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FEATURE|NYに生きる日本人アーティスト、トーヤ・ホリウチに出会って。

NYに生きる日本人アーティスト、トーヤ・ホリウチに出会って。

Interview with Toya Horiuchi

NYに生きる日本人アーティスト、トーヤ・ホリウチに出会って。

NYのブルックリンに住むアーティスト、トーヤ・ホリウチ。彼の名前を知る読者はまだ少ないかもしれません。けれど、〈クォータースナックス〉や〈オールタイマーズ〉など、いま世界中で人気を博しているスケートブランドや、フイナムにも度々登場しているアーティスト、KID FRESINOのファンであれば、自ずと彼が手がけたグラフィックやデザインを目にしているはず。NYというカルチャーが生まれる中心地のひとつに単身乗り込み、遂にはアーティストとして認められた彼に話を聞きました。

  • Photo_Takeshi Matsumi
  • Text_Maruro Yamashita
  • Edit_Jun Nakada
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もともと何か物をつくるのは好きでした。

ーまずトーヤさんのバックグラウンドについて教えてください。

トーヤ:地元は横浜です。高校を卒業して、LAの大学に通うためにアメリカに来て、5年ちょっと前にNYに移って来ました。小学校の頃絵画教室に通ったりしていて、もともと何か物をつくるのは好きでした。それで、18歳の時に、親から海外に行くことを薦められていたこともあったし、漠然と建築家になりたいと思っていたので、アメリカに行って勉強してみようってことで、英語も出来ないのにLAに行ったんですよね(笑)。

ー建築家になりたかったんですね。

トーヤ:絵を描くことよりも、スカルプチャーとか立体的な物をつくることが好きだったんです。家が建築資材屋なんですよ。コンクリートブロックとか、ネジとか砂利とかハンマーとか、そういうものに囲まれて育ったので、いま思い返したら、その影響だったんだろうなって。だから、ミニマリズムのコンテンポラリーアーティストがつくるような作品は、ものすごく懐かしくもあり、新鮮でもあるんです。

ー実際に建築科のある大学に進学したんですか?

トーヤ:いや、結局大学では一般教養的なことと英語を普通に勉強していました。その頃に、スケートボードやカウンターカルチャーだったり、スケートのデッキのグラフィックだったりを見ていて、すごくかっこいいなと思って。高校の頃もスケートのビデオとかは見てたんですけど、改めて影響を受けたというか。そこからですね、そういう物をつくろうみたいな気持ちに変わったのは。

ーその後、どういうきっかけでNYに?

トーヤ:もともとエリック・エルムスが大好きで、エリックのアシスタントをやっていたこともあるんですよ。6年くらい前ですかね。11年の8月くらいに、NYに1ヶ月間ステイしていて、その時に、エリックのスタジオを訪ねて、アシスタントをさせてくれって直談判して。そしたら、エリックが11月に日本でエキシビションやるから、それの手伝いしてくれない? ってことで、巡り合わせでスタジオに受け入れてくれたんですよ。そういうのがはじまりですね。

ーそれから本格的に創作に打ち込むようになったんですか?

トーヤ:そうですね、LAではいわゆる普通の学生的な生活を送っていたというか。NYでもそれと同じことをしたら意味がないし、とにかくこっちの奴らの中に入れないかなと思って。いろんなお店に通ってたんですよ。

ーお店というのは服屋ですか?

トーヤ:そうです。けど、それだけじゃただのお客さんなんですよ。自分が何をやっているのか、こっちからアプローチしていかないと向こうも絶対見てくれないし、気にかけてくれない。そういうこともあって、ステッカーをつくりはじめたり、NYの人たちを『GRAND THEFT AUTO』(Rockstar社からリリースされている人気ゲーム)風にイラストレーションしたり、そういうのをどんどんこっちの人に見せたりして。そうしたら、次第に環境が良くなってきたんです。よく考えたら、NYに来てからずっと何かをつくってますね。

ーエリック・エルムスのスタジオをいきなり尋ねたり、自発的に作品を披露していったりと、能動的に動いた結果がいまに繋がっているんですね。

トーヤ:割とそういう運はありますね(笑)。うん。飛び込むことも別に。最初は緊張しますけどね。いま僕は〈LQQK STUDIO〉でも働いているんですけど、それも、シルクスクリーンを勉強したいから働かせてくれって言いに行ったんですよ。それに、僕のスポンサー、スポンサーって言っても日本で言うところのスポンサーではなくて、アーティストヴィザを取るために必要な身元引き受け人的な、書面上でもきちんとサインを行う、自分のことをサポートしてくれるエージェントみたいな人のことなんですけど、彼とも直接の面識はなかったんですけど、連絡先を共通の知り合いから聞いて連絡を取りましたね。トーヤっていうんだけど、日本から来てこういうことをやってるんだけど何か手伝えることない? っていう感じで。

ーすんなりOKしてもらえたんですか?

トーヤ:彼、アレックス・ダイモンドっていうんですけど、僕のことを知っていてくれたみたいで。トーヤだろ、知ってるよ。じゃあ今度一緒に働こうか、という流れで。

ートーヤさんがステッカーつくったりしていたのを知っててくれたってことですよね?

トーヤ:そうですね。見てくれてたみたいです。それこそ、『GRAND THEFT AUTO』風のイラストレーションをやりはじめたのが、2012年から2013年くらいで、インスタグラムがNYで爆発的に流行った時期だったこともあって、結構皆がアップしてくれたんですよ。なので、あのことはいまでも言われますね。あれやってたのお前? みたいな。そういう風に色んな人が認知してくれたみたいで、その中にアレックスもいて。

ーなるほど。ということは、アレックスさんがトーヤさんのエージェント的な立場上、彼経由での仕事もあるということですよね?

トーヤ:そうですね。アレックスから、こういう仕事あるけどやる? とか、こういう仕事が来てるんだけど一緒にやろう、みたいな感じで声をかけられます。アレックスといちばん最初にした仕事が、リリースされたのは昨年ですけど、〈917〉と〈ナイキ SB〉とのコラボのロゴのベースですね。2年前の冬だったかな。その後くらいから、〈アークテリックス〉のジャケットのデザインとか、〈オールタイマース〉や〈クォータースナックス〉とかのデザインをやったりしてますね。最初は、これをこうしてみたいな指示を受けてやっていたんですが、次第に、トーヤ、なんか良いアイデアない? みたいに聞かれるようになってきて。

ートーヤさんがこれまでにいちばん影響を受けて来たものは、やっぱりスケートカルチャーですか?

トーヤ:そうですね。スケートはスケート自体も好きだし、グラフィックなんかも好きです。あとは〈シュプリーム〉も好きですし、ヒップホップも超好きです。最近はジャ・ルールとか50セント、スタジオではスリー・シックス・マフィアとかを聞いてましたね。90年代のいなたさも大好きなんですけど、あの辺の00年代の奴らって、いい意味でかっこつけていて、超クールだったじゃないですか。あの頃のMVビジュアルとかカーバーアートワークとか、やっぱりかっこいいなって。もちろんいまのヒップホップも大好きだし。ヒップホップゲームで勝ってやろう! みたいな、マインドが好きですね。

ーヒップホップ絡みでいうと、KID FRESINOのアルバム『Salve』のジャケットのアートワークを手掛けていますよね。

トーヤ:あれは佐々木くん(KID FRESINO)やDJ Scratch Niceたちとよく遊んでいて、その時彼にお願いされて。KID FRESINOのことをNYでずっと撮っていたフォトグラファーのユウタくんが、メインの写真を撮ることが決まっていたので、そこは3人で話し合ってイメージを固めて、あとはインナースリップからバーコードの位置まで全部デザインさせてもらいました。佐々木くんにも喜んでもらえたみたいで良かったです。

自分がどれだけ何をつくりたいか。

ートーヤさんは肩書きとしてはグラフィックデザイナーになるんですか? 何をやってる人ですか?って聞かれたら何て答えます?

トーヤ:最近だったら、グラフィックデザインとビジュアルアートだって答えますね。ビジュアルアートではまだ生活できていないですが、やってるよということで、ビジュアルアートは絶対言うようにしてますね。グラフィックデザインは後3年か5年くらいで辞めてもいいです。むしろ辞める予定です。5年以内には。

ーその2つの線引きというのは?

トーヤ:グラフィックデザインをするのもデザイナーなんですけど、結局クライアントがいるもので、他人が求めているものを100%で仕上げるということですね。でもそれはそんなに難しくはないかな。ビジュアルアートというのは、自分が何をつくりたいかということがすべてで、アートなので、自分がどれだけ何を表現したいかっていうことを、出来る限り突っ込めるんですよ。そこが最近やっぱりおもしろいです。自分次第っていうのが。『We Talk About Blue』はすごく評価されましたね。これは本当につくって良かったです。

ートーヤさんが最近リリースしたアートワーク集ですね。これは何故ブルーだったんですか?

トーヤ:インスピレーションはジャズですね。ジョン・コルトレーンの『Blue Train』だったり、マイルス・デイヴィスの『A Kind Of Blue』もそうですし、ジャズの人ってブルーっていう名前をよくタイトルにつけるんですけど、その楽譜もブルーノートって呼ばれていたりして。ジャズにおいて、ブルーってすごく重要な言葉だったり色だったりするんです。それに、ピカソでも“ブルーの時代”ってあるし、ヘンリー・マティスにも印象的なブルーがありますよね。で、昨年あたり個人的にブルーがいちばん好きな色だったこともあって、『We Talk About Blue』をつくりました。ブルーも色々あるじゃないですか。明るいのとか、緑がかったのとか。自分のブルーはどれかな? って結構探して。レーベルのBlue Noteがつくるブルーはもっと緑がかってるんですけど、自分のブルーはそこじゃないなと。もっとアンリアルな、アンユニバーサルなブルーってどういうのかなって思って。それがこのブルーでしたね。僕のブルーです、これは。

ーブルーにすることで、身近な物が未知な物に変化しますよね。

トーヤ:そうですね、それはみんな言ってくれました。他人の反応はまったく気にしないでつくったんですけど、予想以上にみんな買ってくれて驚きました。お店に卸す分とかもなくなっちゃって。でも、増刷はしないで、これはこれで完結ですね。

ー日本のブランドや企業とも仕事しているんですか?

トーヤ:日本で友達とブランドやってます。〈ヘルレイザー〉っていう。ディレクターのTsumiが日本にいて、僕がデザイナーみたいな感じで。日本でやってるのはそれくらいですね。掴みきれない、謎なブランドですがつくるものはとてもカッコいいですよ。

ー日本に住む僕らからすると、NYって東京以上にファッション業界の移り変わりが早いイメージですが、実際はどうですか?

トーヤ:移り変わりが激しいのは、ブランドが無くなったりという意味ですか? だとしたら、それは日本の方が早いんじゃないですかね。結局、日本の人たちはみんなすぐ飽きちゃうんですよ。こっちの人たちはベースがあるから、ブランドを止めたとしても、その人はそのまんまなんですよね。ブランドは無くなっても、そのブランドのイメージは変わらずそのまま残ってるみたいな感じなんですけど、日本のいまの人たちは流行りでやって、結局何も中身がなくて、終わっちゃっているように見えます。だから何も残らないんですよ。こっちは何かありきで、そういうのが育って来たり、出て来たりするんで、全然違いますね。まぁ時代ですかね。

ーつまり日本には単なるファッションとしてブランドをやってる人が多いということですか?

トーヤ:そうですね。全部がファッションになっちゃってるのかもしれないですね。NYはファッションもあると思うんですけど、みんな本当に何かをつくりたいという気持ちがあってつくっているというか。表現のひとつとして服があるんだと思います。

ーそれはスケートブランドのように、バックボーンが見えやすいブランドに限らずですか?

トーヤ:はい、つくりたいからつくってるというのが、ファッションやデザイン、ブランドに現れているんですよね。もちろん、アメリカでも、またどうしようもないブランド出て来たな、と思うこともありますけど、そこは全然気にしないですね。ありがたいことに、いま仕事をしていたり、話ができる人たちっていうのは、本当に自分が好きだったり、敬意を持ってる人やブランドと仕事することができているので。それは本当に感謝じゃないけど、ありがたいなって思います。

ーこの先つくりたい物は何ですか?

トーヤ:スティルライフがつくりたいですね。日本語だと、静物画っていうのかな。トム・ウェッセルマンのスティルライフがすごく好きなんですよ。自分だったらどういう風に表現出来るかなっていつも考えてます。最近だとウェイド・ゲイトンの作品が最高です。あと、僕、ブラックパワーが好きで。それは単にブラックに憧れているとかじゃなくて、人種的なパワーが好きなんです。黒人の人たちって迫害や制圧とかを受けてきた人種だと思うんですけど、そこに対する怒りだったりパワーだったり、熱だったりがあるから、逆にラブ&ピースがあるっていうか。レゲエであれば、抑圧された怒りをラブ&ピースに変換してるというのも好きですし。トランプだったり、黒人の弾圧とかで、また人種問題が目立って来ていますけど、僕は争いごとが大嫌いだし、平和にいこうよって思いたいので、そういう物をつくりたいですね。別にポリティックな物をつくりたいというよりかは、人種的バックグラウンドがある物、アフリカンマスクとか、そういうのを自分の表現を通して、作品で見せれたらなと思っています。

ToyaHoriuchi

横浜生まれ、NY在住のグラフィックデザイナー / ヴィジュアルアーティスト。現在は〈ルックスタジオ〉でも勤務しながら、シルクスクリーンについても学び、アーティストとしての更なる表現方法を探求中。
toyahoriuchi.com

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