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FEATURE|15th ANNIVERSARY COLLABORATION
ネクサスセブンの15周年。珠玉のコラボアイテムの裏側に迫る、熱きトークセッション。CASE4_copano 86

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NEXUSVII. 15th ANNIVERSARY COLLABORATION

ネクサスセブンの15周年。珠玉のコラボアイテムの裏側に迫る、熱きトークセッション。CASE4_copano 86

2016年でブランド創立15周年を迎えた〈ネクサスセブン〉が、今季様々なアニバーサリーアイテムを作っているのはフイナムでの既報の通り。本企画では、アイテムひとつひとつに関して、〈ネクサスセブン(NEXUSVII.)〉のデザイナー今野智弘氏と、それぞれのクリエイターたちに制作背景を明かしてもらった。今回はこれまでで一番大人っぽいアイテムだろうスーツ。お相手は熟練のパターン職人であり、自身のブランドも持つ〈コパーノ 86(copano 86)〉の安島正二氏。さらに〈ネクサスセブン〉といえばの、ユナイテッドアローズの小木“Poggy”基史氏にもご登場いただいた。

  • Photo_Shinji Serizawa
  • Edit_Ryo Komuta

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ー今野さんと小木さんはいつからのお付き合いなんでしょうか?

今野智弘(以下、今野):知り合ったのは、15年くらい前です。彼がとんちゃん通りにあった「ブルーレーベルストア」で働いていたときですね。古着屋の友人に紹介してもらいました。当時はそこのショップスタッフとしてお店に立っていたんですが、その頃から他のスタッフとは全然雰囲気が違っていて。とにかく目立っていましたね。

ーけっこう古いですね。

小木“Poggy”基史(以下、小木):そうですね。そのあと、僕はプレスになって、その次に「リカー、ウーマン&ティアーズ(Liquor,woman&tears)」をオープンさせたんですが、その間も定期的に会ってました。ただ、仕事上のお付き合いということになると、もう少し後になります。「時しらず」がオープン当初から〈ネクサスセブン〉をやっていたので、「時しらず」が閉店するタイミングで、お取引をさせてもらうようになりました。

ー最近は〈ネクサスセブン〉のルックのモデルとしても出演されていますね。

今野:はい。小木君とは体型が近いというのもあるんですが、作る側である自分では思いつかないような着方もしてくれるので、その感覚も含めてすごく魅かれていたんです。なので、最初は駄目元でモデルとして出てくれませんか?というお願いをしました。本人を目の前にして言うのも恥ずかしいんですけど、バイヤーとしてもディレクターとしても世界中のいろんな服を見て目の肥えている小木くんがうちの服を着てくれて、さらに選んでくれるというのが素直にすごくうれしいんですよね。

ーモデルをやること自体、異例ですよね。

今野:そうですね。ウチは他のセレクトショップさんともお取引があるのでそこは少しだけ考えました。ただ、個人的にはユナイテッドアローズ の小木くんというか、小木くん、一個人としてお願いしている感じなんです。変な話、小木くんがユナイテッドアローズの所属じゃなくても、お願いしていたんじゃないかと思います。

ーサイズ感、体型が似てるというのは言われてみると確かにそうかもしれませんね。

小木:ウエストは僕の方が太いんですけど(笑)、上のサイズはだいたい似ているかもしれません。

ーすごくフィットしていますし、お似合いだと思います。だいたいモデルは何シーズンくらいやっているんですか?

小木:3シーズンです。

今野:本当にありがたいですね。

ーその一方、安島さんと今野さんはどんなご関係なんですか?

今野:元々は、〈スペースバグ〉をやっていた松尾健成くんから紹介していただきました。彼はそれ以前から僕らの周りではいち早くスーツスタイルを展開していて、安島さんにパターンをお願いしていたんです。〈ネクサスセブン〉では当時はスーツ類はやっていなかったので、健成くんには細かいディテールやルール的な部分など本当にいろいろと教わりました。そんな折にパターンの話になって、「すごいパタンナーさんがいるよ。あまりひとに紹介しないんだけど、今野くんならいいよ」と言っていただいて。

ーそれがいつ頃の話ですか?

安島正二(以下、安島):だいたい2年くらい前ですかね。自分でも〈コパーノ 86〉というブランドをやっているんですが、そうしたパターンのお仕事もやっているので。

今野:〈コパーノ 86〉の服はとにかく仕立てがものすごくきれいなんです。着たときにパシッとはまるような独特の感覚がというか、いいパターンでしか生まれない着心地のようなものが、安島さんの商品にはしっかりとあります。一方、小木くんはジャケットを着ながら、さまざまなアレンジ、コーディネイトをできる方なので、自分のなかでその2つの点が繋がったんですよね。そうしてお取り組みを始めさせていただいて、3シーズン目になります。

ー小木さんと安島さんとはそれまでに交流はあったんですか?

小木:安島さんが手がけられている服は、今野くんや健成くんの展示会で見てはいたんですが、実際にお会いするのは今回で2回目ですね。

今野:前に安島さんの展示会に、一緒に行ったんです。

ー小木さんから見て、安島さんの作られる服はどんな印象ですか?

小木:うまく言えないんですが、つくりが絶妙なんですよね。こういう感じって意外とないんです。イタリアもので少し近い服があるんですが。たとえば、イタリア人がデニムをやると、手作業やデザインが妙に多く入りすぎていて、ちょうどいいところで止められる感じってなかなかないんです。そのちょうどよさが安島さんの服にはあるような気がします。

ーなるほど。小木さんは今回のコラボレーションアイテムを見て、着てみてどのような感想をお持ちですか?

小木:日本で数年前に、おもにアメリカのヘリテージの流れがすごく流行ったじゃないですか。そのときにみんなそういうものをやりだしたんですが、それでも50年代までが多いと思うんですよね。それよりも前になってくると、アメリカも元々はイギリスからの移民で成り立っている国なので、イギリスの、しかもテーラーの文化になってくるんですよね。今野くんは50年代以前も相当勉強してると思うんですが、彼の好きなミリタリーって、さかのぼっていくとテーラーの要素が入ってくるんです。ですが、たいていのブランドはそこにぶつかると、いいものを作りたいけど作る術がないということになるんです。具体的にいうと、いいパターンナーに出会えないんですね。そこが今回のスーツは、うまく合わさった感じがすごく伝わってきますね。

今野:今、小木くんが話してくれた通りで、独自の背景があるというのはすごく大きくて、さらに安島さんは職人さんも抱えられているので、安島さんと職人さんとのやりとりだけで製品まで完結できるんです。どうしても間に人が入ることによって、伝言ゲームになっていってしまい、製品に対する想いも薄まっていってしまうので、それを持たれているという事は大きな強みでもあります。あと安島さんご自身が洋服を作られているというのも大きいと思います。

ー細かいところにまで気が行き届く、ということなんでしょうか。

今野:そうですね。あとは何よりも圧倒的にクオリティが高いですね。職人さんと長年しっかりとリレーションを築かれているので、変なものがあがってこないんですよね。これ、言い方が合っているかわからないんですが。

安島:ふふふ。

今野:安心感が全然違うんです。上がってきたサンプルのダンボールをあけて、吊るすまでの変なドキドキ感がないんですよね。

安島:僕も長年、技術者兼ものづくりをしていますが、やっぱり失敗はあります。でも、そうやって認めてくれるのは嬉しいですね。

ー安島さんから見て、今野さんのものづくりの姿勢はどのように写りますか?

安島:僕よりもものすごく若いんですけど、生地とか軍ものについてものすごく勉強されていますよね。単純にすごいなと思います。今野さんと会って打ち合わせをしていると、逆に僕も教わりたいなと思うことがたくさんあります。そういう姿勢を見ると、僕も作ってあげたいなって思うんですよ。

ーすみません、なんだかみんなで褒めあうみたいな感じになってしまって。

一同:(笑)

安島:いや、本当にでも今野さんの知識はすごいですよ。わー、僕でも負けちゃうって。でも、技術は僕の方がすごいよって(笑)。

今野:(笑)。パターンって職人技なんですよね。細かさというか、ミリ単位で着心地が変わってくるので、安島さんは流石でそこの仕上げ方、詰め方が本当に素晴らしいと思います。

ーテーラードに興味が出てきたのはいつ頃からなんですか?

今野:〈スペースバグ〉でスーツを展開するようになってからですね。それまでは冠婚葬祭のときでないと、スーツを着ることもなかったので。冠婚葬祭用のものと、あともう1着しか持ってませんでした。もう1着の方はダブルでストライプが入ってて、ちょっと今はお見せできないようなものですね(笑)。

ーなるほど(笑)。

今野:ピークドのダブルのスーツってかっこいいんですけどね。

安島:うん、かっこいいですよね。

今野:その頃は個人的にはあまりスーツに袖を通す機会がないなか、健成くんが普段着としてスーツを着ていたんです。

ーどんな風に着ていたんですか?

今野:ボロボロのデニムパンツを履いて、上だけビシッとキメていたりとか。タイドアップしてないんですけど、オックスフォードのシャツにジャケットを合わせたりと、とにかくお洒落でしたね。最初は、健成くんの作るものをオーダーして、着て、それで満足していました。ただ、年々自分でもラペル付きのジャケットを着る機会が増えてきて、自分で作ることにも興味が湧いてきたんです。ちょうどそのとき小木くんもジャケットを取り入れた色々な着こなしをしていたんです。今日のスタイルもまさにそうですが、ジャケットを着崩しながら上手にスタイルに取り入れている二人を見て、それまでは全体的にカチッとしないといけないのかなという概念も崩していってくれました。

ー最近の小木さんは、スーツ、ジャケットとどんな形で向き合っていますか?

小木:変わらずジャケットはよく着ています。ただ、正統派ではなく、こうして崩して着ることが多いんですが。ヒゲにハットにジャケットというイメージがあるらしく、よくそう言っていただけるんですけど、それをベースに今の時代のものを取り入れている感じですね。

今野:小木くんはスタイルもやっぱり彼の好きな『ヒップホップ』なんですよね。それも昔から。「ブルーレーベル」のときからヒップホップを感じさせるスタイリングでしたね。

ーというと?

今野:ヒップホップって、もちろんルーツはありながらも突然生まれたジャンルじゃないですか。70年代にはなくて、80年代頃に突如現れて、それまでの名曲のソースを使って、新しい別の一曲を完成させるっていう。小木君のスタイルでいうと、テーラードのジャケットがサンプリングソースのような感じに思えるんです。その元ネタがありながら、中のインナーのアレンジを小木くんがやっているような。僕自身は勝手にそういう風に捉えています。彼の手掛けた「リカー、ウーマン&ティアーズ」も、まさにそういうお店でしたね。スーツがあって〈ニューエラ(New Era)〉があってという。当時、他のセレクトショップでは思いもつかないようなスタイルを具現化したようなお店でしたよね。でも、その前から小木くんはずっとそういうイメージでした。

ーなるほど。

今野:ジャケットを着だしたのも、小木くんと健成くんはとにかく早かったです。見ていて単純にかっこよかったし、羨ましかったんですよね。すでにこういう着こなしを取り入れている二人に追いつきたいなと思う中で、ジャケットに興味が出てきて、安島さんと出会えて、素晴らしい職人さんとも繋がれて、タイミングとしても色々なことが一つになったなというのが、わりと最近のことなんです。

安島:さっきの話にあったように、健成くんの紹介で僕は今野くんと出会うことになったんですが、やっぱりどこかで気が合わないとできないですよね。僕は45年くらいこの仕事をやっているんですが、とにかくいいものを作ろうと思える相手とは一緒にやりたくなるんです。今野さんが思い描くものに少しでも近づけられるようにと、毎回臨んでいます。

次のページでは、今回作ったスーツについて。
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