ULTRAHEAVY(ウルトラヘビー)
スタイリスト・石川顕(写真右)、デザイナー・神山隆二、アートディレクター・ジェリー鵜飼(写真左)によるユニット。「迷ってるくらいならソファでも机でも持ってくりゃいい!」がキャッチコピー。以下、石川さんによるリリース文。
「流行りのULウルトラライト原理主義への嫌みでもないし、最新アウトドアギアへのカウンターパンチでもないんです。ましてや都会生活のすすめでもない。自分のことは自分で決めたいのです。「シド・ビシャスじゃあるまいし、放っとけバカ!?」という気分でしょうか?味気ないタイベックシートに絵をデザインし,悪戯描きしたものを敷いたり眺めたり。いざという時に備えたり。ただコットンドレスシャツを着て汚れ仕事していたいとか、重いウールコートで暖を取りたいということです。汚れて愛せないというなら気分のいい色に塗ったり、シルクスクリーンで生き返らせることもいいでしょう。いい気持ちなら。それが理由で他のモノすべてを軽量化してもかまわないのですし、逆に最先端というのも台無しにしても問題ありません。ようはそこにいる為のちょうどいいスペックなんです。重い想いという意味です。」(ULTRAHEAVY石川顕)
誰かのためじゃなくて、ぼくがほしいもの。
以前にも神山さんを交えてインタビューを行っていますが、あらためて「ウルトラヘビー」について教えてください。
鵜飼難しいですよね。ぼくらもよくわかってない(笑)。
石川「ウルトラヘビー」は、(ULのカウンターで)重くていいっていう話ではなくて、「自分が心地よいモノを探します」ってだけなんですよ。これが正しいって言い方は一切しない。おれはキャンプで何もしたくないし、鵜飼くんはULの装備で山に登る。おれと鵜飼くんでもやることが違うわけだから、スペックは人それぞれ。でもさ、自分のスペックを無視して鵜飼くんの真似しちゃったりするわけですよ。
鵜飼アウトドアって基本的にコスプレじゃないですか。テンションも上がるし、それはそれで楽しくていいんですけどね。でも、それが正解だと思うのは間違ってるよってことを言いたいんです。
「ウルトラヘビー」は、ULの鵜飼がいて、真逆の石川さん。さらに神山さんと、方向性の異なる3人でユニットを組んでいるのが面白いですよね。
鵜飼自分で言うのも恥ずかしいんですけど、ULをやってるぼくが「ウルトラヘビー」に入ってるのって、すごくいい気がする。ぼくもウルトラライトをやっていくうちにちょっと違うかなって思う部分も出てきたときだったので、顕さんに声かけてもらって感謝してます。
石川グルビの伊藤くんなんかもそうだけど、ULのひとって秤で(ギアの重さを)量るじゃん。あれも遊びだからね。ぼくは弾かないけど、ギターを持ってくケースが欲しいとかね。キャンプに持っていくうちで、一番大事なものはどれか、なんです。サーファーがサーフィンしたい場合は、電車だろうが車だろうが、(サーフボードを)持ってくでしょ。だって、それが主題だから。だから、このバッグにレコード入れて、キャンプ場で音楽を聴くっていうのもアリなわけです。ぼくはやったことありますけどね。その場合、レコードはいっぱい持っていきたいじゃん。だから、このサイズや厚さが必要なわけです。誰かのためじゃなくて、ぼくがほしいものをつくったの。
そもそも、今回のバッグをつくるというお話は、いつ頃から始まったんですか?
石川結構時間かかった。まあ、鵜飼くんの遅延行為という。
鵜飼そうですね。だいぶ待たせて。ま、得意なんですけど(笑)
先にバッグの型があって、「ウルトラヘビー」としてはテキスタイルのデザインだけを担当されらのでしょうか。
石川いや、バッグ自体がオリジナルの型なんだよ。なんでかは忘れちゃったけど、プレスルームで(UNBY代表の)冨士松くんと話したのが最初。そこから「もうちょっと厚い」とか、「キューブ型がいい」とか、いい加減に言ってたらほんとになっちゃった。
それで、“誰かのためじゃなくて、ぼくがほしいもの”なんですね。
石川「すげえ、ほんとにできんの!」って。ちょっと失礼だっていうのもあって、あんまりギアには手を出してないんです。ここはメーカーだから、ほんと頼りになりますよ。
サンプルのバッグは、鵜飼さんが直接イラストを描いた生地を工場に送ってつくられているんですよね。
石川最初、鵜飼くんが「全部、描きましょうか?」って言いだしてさ。ぼくはデザインに対してあれだめ、これだめって言わないんだけど、今回ばかりは土下座ですよ。「鵜飼さん、直接描くのやめて下さい!」って。
鵜飼(生地が)300mとかきたらヤバイですね。でも、このパターンは初めて。
石川そうだね。生地にプリントはよくあるけど、生地に直接描いたモノをプリントは初かな。これ、どこをどう使ってもいいって言ったの。バッグは同じパターンが同じところにくるように揃えないといけないって商品上のルールがあるじゃん。そこもぶっ壊していいかなって。イラストが切れてもいいし。
鵜飼そこが面白いっすよね。バッグごとに柄がみんな違う。細かいことを言うと、ベースは「ウルトラヘビー」のタイベックシートなんですけど、キャンバス地にプリントすると出方が変わるなと思って配列を変えたり、枯れ葉やどんぐりを足したりしてます。ほかにも、古い作品をいっぱい流用したり、なかにはプリンスの偽サインなんかもあります。
石川マジで! 木梨憲武のペレだ。でもさ、タイベックのデータだけでも成り立つのに、そこで終わらせないのが「ウルトラヘビー」だよね。最初にやった「B+U.H ULTRA HEAVY EXHIBITION」もそうだったけど、今回もバッグにイラストを描き込むことでA品をB品に。一手間かけて不味くする(笑)。
どんなイベントになるかは当日のおたのしみ。
このバッグを軸に「UNBY GENERAL GOODS STORE TOKYO」内でポップアップイベントも行うんですよね。
石川今回はポップアップイベント初日に、お店にあるバッグ、お店がセレクトした道具に鵜飼くんと神山くんが落書きして、それを売るっていうレアケース。黒い工具入れに鵜飼くんが白ペンで落書きしたのとか、ぼくは絶対的に欲しいし、それを皆さんにも。という感じです。なので、いつものライブ・シルクスクリーンはやりません。
これまでの「ウルトラヘビー」が行ってきた展示会では持ち込みアリでしたが、「UNBY GENERAL GOODS STORE TOKYO」内にあるモノ限定というのは面白いですね。
石川ぼくが古道具屋とかで買ってきた家具なんかも出しますけどね。ここは道具的なモノが揃ってるでしょ。あれ、みんな好きだよね。あとさ、店頭に並んでるバッグがオリジナルってこともすっごい大事で。ここがつくった(アッソブの)バッグに鵜飼くんと神山くんが描くっていうのが最高なわけです。
そういえば、インタビューが始まる前に「アウトドアグッズにペイントはやりたくない」ともおっしゃっていました。
石川もうね、アウトドアもインテリアもけったくそもないんだよ。分ける意味がわかんない。自分なりのスペックなりスタイルだから。でも今回の打ち合わせとかで話してて、あらためてバッグってインテリアなんだなって思った。椅子の背にぶら下げたら収納にもなるし、道具ごと入れて壁に掛ければそのままキャンプに持って行ける。本棚に本があるとか、食器棚に食器があるとかさ。あれだって、実はインテリアでしょ。って考えた場合に必要な幅や形だから、バッグとしての実用性っていう話ではない。これも遊びなんだよね。
鵜飼家具は、昔からやりたいっていってましたもんね。
石川「ウルトラヘビー ファニチャーサービス」というイベント名も、お店が勝手に付けてくれてたんだけど、いい名前だね。
鵜飼そういえば、東京で3人が揃うのイベントも久しぶりですね。
石川意外と揃わなかったりするからね。あと、3人で勝手にやることが多いんだけど、今回はバッグの発表というちゃんとしたお題目があるのも新しい。「おれたち、レコード出しましたから」みたいな。
石川リリースの記念にインタビューも受けます。イベントでも、なんでもしますって(笑)。
石川そうそう。神山くんにも「スプレー缶だけ持って、気楽に来いよって」って言ってある。あいつ、今回のバッグには何も関わってないんだけどね。こんだけ男っぽいのも久しぶりだし、ぼくらが言ってきたコンセプトが現実化しますよ。これまでに「ウルトラヘビー」の展示会をやった場所のひとやお客さんもハッとするんじゃないかな。「これか!」って。成功するのかドキドキです。失敗した場合は、おれが怒って逃げるっていう台本を書いておこうか。ああ、どうしようって。
鵜飼「顕さん、泣いちゃった」みたいな。それ、面白いですね。
石川鵜飼くんのライブペイント、ほんと楽しみですよ。で、いつだっけ(笑)。