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バイヤー2名の視点で紐解く、SHIPS JET BLUEの核とは?

CORE of SHIPS JET BLUE

バイヤー2名の視点で紐解く、SHIPS JET BLUEの核とは?

セレクトショップ「SHIPS(シップス)」から派生し、よりストリートやモード性を追求したレーベルとして誕生した「SHIPS JET BLUE(シップス ジェットブルー)」。他のショップにはないセレクト、独自の視点でエディットされた別注アイテムなど、このショップの動向が最近なんだか気になるのだ。お店の設計図を描くバイヤーは、いまなにを考えショップのディレクションをしているのだろう? バイヤー2名の視点を通してぼくたちを魅了する“何か”の存在に迫ってみよう。1週目はMDバイヤーとしてインポートブランドのセレクトを中心に行なう北畠芳治さんが登場。

  • Photo_Kazumasa Takeuchi(STUH)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta
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ジェンダーレスな提案を意識するようになった。

ーここ数シーズン、「シップス ジェットブルー」がなんだか変わってきているような気がします。置いてあるアイテムがちょっと大人っぽくなっているような気もするんですが、買い付けの際なにか意識していることなどはあるんでしょうか?

北畠:ショップの方向性を変化させようという意識はまったくないですね。お店の芯は揺らいではいけないものだと思っているので、コンセプトを守りながら我々の母体である「シップス」とはひと味ちがった独自のアプローチをしようとこれまでやってきたつもりです。とはいえ、ブランドの見つけ方、買い付けの方法に関しては、むかしと比べると変化があったかもしれません。いまは世界中のリアルタイムの情報が手に入る時代なので、我々もそれに対応していかなければなりませんから。

ーそのバイイング方法に関してはのちほどゆっくり伺うとして、現在バイヤーは北畠さんを含めて2名いらっしゃるんですよね? おふたりの役割のようなものを教えてください。

北畠:ぼくはMDバイヤーという役割を担っていて、そのシーズンのテーマやコンセプトなどを決めてワンシーズン刻みでショップの舵取りを行なっています。インポートブランドの買い付けもぼくが中心となってバイイングしています。もうひとりは田中というバイヤーがいて、彼は国内を中心にまわりながらおもにドメスティックブランドの買い付けや別注アイテムの企画を行なっています。

ーおふたりはいまどんなお店づくりをしようとしているんでしょうか?

北畠:いまお話したように「シップス」というDNAを受け継ぎつつも、独自の路線を歩もうとしてはじまったのが「シップス ジェットブルー」なんです。ストリートやモード性を追求し、その背景にあるカルチャーも一緒にお客さまへ提示することをコンセプトにお店づくりを行なってきました。これはいまもむかしも変わらないことです。変わったことと言えば、よりジェンダーレスな提案を意識するようになったことでしょうか。

ーここ数年、ファッションシーンのなかでよく耳にするキーワードですね。

北畠:従来は「シップス」のお店に付属するかたちで「シップス ジェットブルー」が存在していましたが、昨年春に「シップス ブルーストア」というお店をオープンしたんです。これはウィメンズのカジュアルラインである「カージュ(Khaju)」と「シップス ジェットブルー」が複合したショップで、お互いの表現したいことをお店で具体化させつつ、両者のあいだにある共通点を“ジェンダーレス”という言葉で括りながら提案を行なっています。とりわけ「シップス ブルーストア ファブ NEWoMan新宿店」は、そのコンセプトショップとして、我々の思い描く世界観をより具体的に表現したお店です。

ー「シップス ジェットブルー」と「カージュ」のフィルターを通した、ユニセックスなアイテムを展開していると。

北畠:そうですね。ここ数年、女性の描くファッション像と男性の描くそれが、近づきつつあるように感じるんです。そういった意味で、我々が行なえる提案の幅も広がったのではないかと考えています。「シップス ブルーストア」はその考えを体現しているお店なんです。男性が着るとカッコいいし、女性が着るとかわいい。そんなアイテムを置いています。

ーメンズファッションを中心に見ながらウィメンズのことも視野に入れてディレクションを行なうというのは、決して簡単なことではないですよね。

北畠:もちろんその通りです。ただ、ぼくがバイヤーになったのは10年ほど前のことなんですが、そのあいだに2年ほど「シップス」のウィメンズのバイヤーをしていたんですよ。なので、まるっきりゼロからのスタートというわけでもないんです。

ーなるほど、そうだったんですね。

北畠:おなじファッションというカテゴリーにあっても、メンズとウィメンズではトレンドの波に決定的な差があるんです。やっぱりウィメンズのほうが動きが激しくて、上手に波をキャッチできたかと思えばすぐにそれが静まり、また新たな波が押し寄せるといった感じで、とても目まぐるしい世界でした。たとえ2年という月日であれ、そういった経験ができたことは自分にとって大きな財産になっています。当然、「シップス ブルーストア」のディレクションにも活きていますから。

音楽や映画などのカルチャーを通して洋服の魅力を掘り下げる。

ー北畠さんご自身のことについてもっと知りたいのですが、ファッションに関してはどんなものがお好きなんですか?

北畠:根本にあるのはベーシックなアメリカ服ですね。むかしから『トップガン』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、アメリカの映画に親しんできたので、そこに出てくる洋服におのずと憧れを抱くようになったんです。それで「シップス」に入社したんですが、当時はこれでもかというほど店内はアメリカ製の服ばかりで(笑)。それはそれで幸せなことだったんですが、もっと違う服も見たいという想いが募って、ヨーロッパのブランドにも興味を持つようになりました。それで〈マルタン・マルジェラ〉や〈ラフ・シモンズ〉、〈ヘルムート・ラング〉などのデザイナーたちがつくるモードな洋服の世界にも惹かれていきましたね。

ーカルチャーに関してはどんなものに影響を受けて来たんですか?

北畠:映画の影響は大きいと思います。いま話したように、小さな頃からアメリカの大衆映画に慣れ親しんできましたし、いまでは低予算でつくられるインディペンデントな映画もよく見ています。

ー最近鑑賞したなかで、なにか面白い映画ありましたか?

北畠:DVDで見たんですが、90年代のフランス映画で「憎しみ」という映画はよかったですね。フランスの治安が悪い地区を舞台にしていて、そこに存在するストリートカルチャーがリアルに描かれているところがよかった。普通にカッコいい映画でした。





北畠:あとは、アイルランド映画の「ONCE ダブリンの街角で」という映画も素敵でした。これは2007年に公開された作品でストリートミュージシャンの話なんですけど、ほぼ全編を通して彼らが奏でる音楽で構成されているところがユニークでした。すごい低予算で制作されているところにも惹かれますね。最近はこの映画のサウンドトラックをよく聞いていて、そこに収録されている「When your mind's made up」という曲が気に入っています。



ーこういったカルチャーに触れることで、ショップのディレクションに影響を与えることはありますか?

北畠:やはり洋服をより魅力的に映すものとして、その背景にあるカルチャーというのはとても大事な要素になってきますよね。それを読み解く意味でも、映画や音楽に触れるというのはファッションに携わる者として必要不可欠なことだと思います。ショップでも「シップス ジェットブルー」の世界観をよりお客さまに共感していただくために、写真展やポップアップなどのイベントを行ったりしていますし。

北畠さんが貫く独自のバイイング・スタイル。

ー実際にバイイングする際も、そのブランドが持つカルチャーは重視しますか?

北畠:もちろんです。そのブランドの持つ雰囲気や、洋服のクオリティー、そしてデザイナーがもともとどんな経歴を持っていて、どんなカルチャーが好きで、どんな活動をこれまでにしていたのか? そういった内容は取り扱いへの重要な判断材料になります。これらの内容を踏まえた上でショップにはまるか、はまらないかのジャッジを行ないます。

ー最近の「シップス ジェットブルー」のインポートアイテムを眺めていると、トレンドをしっかりと押さえつつも、独自の視点で他のショップにはないユニークなブランドを展開しているように感じます。オンリーワンという部分は、やはり意識をしているんですか?

北畠:そうですね、意識しています。やっぱり、見たことのない服をお客さまにお届けしたいですから。他ショップのバイヤーさんたちも行くような大きな展示会ももちろん行きますが、独自のルートでみつけたブランドにも可能な限り多くコンタクトを取るようにしています。

ー独自のルートというのは、具体的にどういうことですか?

北畠:すごく現代的なんですが、SNSを通して見つけたブランドや、海外のブランドのスタッフに聞いた情報などを基にコンタクトを取って繋がるケースも最近では増えていますね。それこそシーズン毎にテーマを設けて洋服をつくっているメジャー志向のマイナーブランドや、Tシャツだけをコンスタントにリリースするようなインディペンデントなブランドが、海外にはゴロゴロいるんですよ。

ーそれが冒頭でおっしゃっていた、ブランドの見つけ方や買い付け方法の変化なんですね。

北畠:そうですね。ただ、初見でいいと思ったブランドがいきなりクリエーションの方向性を大きく変えてきたり、なんてことも起こるので、ブランドとのコミュニケーションの取り方や買い付けの方法が大事になってきますね。

ーといいますと?

北畠:第一印象がよかったからいきなり何型も買い込んでしまうのは、ブランドにとって必ずしもプラスになるとは言えないんです。次のシーズンにそれ以上のレベルでクリエーションを継続できるかはわかりませんから。質が落ちてしまった場合、名声も比例して悪化してしまいますし。そうならないためにブランドのいい部分だけに焦点を絞って買い付けを行なったり、次のシーズンやその先のことをどう考えているか? といった話をデザイナーに投げかけて、コミュニケーションを取るようにしています。

ーある意味では、ブランドの成長を見守るように買い付けを行うと。

北畠:見方によってはそうなるかもしれませんね。こちらとしてもなるべく長く付き合いたいと思っていますし、そういった気概を持ってブランドとコミュニケーションを取ることで、相手側も我々に対していい印象を抱いてくれる。それが結果としてお客さまに良質なアイテムをお届けすることに繋がるんです。

今季「シップス ジェットブルー」で展開する注目のアイテム。

ー最後に2016FWについて触れたいんですが、今季はどんなテーマでお店づくりをしているんですか?

北畠:冒頭ですこしだけ話したように、ジェンダーレスをテーマにディレクションをしています。時代の空気に合わせつつ、男性も女性も着れるようなアイテムを中心に商品を展開していますね。

ーこのシーズンを象徴するようなアイテムやブランドはありますか?

北畠:〈isidoro francisco(イシドロ フランシスコ)〉に注目してほしいですね。アイテムはアウター一着のみの取り扱いになるんですが、佇まいや空気感がいいブランドなんです。ニューヨークを拠点に活動していて、ローカルのやつらが気ままにモノづくりしている感じで、いい意味でゆるくやっているんですよ。実際にアイテムを見に行った際も背中の刺繍に関して「『BOYS OF NEW YORK』じゃなくて『BOYS OF TOKYO』にしようか?」なんて気さくに話してくれたり。

〈イシドロ フランシスコ〉ジャケット¥28,000+TAX
「SHIPS JET BLUE」2016FW シーズンルックより

ーどうやってこのブランドを見つけたんですか?

北畠:インスタグラムです。もともと「シップス ジェットブルー」で展開している〈dertbag(ダートバグ)〉というブランドがあるんですが、そのブランドと繋がりのあるモデルの女の子が〈イシドロ フランシスコ〉のこのアイテムを着た写真をアップしていたんです。

ー女性がメンズの服を着る。まさに今シーズン「シップス ジェットブルー」で表現したい世界観がそこにあったわけですね。

北畠:そうなんです。メンズの服なのに女の子が着ることによって、すごく洗練されて見えたんですよ。いい意味で曖昧なそのバランス感に惹かれたのと、スカジャンやスポーツジャンバーのいいとこ取りなデザインがいまのストリートシーンにもはまると思って、これはぜひうちでもやりたいとなりました。それですぐブランドにコンタクトを取って、デザイナーに会いにいきました。

「SHIPS JET BLUE」2016FW シーズンルックより

ー他に表現したいスタイルはありますか?

北畠:今シーズンは、レザージャケットにも力を入れています。イギリスの〈JAMES GROSS(ジェームス・グロース)〉というブランドに別注をしたり、〈Schott(ショット)〉の「ワンスター」もインラインで展開します。あとはオリジナルでもつくっていますね。

ーレザーに着目したのはどうしてなんですか?

北畠:ここ数シーズン、あまり見かけなかったじゃないですか(笑)。だからいま見ると新鮮に映るんですよ。色はすべてブラックのみで展開します。レザージャケットって結局、ブラックがいちばんスタンダードでカッコいいと思うので。ただし、カウやラム、ホースなど、革のバリエーションは豊富に揃えているので、お客さまの好みに合わせて選んでいただければと思っています。ユニセックスなアイテムにしても、レザージャケットにしても、とにかくお客さまに共鳴してもらえればうれしいです。

〈ジェームス・グロース × シップス ジェットブルー〉ジャケット¥135,000+TAX

ーこの他に別注に関する話題もお伺いしたいのですが、それは田中さんの専門でしたよね。

北畠:そうです。ドメスティックブランドや別注に関する話題は、もうひとりのバイヤーである田中のフィールドになるので、また次週の更新をお楽しみにしてもらえればと思います。

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