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FEATURE|ニコラス・ウィンディング・レフン監督インタビュー。 映画『ネオン・デーモン』で描く、美しき悪夢。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督インタビュー。 映画『ネオン・デーモン』で描く、美しき悪夢。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督インタビュー。 映画『ネオン・デーモン』で描く、美しき悪夢。

カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『ドライヴ』で一躍名を馳せ、その後も『オンリー・ゴッド』など、常に賛否両論渦巻く作品を生み出してきたニコラス・ウィンディング・レフン。1月13日(金)に公開される『ネオン・デーモン』では、主役となるモデル役にエル・ファニングを起用し、ファッション業界における光と闇を描く。監督の強力な美意識で彩られた画は、元・レッチリのクリフ・マルティネスの生み出した音楽と組み合わさり、物語を誰もが予想しないエンディングへと導く。考えるよりも感じるにふさわしいこの映画について、あえて監督自身にその真意を語ってもらった。

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STORY
誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた16歳のジェシー(エル・ファニング)は、トップモデルになる夢を叶えるために、田舎町からロスへとやって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心をとらえるジェシーに、激しい嫉妬を抱くライバルたち。ジェシーに仕事を奪われた彼女たちは、常軌を逸した復讐を仕掛け始める。だが、ジェシーの中に眠る壮大な野心もまた、永遠の美のためなら悪魔に魂も売り渡すファッション業界の邪悪な力に染まっていく。そして今、光と闇を得たジェシーが、ファッション業界のさらなる闇へと踏み込んでいく。

そして、男はいなくなる。

ー配役についてですが、主役のエル・ファニングは最初は無垢な少女を演じつつも、どんどん自分自身の美に目覚めて彼女の悪魔性が出てくるという難しい役でした。同時に、物語に説得力を持たせるためには、ビジュアル面でも実際に美しい人を選ぶ必要がありますよね。今回は彼女のどういうところに惹かれて起用したんですか?

ニコラス・ウィンディング・レフン(以下、レフン):いなかったんですよね、彼女しか。もちろんオーディションで他にもたくさんのひとに会ったんですが、この役に必要なものを全部満たしているひとは彼女だけでした。極論すれば、彼女が生まれてきてくれて、本当にラッキーだったと思っています。でなければ、この映画はなかったかもしれません。

ーキアヌ・リーブス演じる、女性を脅かすモーテルのオーナー役や、美を司る絶対的な権力者として登場するフォトグラファー役など、女性をコントロールしているかのように見える役割に、男性俳優を配されたっていうのは意図的だったんでしょうか?

レフン:わざと役割を男性にあてたのは、女性のキャラクターたちと並列して見せた方が面白いんじゃないかと思ったのがひとつ。もうひとつは、冒頭ではありきたりに「登場する女性たちは、男性たちによってコントロールされてるんだね」と思わせておいて実は違っていて、男性は機能を果たすとどんどん物語から消えて、女性による、女性についての美を扱った映画にしたかったからなんです。いわば、いい意味で観客を裏切るということですね。

—キアヌ・リーブスはどうでしたか。

レフン:キアヌは最高でしたよ、ユニークだし、言い表せないほどすばらしいひとだからね。

美しさを語ることの居心地の悪さ。

ーエンディングについては、ネタバレになってしまうので言えませんが、とても驚きました。今回はモデル業界を題材に美に対するあこがれや恐れについて、皮肉を込めて描いていらっしゃるのかなと思いました。今回の映画は監督の女性観が表れたものなのでしょうか?

レフン:僕は登場人物たちに何か特定の女性観を反映させているつもりは一切なくて、女性に限らず人間の狂気を誇張した作品かなと。とにかく、美というものは一筋縄ではいかない、非常に複雑なものだと捉えています。

ー確かに、美にまつわる恐怖、あこがれなどいろいろな面が描かれていました。

レフン:美というものについて話すことは、実はすごく人を居心地悪くしたりしますよね。表面上だけで言っていることと、実際はこうだろうっていう部分、いわば虚実が両方ともあるから。それをあえてファンタジーの、空想の世界に置くことによって、美とはこういうものだと決めつけずに、批判するわけでもなく、風刺するわけでもなく描いているんです。美というものの力を縦横無尽に表現するような映画にしたほうが面白いと思ったわけです。

ー作品では、美が唯一の絶対価値という世界観だと感じたんですが、監督ご自身は、美とは真実だけど残酷なものだとお考えですか?

レフン:冷酷な真実という言葉は、当てはまらないと思います。ぼくにとって美というものは、誘惑的なものでもあり、嫌悪感を感じさせるものでもあり、セクシーで魅力的でもあり、浅はかなものでもある。絶対的な答えはないと思うんです。それほどに美っていうものは個人的なもので、主観的なものだと思います。だから語り合ったとしてもそれぞれの思いや考え方があって、どうしても意見が一致しないということが起きる。唯一一致してるのは、それぞれの主観によって誰が美しいかが決まるという考え方なんじゃないでしょうか。

ー確かに、誰々が美しいといえば、そんなに美しくないよという反対の声も出てきますね。

レフン:美とは主観でしかないにも関わらず、美しいものを見るのはみんな好きですよね。誰でも美を見るのは好きだし、虚栄心もあるし、これまでに美しさというものについて考えたことも絶対にあるはずです。特に現代ではSNSを通して見ることによって、その人を裁くという時代になってきています。だからこそこの映画は、より一層強いインパクトがあると思うんです。

美にまつわるいろんなことを、一般的にはあまりそういうことは口に出して言っちゃいけないよねってことがあるじゃないですか。例えば「醜い」とか「美しくない」とか。一方で「内なる美しさが大切なんだ」と表面的には言われますし。みんな美を議論することを避けがちですけど、ぼくはそうしたくなかったんです。とはいえ何かを批判する事もしてない。むしろ美のメカニズムというものに踏み込んでいきたいと思って作ったのが、この作品です。

音楽というもうひとりの主役。

—監督の映画は、音楽も非常に魅力的ですが、音楽と映像の関係性はどのようにお考えですか?

レフン:一番感情に直結しているのが音楽だと思います。手法としては、見てる映像のエッセンスをそのまま強めるような音使いには興味ないんです。むしろ映像とは逆をいくような音楽をわざと当てることにより、何か喚起されるものが生まれたりしますね。普段から音楽を聴くクチなので、撮影現場でもかけますよ。

—監督は、普段はどんな音楽を聴くんですか?

レフン:けっこう雑食です。監督のほかに、レコード会社のキュレーターとして映画のサントラ盤を復刻してレコードでリリースしたりしています。日本にきたときも、日本語は読めないのでジャケ買いしますね。

いわゆるポップスも好きだけど、曖昧なほうがより面白かったりするから、あまりメジャーじゃないほうがいいかな。音楽は、色々なかたちでボクに作用するんです。ぼくは何にでもインスピレーションを感じられる体質で、一言でこうですと言えるわけじゃないんだけど、今回の『ネオン・デーモン』に関しても一番重要だったのは音楽で、物語のオペラ的な性格を音楽がしっかりと表現することが重要だったんです。

—となると、誰が音楽を手がけるのかも重要ですね。

レフン:(今作品を担当した元レッチリの)クリフ・マルティネスとは『ドライヴ』、『オンリー・ゴッド』に続いて3回目のコラボレーションなので、僕らの関係も新しいレベルになったと思ってます。これだけ音楽がすべてを支配する映画は2人にとって初めてだったし、ある種作品のキャラクターとして機能しなければいけない。

—監督はこれまでの作品を見ても、ロサンゼルスで撮られることが多いようですが、この場所で撮影するメリットは何ですか?

レフン:単純にロサンゼルスがロケーションとしてすごく好きなんです。足を踏み入れるのにマジカルな場所だし、ボクにとっては異国の地なんですよね。東京はロンドンと似てる、ロンドンはパリと似てる、パリはニューヨークを思い出させる。つまりはアイデンティティが似通ったところが世界中の都市にはあると思うんだけど、唯一無二なのがロスで、不思議なことにエンターテイメント業界の中心地とされながらも、あまりロスを舞台にした映画は作られていない。さらに物理的に役者もスタッフもみんなロサンゼルス周辺に集まっているから、製作費が抑えられて撮影がやりやすいっていうのはメリットですね(笑)。

—監督はアレハンドロ・ホドロフスキーがお好きだと公言されています。ホドロフスキー作品に関わらず、今回の映画を撮るにあたって参考にされたものはありますか?

レフン:カーティス・ハリントン監督の『ナイト・タイド』という映画があるんですけど、時々その作品については考えていたんです。強いていうならそんなところかもしれませんね。

『ネオン・デーモン』
2017年1月13日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか 全国順次ロードショー
配給:ギャガ
© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
gaga.ne.jp/neondemon
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