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FEATURE| ハコ、モノ、ヒト。時間や国境を越えて混沌と存在するCASICAという場所の可能性。

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ハコ、モノ、ヒト。時間や国境を越えて混沌と存在するCASICAという場所の可能性。

新木場という場所にまったく新しいタイプのコミュニティスペースが誕生。古い銘木倉庫をリノベーションし、「生きた時間と空間を可視化する」をコンセプトに、新しいモノや古いモノ、日本のモノや海外のモノがヒエラルキーなくディスプレイされた理想的なコンプレックススペース、その名も「CASICA(カシカ)」。内装設計から施設内のディスプレイ、古道具や古家具の買い付けまでをトータルに行う「CIRCUS(サーカス)」の鈴木善雄さんと引田舞さんにお話を伺いながら、このクリエイティブな空間が生まれるまでについて伺いました。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Text_Masako Serizawa
  • Edit_Ryo Komuta

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鈴木善雄(右)
内装設計から店舗のクリエイティブディレクション、イベント企画など活動は多岐にわたる。架空のパン屋「TAKIBI BAKERY」、過去の文献から紐解いた家具を再構築する「焚火工藝集団」の代表を務める。

引田 舞(左)
アパレルのプレスアシスタント、ラジオの構成作家などのキャリアを経て、現在は鈴木さんと「サーカス」に所属し、「カシカ」のディレクションなどを担当。

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あえてすべてのモノのルーツを曖昧に。

天井が高く開放的なコンプレックス内に入ると、まず目を引くのが壁を覆うような古道具屋、古家具、そして存在感のある植物たち。ディスプレイを見ていてまず気がつくのは、年代や国など、このモノっていったいどこのものなんだろう?ということ。そう、ここのディスプレイには、あえてどのモノにもキャプションがついていないんです。モノとモノの間で自分の視線を行き来させながら、このミックスマッチな空間を眺めて想像を膨らませているだけでも楽しめます。

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空間の一部は倉庫に残っていた端材や材木を再利用。ディスプレイされたモノの中には、鈴木さんと引田さんが2トントラックを自ら運転し、競りで掘り出して清掃や修理を施した古道具や古家具も並びます。

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圧倒される植物たちは、植物との関係を再構築するプロジェクトチーム「園芸と再生」によるもの。

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天井高が13メートルあるギャラリーは倉庫の作りを活かした空間。「クライアントさんの依頼では茶室を作る話もありましたが、なかなか不勉強なまま茶室を作るのは難しいと思って、そのエッセンスだけは採用しました。茶室のにじり口をイメージして、小さい入り口にして、そこから広がる宇宙や大きな空間を表現したくて。ここは店舗のスペースと、音も空気も違うんですよね。なのでここだけ切り離した空間にして、ゆくゆくはいろんなことをしていきたいなって」(鈴木さん)。取材で訪れた日は、お正月ムードのめでたいディスプレイ。鈴木さんと引田さんが競りで買い付けてきた古道具も。

新木場という場所で新しくスタートするということ。

そもそもなぜ、新木場という場所を選ばれたのでしょうか?

鈴木もともと僕が〈タキビ ベーカリー(TAKIBI BAKERY)〉というブランドをやっていて、全国の卸先や都内のセレクトショップと付き合っていくなかで、雑貨屋をやるのは簡単じゃないぞというのは認識としてありました。ましてやオンラインショップだけでこのご時世に売れるようにするのは難しいし、まずちゃんとリアルショップを作ろうというところから入って。じゃあ雑貨屋というと、青山ですか? 中目黒ですか? というところから始まるんですが、そういうエリアでやっても僕らの実力というか、やり方では結果を出せないと思いますという話をクライアントとして。であれば、色がついてないところで一からディレクションをさせてほしい。そういった東京の中心地は外そうというところからスタートしました。また蔵前とか浅草、清澄白河あたりのいま盛り上がっているローカルなエリアも今回はあえて外そうかと。そうこうしているうちに思いついたのが新木場だったんです。この街は大きな倉庫がたくさんあって、一度見に来たら本当によくて。もともと設計の仕事もしていたので、古い材木を扱う昔ながらの商店などとも繋がりがあったり。新木場だったら、新しいものだけでセレクトショップをやるよりかは、古道具や古家具を扱うのもいいかなと。

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鈴木今セレクトショップらしいセレクトショップって、減っちゃってるのかなって思うんです。どこでもなんでも同じように買えてしまう時代になっているので。なので自分がやるときは、一点モノをきちんとミックスしながら大きな規模で店を出したいなというのもありました。新木場という場所がもともと木の街だったという点もこのお店のコンセプトを作る重要なファクターになったと思います。

なるほど、新木場は昔、木の街だったんですよね。江戸時代に材木の置き場としてその地名がつけられたとか。

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鈴木ウワサによると今は住んでいる人が5人ぐらいしかいないっていう(笑)。大規模開発の話もあったんですが、結局案外手付かずで残っていて。でも街の人たちは新木場っていう街をどうにかしたいよねっていう思いもあって、このスペースのような倉庫があっても、物流センターのようなところが借りることが多いそうなんですが、単純な倉庫街になっていっても、街としてはつまらない。だからこういう新しいスペースができていったら面白いよね、って周りの方にも言っていただけるのは本当にありがたいですね。

セレクトショップを再定義することでモノの価値観を変えたい。

そう言った意味では東京にある既存のセレクトショップとは全く違うものになっていると思うんですが、それぞれのモノを選ぶ際の基準はどのようなものなのでしょうか。

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鈴木基本的に僕が古いモノ、彼女が新しいモノを担当しているんですけど、お互い夫婦なのでオーバーラップして話はしているんですが、2トントラックで月に2回ぐらい競りに出かけて、トラックをパンパンに詰めて戻って来ます。新しいモノは展示会まわりから、現代作家さんの個展に足を運んでお皿を実際に使って見て、いいなと思ったらアポを取ったり。僕があまり飛行機が好きじゃなくて、岡山とか伊賀とかどこでも車で行くんですけど、福岡へ行くときなんかは、彼女が飛行機で僕だけ車をフェリーに乗っけていって、現地集合してそこから、みたいなことはよくあります(笑)。

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引田先に、2日前には家を出た主人と現地で合流して(笑)。

鈴木車で現代作家さんの窯を回りながら「好きです、あなたの器!」と自分たちの想いを伝えにまずは会いに行きます。

引田今のセレクトショップがダメというわけではなく、昔の方が良くも悪くも個性というか、“滲み出ちゃっている”みたいな店が多かったと思うんです。

オーナーの愛が出てしまっているというか。

引田昔は情報が少ないので、独自のルートとか、自分が探して来た、みたいな感覚値がすごく強かったなと。今はやっぱりSNSなど情報がものすごく早いので、いいなと思うものがみんな一緒になってきてしまっている。

価値観が平均化されていますよね。

鈴木そういった意味でセレクトショップって今どうあるべきというのをもう一回考えたかったんです。僕自身があまりこの作家さんだから、このブランドだからとか、新しいから古いからとか、最初にフィルターをかけてモノを見てほしくないなっていうのがあって。僕らはもともとこういうことをやる前から、フリマが好きで、手にとって見ていると何10円という金額ですごく気に入ったものが買えたりする。それが骨董市とかプロが並ぶお店だと、みんな値段が分かってしまって、探し出したというよりは、何年代の何々だからこのぐらいの値段で当たり前だよね、みたいになってしまう。そういう感じより、もうちょっと純粋に自分が好きならそれが何年代のモノだろうが、どこの国のモノだろうが、なんでもいいよねっていう。一回、モノとニュートラルに出会うっていう関係性を作りたかったんです。そういった意味で、ここのお店に関しては基本的にすべてキャプションを書いていません。作家さんのものだとさすがに失礼なので、後ろに名前を入れたりはしているんですが、それだけです。

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お客の立場からするとすべて手に取って、「これって?」と店員さんに話しかけてしまいたくなります(笑)。

引田不親切、というのを大切にしたいなと思っています。

鈴木その代わり、引き出しでもなんでも開けてください、という感じです。その中に1点モノが入っていたり。モノと出会うのにワクワクするようなきっかけを作れたらと思います。純粋に自分たちが好きなものを選びつつ、使いやすいものを。今の日本の生活ってミックスだと思うんです。海外のも和のモノも使っていて。古いモノも新しいモノもごちゃっとしているライフスタイルなので、お店もそういう感じでいいのかなと。コンセプトも「生きた時間と空間を可視化する」ということで、時間と空間、世界中のモノ、古いと新しいと、なるべく物事の軸をフラットにして見せていきたいと思っています。お店に昔ながらの箪笥があるんですけど、そういうモノとベニワレンのラグって、すごく相性が良いと思うんです。そういう日本ならではの、色々な要素を取り入れたミックスってあらためてすごく面白いなと。ほかにもカゴだと、アフリカのもあればインドネシアのものも、青森あたりの日本のカゴもあるし、古いのも現代作家のカゴも。そういうモノを一緒に置いてみると、場所は違えど手仕事の共通項があるんだなとか。私たちもやりながら発見をしている感じです。

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鈴木さんが好きで集めたという木彫りのクマも今となっては膨大な数に。鈴木さん&引田さんのご自宅ではドアストッパーとして使ったり、1歳8ヶ月のお子さんがまたがっているのだそう。

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出会いを生み出すコミュニティスペースとして育てる。

併設のカフェでは、南風食堂監修のアーユルヴェーダを基礎にした薬膳料理が味わえる。「和とか洋とかで区切るのもというのもあり、フードもミックスで。例えばベースは和だけれど洋のヨーグルトを合わせたり。もともと友人だった南風食堂の三原さんに相談して。そういった信頼のおけるチーム作りができたのもすごく良かったですね」(鈴木さん)

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CASICA Set Menu(¥1,200+TAX)は、好きなおかず3品をセレクトでき、雑穀ごはん、本日の汁椀、お漬物がセットになったメニュー。おかず3品は「割り干し大根、紫たまねぎ、高野豆腐のサラダ」「ひじきとグレープフルーツのサラダ」「鱈と馬鈴薯のグラタン」

店舗設計から、グラフィック、カフェのプロデュースまですべて担当されて。運営されている映像制作やイベントの企画、ウェブコンテンツなどを手掛ける「タノシナル」さんも、全幅の信頼を置かれているんですね。

引田2階はスタジオスペースになっています。そこに置く家具はお店と違ってスタンダードな方向性で考えています。スタジオの家具も用意しつつ、お店の家具も撮影時にお貸出しできるようにしたいなと思っています。このスペースを見た方から新しい展示などのイベントのお話をいただけることも多くて。またここで地元の方たちが今後の新木場を考える会というのをやられたり(笑)。おじさまたちが50人ぐらい集まって夜サミットしたりと、そういったイベントの拠点として使っていただけるのは、新参者としてはうれしい限りですね。

ハコとか場所の可能性も感じますよね。コミュニティスペースに早くもなっているって、結構すごいことですよね。

鈴木地元の人たちも肯定的に反応してくれているのがありがたいですよね。

引田近所のおじいちゃんが世間話をしにコーヒーをフラッと飲みに立ち寄ってくれる。そんな落ち着く場所にもしていきたいです。

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2月に店舗では福岡で注目を集めるインテリアショップ「ライトイヤーズ(LIGHT YEARS)」さんの展示も開催予定とか。訪れるたびに新しいモノとの出会いがある予感。日々カスタマイズされてまったく新しいものに生まれ変わっていく空間を肌で感じに出かけてみてください。

CASICA
住所:東京都江東区新木場1-4-6
電話:ショップ(代表)03-6457-0826 / カフェ 03-6457-0827
営業:11:00〜19:00
casica.tokyo

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