HOME  >  CULTURE  >  NEWS

CULTURE_NEWS

  • OLD
  • NEW

ホワイトマウンテニアリングと、写真家石川直樹の幸福な邂逅が。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2013.12.11 12:00

wm001.jpg


「洋服を着るフィールドは全てアウトドア」というコンセプトを標榜し、アウトドア界への親密なコネクトを繰り返してきた、〈ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)〉。


アウトドアウェアのもつ素晴らしさを引き出し、新しい価値観をどう植えつけるか、ずっと考えてきたという〈ホワイトマウンテニアリング〉デザイナー相澤陽介氏が、かねてよりファンであった写真家の石川直樹氏。石川氏の新作写真集『Lhotse(ローツェ)』の刊行に伴い、写真展が表参道のショップにて開催されています。


写真展開催に先駆け行われたレセプションにて、二人に少しだけ話を訊くことができました。その様子をかいつまんでお伝えします。



wm002.jpg


-相澤さんは今回のイベントをどのように捉えていますか?


相澤:アウトドアウェアというものをどうやって広めていくべきか、といつも考えている中で、石川さんの存在は自分の中ではすごく大きくて。山だけではなく、大学での活動や執筆など、色々な方向に自身の活動を拡げていくスタンスに勝手に共感していたんです。なので、今回こういう形でのイベントはとてもうれしいです。


-石川さん、今回の写真集について改めて教えて下さい。


石川:タイトルになっているローツェというのは、世界で4番目に高い山です。自分はエベレストにはこれまでに2回登っているんですが、隣にある山からエベレストを撮ってみたくなって、今回ローツェに登ろうと思いました。空撮とか、麓から見上げて、とかそういうものではなく、隣から水平方向に撮った写真というのはほとんどなくて、登山の世界ではとても珍しいものですね。頂上はもっとおまんじゅうみたいな鈍重な形かと思っていたんですが、撮ってみたら案外鋭角な三角形でしたね。


wm003.jpg


-撮影してるときはどんなことを考えているんですか?


石川:頂上付近は何も考えられないので、無心で撮ってますね。晴れの写真が多いのは、当然ですが天気予報はすごく重要で、天候が良い時しか登れないので。


相澤:一番上のキャンプで高度何mぐらいなんですか?


石川:7900mぐらいですね。そこから頂上までは半日ぐらいかかります。ローツェは結構難度が高い山なので、今回登れてよかったですね。


-ルートが厳しいのでしょうか。


石川:そうですね。あとは、そもそも登る人が少ないんです。途中まではエベレストと同じ道なんですが、左に行くとエベレストで、右に行くとローツェ、世界最高峰の山を前にして、わざわざ4番目の山に行く人はやっぱり少ないんです。


wm005.jpg

各¥3,990


-ところで、〈ホワイトマウンテニアリング〉というと、字面からも雪山を思い浮かべますが、実際には「ホワイト」は都会を暗喩する言葉ですよね。とはいえ、以前ショップにも雪山の写真を飾っていました。改めて伺いますが、相澤さんにとって雪山とはどんな存在なんでしょうか?


相澤:単純にビジュアルとして好きなんです。写真集もたくさん見ましたし、そういった中で石川さんの作品にも出会いました。見ていると色々なストーリーが浮かんでくるんです。「Volcano Choir」という自分の好きなバンドの音楽を聴きながら、雪山の写真を見ているとすごく神秘的な気持ちになるというか。雪山は、自分の好きなものの象徴とも言えます。


-石川さんが撮る山の写真も、やはり雪山の写真が多いような気がします。


石川:そうですね。雪がある山じゃないと、モチベーションが上がらないですね。身体全体を使う感覚っていうのがやはり雪山の方が味わえますし。ただ、雲の上に出てしまうと、強風で吹き飛ばされてしまって雪は積もらないんです。エベレストの山頂付近に残っているのは、昔からある氷河とか下から巻き上げられた雪がどんどん溜まっていくだけで、いわゆる深々と降るということはないんです。


wm004.jpg

「雲の上に写ったエベレストの影です。やっぱり奇麗な三角形ですよね」(石川)


相澤:どれくらいの高さから、環境が過酷になっていくんですか?


石川:6,000mですかね。それくらいから高所登山って呼ばれます。で、8,000mはまた別世界ですね。空の上が濃紺というか、ドス黒くなってきて、成層圏のはしっこが見えてくるんです。


-改めてお伺いしますが、山に登り続ける理由というのはどこにあるんでしょうか?


石川:自分が今とんでもないところにいるな、という感覚を味わうとやっぱり嬉しくなりますね。未知の風景が見られますし。酸欠であまり自由が動かない中、自分の身体をメンテナンスしながら、登っていくのが面白いというか。普段街で生きていて、本当にクタクタになるまで自分の身体を使い果たすっていうことがないので。そういうのが楽しいんです。


wm007.jpg


-ここ数年はエベレストに登り続けていますね。


石川:そうですね。今回は『ローツェ』という作品を出しましたけど、実はヒマラヤ山脈で5册作って、5部作にしようと考えているんです。「チョモランマ」とか「マカルー」という世界で5番目に高い山とか。そうして自分にケリを付けないと次に移れないんです。"タルチョ"っていうチベットの5色旗がありまして、それで5冊作ろうかなって思ったんです。


相澤:自分にケリを付ける、っていい言葉ですね。また次回、こうした機会があったらぜひご一緒させてください。


石川:こちらこそ。今日はありがとうございました。



という、本当にちょっとした対談でした。わずかな時間ではありましたが、かなり濃密な話が飛び出したのではないでしょうか。上記のテキストを読んで、少しでも興味がわいた方、写真展は15日(日)までですので、お早めにどうぞ。

Text_Ryo Komuta


wm008.jpg

All Photo_Yuichiro Noda


石川直樹 写真展『Lhotse』
会期:~12月15日(日)
会場:White Mountaineering Flag Shop
住所:東京都渋谷区神宮前4-21-7 1F
電話:03-6804-6309
時間:12:00~20:00
※会期中は、写真集「Lhotse」(¥2,940)の販売とともに、展示されている石川氏の作品を特別に販売いたします。


石川直樹
1977年東京都生まれ。写真家。2000年、PoletoPoleプロジェクトに参加して北極から南極を人力踏破、2001年、七大陸最高峰登頂を達成。人類学、民族学などの領域に関心をもち、行為の経験としての移動、旅などをテーマに作品を発表し続けている。東京芸術大学大学院美術研究博士後期課程修了。多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。
www.straightree.com

CULTURE NEWS TOP

  • OLD
  • NEW