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その道の識者9名が表現する、新しいビッグヤンクのかたち。CASE2_石井 洋(『LEON』編集長代理)

BIG YANK The Third Edition 2nd Collection

その道の識者9名が表現する、新しいビッグヤンクのかたち。CASE2_石井 洋(『LEON』編集長代理)

2016年の春夏よりスタートした〈ビッグヤンク(BIG YANK)〉の『ザ サードエディション』のセカンドコレクションが発表された。これは2011年に実名復刻を果たした〈ビッグヤンク〉が、様々なジャンルのクリエーターたちとコラボレーションしたコレクションで、洋服のデザイナーはもちろんのこと、ミュージシャン、理容師、古着屋オーナーなど、バラエティに富んでいる。前回は5人であったが、今回は9人にスケールアップ。各々が感じる〈ビッグヤンク〉の魅力を引き出したプロダクトは、インラインのワークウエアにはないものばかりだ。その全貌を参加したクリエーターのインタビューを通して解析していこう。

  • Photo_Toyoaki Masuda
  • Text_Shunsuke Hirota
  • Edit_Yosuke Ishii
  • Special Thanks_Bar JILET
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イタリアの艶っぽい伊達男たちを理想の男性像として掲げてスタートし、これまでに数々のトレンドを生み出してきたラグジュアリー実用誌『レオン(LEON)』。アメリカンワークウェアのヘリテイジをルーツに持つ〈ビッグヤンク〉と、イタリアをベースにしたファッションを得意とする『レオン』で編集長代理を務める石井洋氏。異なる出自を備える2者が「喫煙文化」というキーワードをフックに、みごとクロスオーバーを果たした。

いまイタリアのメインストリームはアメリカンミックスになりつつある

—まずは〈ビッグヤンク〉との出会いについてお聞かせください。

石井:もともと僕も学生時代に古着からはじまってモードからクラシコ・イタリアまで、ひと通りのファッションを経験してきたのですが、〈ビッグヤンク〉は古着を着ていた学生の頃に原宿の「サンタモニカ」とかに置いてあったよな、という感じでした。服飾史の文脈のなかで〈ビッグヤンク〉を捉えるようになったのは、編集者になった後からですね。今回のプロジェクトにあたって、色々な年代のタグをみせてもらったりしたときに「あれ?あのとき買ったカバーオールって〈ビッグヤンク〉だったんじゃないか」みたいなことにも気づきましたね。

—イタリアンファッションをベースにした『レオン』の編集者と、アメリカンカジュアルの〈ビッグヤンク〉がコラボレーションしたのは、意外な印象を受けました。

石井:確かに『レオン』の出発点はイタリアなんですが、いまイタリアのファッションもモロにイタリアンという感じではなくなっています。イタリアの柔らかな仕立てのスーツに〈ヴァンズ〉やデニムシャツを合わせたり、Gジャンのうえからサルトリアのチェスターフィールドコートを着てみたり、ホントに様々な要素をミックスしているんです。スコット・シューマンの『サルトリアリスト』によくスナップされていたアレッサンドロ・スカルツィという人がいて、靴は〈ジョンロブ〉しか履かない、オーダーのスーツしか着ないみたいな人だったのに、オヤジになってからどんどんアメリカのミックススタイルにはまっているんです。彼がイタリアで〈ヴァンズ〉を流行らせたりと、いまイタリアンカジュアルのメインストリームはアメリカンミックスになりつつあるんです。

—確かにイタリアのスーチングとアメリカンワークウェアには、どこか共通する男性像のようなものを感じます。

石井:いまの40代、50代ジャストのイタリアの人達は同時代的にアメカジの洗礼を受けていることもあって、彼らがモノを作るようになったりメインストリームに出てくるようになったときに「俺らがカッコいいと思っていたオールスターでスーツを着てもいいじゃん」って意識になってきたんじゃないかな、と。〈ビッグヤンク〉的なアメリカンカジュアルはイタリア人もみんな大好きだし、だからこういうシャツをスタイルのなかに足したりしていくことをみんなカッコいいと思ってますね。

〈ビッグヤンク〉のシガレットポケットを生かしながら、『レオン』が打ち出す喫煙文化を1枚のシャツに盛り込んだ

—今回のサファリジャケットは〈ビッグヤンク〉をイタリア的に解釈するなら、ということでしょうか?

石井:実は今回のアイテムに関してあまりイタリア的に寄せようといったことは考えてないんですよね。今回の企画に参加するデザイナーさん達のラインナップをみたときに、ヴィンテージウェアの世界的な権威の方々もいるし、ファッションデザインのトップクリエイターの方々も参加している。僕を企画に呼んでくれた理由も、ファッションデザイナー目線というより何かひとつストーリーを紡いで欲しいんだろうな、と思ったのが原点ですね。ストーリーを紡ぐときになにがフックにできるだろう、と考えていったときに〈ビッグヤンク〉はシガレットポケットを開発したってこともあるし「レオン」はシガーというカルチャーを広めている自負もあるので、1枚のシャツのなかに紙巻きタバコからシガー、電子タバコまで、喫煙カルチャーを盛り込んだんです。ただ、色々なスタッフと打ち合わせを繰り返していって、結果的にいまのイタリアンファッションのトレンドともリンクするような形になったように思います。

ペン刺しを大きめに採ることで葉巻がスッポリと収まるサイズに。

—〈ビッグヤンク〉ならではのシガレットポケットはもちろん残しつつ、ペンポケットと見せかけたシガーポケットがついていたり、iQOS用のポケットやフリスクを入れられるエチケットポケットがついていたり、遊び心のあるポケット構成になってますね。

石井:別にiQOSを入れなくてもスマフォを入れても良いし、胸裏のエチケットポケットにコンドームを入れたっていい(笑)。一応専用に作っているのですが、使い方はもちろん自由。でも男って「〇〇用」とか「機能」という言葉が好きな生き物じゃないですか?そういう部分も考慮はしました。

〈ビッグヤンク〉を象徴するディテールの1つ、「シガーポケット」。実用を配慮してタバコとライターが仕舞えるサイズに修正。

右フロントの裾に配したポケットはiQOSが収納できる設計に。スマホを入れてもよし。

ページを作っているような感覚。完全に編集者目線のモノ作りですね。

—サファリシャツにしたのも、トレンドを意識したのでしょうか?

石井:来季のトレンドをみるに開放感溢れるリラックスした、サラリとしたスタイルが来るだろうなという実感があって。去年ぐらいから『レオン』もプッシュしているオープンカラーのシャツをやりたかった面はあります。カーキとアイボリーといったサファリシャツ定番のカラーの他に藤色もラインナップしているのは今回の企画全体で、こういう色を使う人がいないだろうという読みです。「喫煙文化をテーマにする」「ジャケット的に着るシャツ」「開放感のあるオープンカラー」等々、色々な要素を同時に実現できるようにラフを書いていった結果、最終的に半袖のサファリシャツになった感じです。その方が『ザ・サードエディション』全体の中でアクセントにもなると思って。どちらかと言うと服を作ってるというよりもページを作ってるような感覚で、完璧に編集者目線のモノ作りですね。

—どういうコーディネイトで身につけるとこのシャツが映えると思いますか。

石井:このシャツは白Tやタンクトップのうえからジャケット的に真ん中ひとつかふたつ掛けで着てもらいたい。エリを立て気味にして、袖をクシャっと2回捲いて、スラックスやドレスシューズと合わせる着方を想定しています。そのためトップボタンの位置をやや高めにしつつ、袖の長さも調整してあります。実はイタリア人って、いままで半袖シャツを着なかったんですよ。あの人たちって夏でもロングスリーブを腕まくりして着るのがカッコいいとされてたんで。いわゆる半袖のシャツを着るようになったのは、この4~5年のアメカジミックスをしだしてからなんです。

特にこだわったという首周り。台襟は少し低めに設定し、第二ボタンを外したときに下襟が綺麗にロールするように設計されている。

袖も気持ち長めに設定されている。テキトーに2、3回クシャッと巻き上げる のが石井流だ。

Tシャツの上からサラッと羽織る、ジャケット代わりのシャツ

BIG YANK × Hiroshi Ishii(LEON) SMOKERS SHIRT ¥22,000+TAX

—夏にジャケット代わりに着ても涼しげなトップアウター、という位置づけですね。

石井:40代以上のオヤジってなかなかTシャツ1枚でいられないんですよ。「乳首立っちゃうのどうするよ、恥ずかしい」みたいなときや「お腹も弛んできてるけど鍛え直せないし」ってときに、Tシャツのうえから1枚サラっと羽織ってもらいたいですね。シャツジャケット的に着るなら、フロントに何もないつるんとしたものよりはこういったポケットがついているようなシャツのほうが着やすい。それに僕らは「モテる」ってことの価値を主張している雑誌なので、どこかツヤっぽさは欲しいなって思って、ズドンとしたボックスシルエットよりもクビレ感があったほうが良いだろうと思って、サイドアジャストも付けていただきました。

—このシャツを着てれば、女性にモテますかね?

石井:シガーになじみのある女性はそんなにいないと思うので、シガーバーに誘う口実にはなるでしょうね(笑)。でもこの服の話はそこそこに。やたらとウンチクを披露する男はモテませんからね。

石井 洋

『レオン(LEON)』編集長代理。フリーランスの編集者として数々のファッション誌で活躍した後に、28歳のときに立ち上がったばかりの『レオン(LEON)』に参画。イタリアのファッションやライフスタイルを中心に取り上げ、”モテるオヤジ”の姿を訴求し、「ちょい不良オヤジ」をはじめとした数々のトレンドを生み出す。現在は編集長代理を務め、多忙な日々を送る。

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