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新たな文化拠点「GEMS」の誕生に際して実現した、 地元人、小宮山雄飛&eri の神宮前四方山話。

Road to GEMS JINGUMAE

新たな文化拠点「GEMS」の誕生に際して実現した、 地元人、小宮山雄飛&eri の神宮前四方山話。

神宮前エリアにまたひとつ新しいランドマークが誕生します。2018年の4月27日(金)にオープンする「GEMS神宮前」は、“GOODY CULTURE FOOD & FASHION”をテーマに様々なテナントが集積する都市型商業施設。そんな話題のスポットをさらに盛り上げるべく、神宮前にゆかりの深い二人のクリエイターによる対談が実現しました。2015年に渋谷区観光大使に就任したホフディランの小宮山雄飛さんと伝説の古着屋「デプト(DEPT)」を新しく生まれ変わらせたeriさんが語る、神宮前エリアのこれまでとこれから。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Text_Yuho Nomura
  • Edit_Ryo Komuta
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小宮山雄飛

1973年渋谷区生まれ。自身がボーカル&キーボードを担当するホフディランとしてのバンド活動を行う傍ら、自称カレー研究家として様々なグルメにも精通しており、様々なメディアで連載企画を持つ。過去にはレシピ本も出版。また地元の渋谷区でラジオ番組のパーソナリティーを務め、観光大使に就任するなど自他ともに認める生粋の渋谷人として知られる。

eri

80年代から日本の古着シーンを牽引してきた伝説的なショップ「デプト」。そのオーナーを父に持ち、現在は新生「デプト」のオーナーとして活躍する。またその他に〈マザー(mother)〉や〈ユートピア(VTOPIA)〉、〈ブランニューオールド(BRANDNEWOLD)〉などのブランドを手掛ける多彩なデザイナーとしても知られる。原宿は第二の故郷と語り、裏原世代のクリエイターたちとの親交も深い。

GEMS神宮前

フードやファッションなど、ライフスタイルに自分なりのこだわりを持った人たちが訪れる神宮前エリアに、2018年4月27日「GOODY CULTURE FOOD & FASHION」をコンセプトにしたGEMS神宮前がオープン。働く人も、遊ぶ人も、日本人も、外国人旅行者も、誰でも、いつでも、気軽に、美味しく、リーズナブルに、そしてカッコ良くフード & ファッションライフを過ごすことができる「GEMS神宮前」。B1Fから2Fにはアパレルストア、3Fから10Fにはお寿司、お好み焼き・串カツ、南インド料理、タイ料理、餃子、焼肉、おばんざいの飲食店。1フロアに1店舗ずつ神宮前らしい「GOODY」なスタイルのお店が集積した複合施設となります。

新しいものと古いものが混在していく街の姿を受け止めていきたい。(小宮山)

元々友人として親交もあったとお聞きしましたが、お二人の出会いはいつ頃だったんですか?

小宮山雄飛(以下、小宮山)eriとは付き合いも長くて、おそらくもう15年以上も前になりますかね。世代は全然下なんですけど、彼女は昔から上の世代の大人たちともフランクに接していたこともあって、仲間が大体一緒なんですよね。最初に出会ったのが確か俺が26,7歳くらい。eriはまだ18,9歳だったかな。

eriそうそう。懐かしいね。出会った時期とかもうあまり覚えてないけど、最初HIROMIX(注:国内におけるガーリーフォトの第一人者でもある写真家、DJ)が共通の友達でいて、遊ぶようになった気がする。

小宮山そうだそうだ。昔はよく仲の良いメンツで夜な夜な集まって飲みに行ったりしていて、その時に共通の知り合いだったHIROMIXに紹介してもらったというか、その時に出会ったんだよね。

eri昔はよく遊んでいたよね。雄飛のライブに観に行ったりとか。

小宮山そうだね。年越しもみんなで一緒にしたのとか覚えてる?

eriそんなこともあったよね、懐かしい。年も一緒に越してそのまま初詣したよね(笑)。

お二人とも幼い頃からこの神宮前のエリアで過ごしてきたということで、世代や性別は違えど、そうした共通言語があるというのが仲の良さの秘訣だったりするんですか?

eri東京出身でもこの辺って意外とゆかりを持っている人が少なくて、そうした意味では雄飛に対して数少ない仲間意識を持っていたかもですね。

小宮山うんうん。東京って他県や海外から毎年沢山人がやってくるので、東京にいながら郷土的な繋がりを持った人が少なくて、逆に迫害を受けているような感覚になるんだよね(笑)。

eri分かる(笑)。街並みも私たちの幼い頃の面影がどんどん薄れていくし、取り残された感はあるよね。

小宮山切ないなって感じる瞬間もあるけど、最近はそれも神宮前エリアの宿命なんだと思って、新しいものと古いものが混在していく街の姿っていうのを受け止めていきたいなって思うようになったかな。

かつての神宮前エリアで印象に残っているお店とかってありますか?

eri当時だったら「パレフランス(注:東郷神社が運営する複合型ファッションビル。惜しまれつつも2003年に閉館)」とか。あとは「オーバカナル 原宿店(注:パレフランス1階にあったフレンチスタイルのカフェ。当時の原宿界隈のクリエイターをはじめ多くの人から愛された名店)」の前を通ると誰かしらがご飯を食べているイメージ(笑)。あそこがなくなった時は悲しかったですね。閉店パーティの時にライブさせてもらったのは良い思い出ですね。

小宮山俺はその閉店パーティの時、仕事かなんかで最後の方に行ったんだけど、かなりカオスだったよね(笑)。何人か残党が残っていてかなり乱れてた(笑)。あと俺の世代だと「カフェドロペ(注:70年代の表参道を代表する伝説的なカフェ。オープンカフェの先駆けとも言われる)」は印象深いな。

eriうんうん。懐かしい。

小宮山あと名前が思い出せないんだけど、今の「ビームス」の手前にあったナッツ取り放題のお店。そこは〈ナンバーナイン〉時代の宮下君(注:現〈タカヒロミヤシタザソロイスト〉のデザイナー。当時は〈ナンバーナイン〉のデザイナーを務めていた)とも一緒によく行っていたんだよな。

eriあー、ナッツの店。あったね。

小宮山正確にはナッツのお店ではないんだけどね(笑)。ナッツも食べられる雰囲気の良いバー。あと裏原の人達は当時その辺りにお店や事務所を構えていたこともあって、実際に住んでいる人達も多かったよね。

eriそうだね。神宮前でもちょっと千駄ヶ谷寄りのエリアとかだったよね。

小宮山あと別に行きつけだったわけではないけど、旧「GAP」の跡地に梅宮辰夫さんの辰っちゃん漬けのお店(注:正式名称は「梅宮辰夫漬物本舗」。80年代のタレントショップブームを牽引した代名詞的なショップ)があったじゃん?僕がまだ小学生くらいの時だったんだけど、表参道の真ん中に梅宮辰夫さんの銅像があるっていう。今では考えられないよね。

eriあー、あったね。タレントショップブームの時代だね。

小宮山あとこれは僕も生まれる前だけど、原宿駅前の「GAP」の辺りには、その昔ゴルフの打ちっ放しもあったんだって!

お二人にとってゆかりもある場所となるといかがですか?

小宮山そうなると、現在は渋谷区役所の仮庁舎の場所にあった旧渋谷区児童会館。あそこは、僕自身昔から遊んでいたスポットでもあるし、この辺が地元の人たちにとっては特に思い入れの強い場所だったと思いますね。

小宮山雄飛レコメンドスポット1

渋谷区役所仮庁舎
庁舎建て替えにあたり、美竹通りの近くに建設された。新庁舎オープンまでの期間、区役所の役割を担う。

あとその周辺一帯を渋谷と原宿の中間ということで僕は勝手に渋原って呼んでいて。奥渋なんかと同様に今後まだまだ面白くなる可能性を秘めている場所でもあるんですよね。

eri確かにあの辺って手付かずだったというか、ぼーっとしてるもんね。

小宮山ぼーっと(笑)。まぁ確かにそうなんだよね。これからが楽しみだけどね。あとは小さい頃の原宿のランドマークといえば「キデイランド」。時代に合わせてデコレーションや配置は変えつつも、昔でいうおもちゃ屋さんの役割を今なお担っているお店で、レジェンドショップだよね。

小宮山雄飛レコメンドスポット2

キデイランド
子供たちに人気のキャラクターやマスコットのグッズが揃う、総合型トイショップ。同店限定のアイテムも。

eri海外からの人も多いし、地元の人だったらみんな子供の時に一度は行ったことがあるってくらいお世話になったよね。

小宮山あと観光大使として代々木公園も外せないね。神宮前のエリアで一番の精神的なオアシス。周辺に明治神宮があって、それに伴い参道ができて、街が少しずつできていったという歴史や土壌も含めて象徴的な場所。人で溢れるエリアでもこの辺りの空気がどこか澄んでいるのは、きっとここがみんなにとって心休まる場所なのが理由なんだと思うな。

小宮山雄飛レコメンドスポット3

代々木公園
かつては陸軍代々木練兵場であり、東京オリンピック選手村を経て公園となった、渋谷区を代表する都立公園。

eriそういえば昔代々木公園で流しそうめんしたよね?

小宮山それ俺いたっけ? 流しそうめんは大好きだからもしいたら鮮烈に覚えているはずだけど(笑)。eriは他にもあったりする? 例えば「バカント(VACANT)」なんかは、旧「デプト」の跡地でもあって神宮前のエポックメイキング的な場所だったとも思うけど。

eriそうだね。あそこができた時はみんなの遊び場ができた感じはあったね。原宿の中でもあの辺って特にファッション的なイメージが強いエリアだと思うんだけど、その中でもっと大きなカテゴリーとしての文化的の匂いが感じられる場所なのかなって思う。クリエイティブなマインドを持った人たちも足を運んでくれるような、旧「デプト」はやっぱり私にとっての原宿のシンボル的なスポット。

eriレコメンドスポット1

バカント
2009年にオープンした複合型のフリースペース。併設するショップに加えて、不定期で様々なイベントを開催している。

小宮山もう10年以上も前か。「デプト」時代も考えると歴史もあるよね。

eriあと私は東郷神社には幼い頃からよく両親に連れられて、頻繁に足を運んでいた場所でもあるので思い出深いな。日曜日にやっていた骨董市とかよく行っていた記憶があるし。最近は土地開発の影響もあって風景が変わってしまったけど、一歩中に入るといまだに変わらない静けさとあたたかさが残る特別な場所なんだよね。

eriレコメンドスポット2

東郷神社
勝利・至誠の神である東郷平八郎の命を祀る伝統が息づく神社。都会の勝運スポットとしても有名。

小宮山昔は表参道も歩行者天国をやっていたり、今とは全然雰囲気が違ったもんね。

eriあとは、今の「表参道ヒルズ」にあった旧「同潤会青山アパート」だね。あそこは小さい頃によく忍び込んではかくれんぼしたりして遊んだり、階段の踊り場から表参道を眺めていたり、今でも通ると少しノスタルジックな気分にさせてくれるところ。古い蔦のはった建物自体もとっても魅力的なんだけど、裏手の鬱蒼とした木々とかも、当時あった自然とか生活感が感じられて、すごく良かったなって思う。

eriレコメンドスポット3

表参道ヒルズ(旧同潤会アパート) 
旧同潤会青山アパートの建替事業として2006年に開業した住宅及び商業施設。設計は安藤忠雄氏が担当。

小宮山その表参道・原宿周辺の商店会は今は「原宿表参道欅会(注:表参道を中心に清掃活動やケヤキ保護など地域に根ざした活動を続ける商店街振興組合)」って名前なんだけど、昔は「原宿シャンゼリゼ会」って名前だったんだよ。パリのシャンゼリゼ通りにイメージが近いっていうことで。

eriそうなの? 知らなかった(笑)。でも確かに私も海外の友達が来て、あの辺案内する時はパリでいうシャンゼリゼみたいな所だよって説明してる(笑)。

昔あったようなミーティングスポットみたいな場所が欲しい。(eri)

時代の変化にも伴って、移ろいで行く神宮前エリアの景観や文化的な側面を見てきて、率直にどう感じますか?

小宮山神宮前エリアって遊ぶ場所自体は意外と少ないんですけど、それでも僕らは90年代の後半から2000年代の初めの頃って実は結構遊んでいたんだよね。

eriうん、それから少しずつ友達のお店がオープンした、とか事務所ができた、とかでそうした場所に遊びに行くようになっていくんだよね。

小宮山当時は飲み屋さんとかそういうスポットに行こうっていう感じじゃなくて、今のレセプションパーティの文化ができ始めたくらいだったこともあって、そうした事務所やショップに仲間たちが必然と集まってくる感じだったんだよね。

eri俗に言う渋谷系と言われたカルチャーが生まれてから、その流れで少しずつ裏原カルチャーが根付き始めて行ったくらいだったよね。

小宮山そうだね。今もだけど、当時はブランドのデザイナーとミュージシャン、モデル、スタイリスト、カメラマンとかがみんな仲良かったんだよね。ブランドのオープンや展示会とかカメラマンの個展だったりとか。毎週末なにかしらのイベントが必ずあって、平日でさえも賑わっていたからね。

eri今よりももう少しアットホームな雰囲気があったよね。

小宮山もうちょっと規模の小さいスケール感で、今よりもクローズドでしたね。今はどちらかというとビッグブランドが大きな場所で盛大なパーティを開くって感じだと思うけど、その頃は10人とか20人が集まってひっそりとワイワイやっている感じ。それこそ今日いる「ロータス」とかはそういう時によく使わせてもらってる場所だったよね。

eri事前に連絡を取り合うわけではなかったけど、仕事終わって向かえばそこに誰かしら知り合いがいるみたいな。

小宮山友達の家に遊びに行く延長みたいな感じだったよね。

eriあ、そういえば昔お母さんに聞いたことがあるんだけど、40年くらい前はあの表参道の通りが全部石垣だったって。その名残が今なお残っているのが、あの〈ポールスチュアート(PAUL STUART)〉の石垣なんだって。

小宮山そうらしいね、でも確かに元々は参道だし、そうだったんだろうね。それこそ僕は神宮前に住んでいて、通っていた青南小学校まで道一本も外れることなく表参道が通学路だったんだよね。だから表参道の景観が、一番時代の移ろいを感じるかもしれないな。

eri私は今自分がやっているブランドがキャットストリートにできたから。昔はそんなに遊んでいたエリアではないけど、キャットストリートは気になるかな。

小宮山なるほどね。僕からしたらキャットストリートは公園ってイメージが強かったからな。あの通り全体が遊歩道ってことで。お店なんて一個もなかったし。その前はそもそも川だったからね。渋谷川っていう。裸のおばあちゃんとかいたしね(笑)。それくらいのどかな町だった印象だな。

小宮山でも今の若い子たちにとってはこの辺ってどんな場所なんだろうね。むしろどこに生息しているんだろうっていう。

eriそれは私も思う。でも「TRUNK(HOTEL)(注:「テイクアンド ギヴ・ニーズ」が運営する、ソーシャライジングをテーマにした日本初の複合型ホテル)」とかは盛り上がってるって聞くけどね。

小宮山あーそっか。なんだか気がつくと最近のそういった遊び場も、かつての自分たちの仲間の世代が経営しているところも増えてきて、そこで昔からの仲間達と遊んだり、若い世代の子が遊んでいたり、みたいな面白さもあるんだね。

eriそうだね。私の場合は変わらずファッション系の人が多かったりするから、それこそヒロシ(注:藤原ヒロシ。裏原カルチャーをはじめ、現在のファッションシーンを語る上で欠かすことのできない世界的なクリエイター。現在は自身のブランド〈フラグメント〉をはじめ、その活動は多岐に渡る)とかジュンくん(注:高橋盾。〈アンダーカバー〉デザイナー)とか色んなブランドの店もずっと変わらずいるから安心する。

今後、「GEMS神宮前」を筆頭に、新規参入していくお店に期待することはありますか?

小宮山これは僕自身、渋谷区の観光大使として普段から言っていることでもあるんですが、神宮前のエリアって確実に人が集まる場所じゃないですか? 今日歩いていても平日にも関わらずおかしいくらい人がいるんですよね。だからそうした必然的に人が集まる場所だからこそ、観光に来る人と働いている人と住んでいる人と、それぞれの人達がどうやって一緒に関わっていけるかっていうのがこれからのテーマになっていくと思います。単なる観光名所じゃなく、みんなが楽しめる場所になっていって欲しいですね。

eriみんなが繋がれる場所は欲しいよね。私も最近は昔あったようなミーティングスポットみたいな場所が欲しいって思う時がある。昔でいう「オーバカナル」のような。夜でも気軽にチルできたり、仲間と交流できる場所がね。

小宮山それをこれからeriが作っていったらいいんじゃない?

eriあ、そっか。

小宮山解決しちゃったね(笑)。あるいはそうした役割を今後「GEMS 神宮前」とかに期待していきたいよね。

eriそうだね。これからも盛り上がっていく街になっていけば良いなぁ。楽しみだね。

今回の取材は神宮前を代表するカフェ「ロータス(LOTUS)」にて行われました。

東京のカフェブームの火付け役ともなった、言わずと知れた名店。駒澤大学駅近くの「バワリーキッチン(BOWERY KITCHEN)」をはじめ、数々の人気店を手掛ける空間プロデューサーの山本宇一氏がディレクションを担当したことでも有名。歴史も長く、今回登場してくれた二人にとっても思い入れの深い場所でもある。

LOTUS

住所:東京都渋谷区神宮前4-6-8
電話番号:03-5772-6077
営業時間: 11:00~3:00(日~木)、11:00~4:00(金・土)
定休日:無休
www.heads-west.com/shop/lotus.html

GEMS JINGUMAE & JINGUMAE MAP

本企画に登場している2人のレコメンドスポットや、「GEMS JINGUMAE」から歩いて行ける、ヒップな神宮前スポットを紹介しているガイドマップを「GEMS JINGUMAE」にて配布しています。ぜひ見て、取って、お持ち帰りください。

GEMS神宮前

住所:東京都渋谷区神宮前6-19-17

オープン:4月27日(金)
www.gems-portal.com/gems-jingumae/
※店舗の詳細やプロモーションビデオが閲覧できる特設サイトもオープン中です。

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