中を全部投影している。絵画とか、建築とか、文学と同じ高みに演劇があって、観終わった後に「あの演劇はこうだった」ってみんなが語り合い、それをきっかけに全員の心の中がクリエイティブな気持ちになっていく、羨ましいですね。僕らもいつも、そういうつもりでやってますから。お客さんに笑ってもらいたいっていうのも1個目の衝動でありますが、何かを持ち帰ってもらいたいという気持ちが強い。変に小難しく考えないで、見たままを感じて欲しいというか、ありきたりの言葉に変えてしまわないで、それぞれが思ったことを感じて欲しいというか。そういう意味で今回の舞台は言葉にならないものがいっぱいありますから、いい意味で「なんじゃコレ?」だと思いますよ。
-最後に『片桐仁 感涙の大秘宝展~粘土と締切と14年~』と『レミング ~世界の涯までつれてって~』、パルコ連続出演に寄せる思いと今後の展望をお聞かせください。
片桐: 寺山修司没後30周年、パルコ・片桐40周年、これはもう、何かの運命ですよね、きっと!コント、演劇、粘土道、それぞれの道を究めながら、今後は粘土で、もうちょっと(笑)有名になりたいですね。