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The xxが辿り着いた、理想のサウンドスケープ。

Interview with The xx

The xxが辿り着いた、理想のサウンドスケープ。

デビュー・アルバム『エックス・エックス』で、いきなりイギリスで最高の音楽賞マーキュリー・プライズを受賞して話題を呼んだロンドンの3人組、エックス・エックス。ダークなエレクトロニック・サウンドとメランコリックなメロディーはファッション・シーンでも注目を集めて、メンバーのオリヴァー・シムは〈ディオール オム〉のキャンペーンモデルに抜擢されたりもした。12年に発表したセカンド『コエグジスト』以降、ジェイミー・スミスがソロ・ユニット、ジェイミーXXを始動させるなど新たな動きあるなか、4年ぶりの新作『アイ・シー・ユー』が完成。「初めて自分たちが聴きたいと思うサウンドを素直に作れた」という本作について、来日中のオリヴァーに話を訊いた。

  • Photo_Satomi Yamauchi
  • Text_Yasuo Murao
  • Edit_Kenichiro Tatewaki
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ー新作はバンドにとって新境地ともいえるサウンドでしたね。

オリヴァー:ありがとう。今回は同様の指摘をされることが多くて、すごく嬉しいんだ。でも、そういうアルバムにしようと意識していたわけじゃない。新しい影響や要素をすべて受け入れる姿勢だったこと。そして、地元のロンドンから出て他の土地で制作したことが、アルバムに開放感をもたらしたんじゃないかな。

ーNYやLA、テキサス、アイスランドなど、いろんな場所でレコーディングしたそうですが、なぜ今回は海外でレコーディングしようと思ったのですか?

オリヴァー:成長するためには、自分達が心地良いと思う場所からで出ることが必要だと思ったんだ。ロンドンはホームだから居心地は良いけど、今までと同じところでレコーディングしても進歩がないからね。だから、自分達が興味を持っているところでレコーディングしようと思った。

ー特に印象に残っている場所はありますか?

オリヴァー:それぞれに印象的だったけど、ひとつ挙げるとしたらテキサスのマーファかな。今回、僕らが一番最初にレコーディングした場所なんだけど、すごく人里離れた土地でね。そこにいる人は、半分がカウボーイで半分がアーティストなんだ。すごく気に入ったよ。だから 『オン・ホールド』という楽曲のミュージック・ビデオは、アラスデア・マクラレンと一緒にマーファに戻って撮影したんだ。




ーアメリカは車で移動したそうですね。

オリヴァー:常に5人で旅行したんだ。メンバー3人とマネージャー、そして、ジェイミーの友達のスティーヴィーってやつとね。ジェイミーとスティーヴィーが交替で車を運転した。ゴキブリがうろうろしているような安いモーテルに泊まったりして、リアルなアメリカに触れることができたよ(笑)。

ー旅の体験や想い出がアルバムに反映されていたりします?

オリヴァー:もちろん。今回のアルバムを聴いていると旅のことをいろいろ思い出すよ。例えばフリートウッド・マックとかビーチ・ボーイズをLAで聴いていたり、アイスランドではラジオで流れるようなポップ・ソングを聴いてたり、テキサスではソフト・ロックやカントリーを聴いていたりしたから、今回のアルバムは僕らの作品のなかで一番ポップ色の強いものに仕上がったんだと思う。

ー最初からポップなアルバムにしようと思っていたわけではなく、旅の体験がポップな作品へと導いたと?

オリヴァー:そういうところはあるね。あと、以前より自分達に自信がついたことも大きいな。自信がついたことによって、ポップな表現をすることに恥ずかしさを感じなくなった。ポップなものに対する愛情をストレートに表現できるようになったんだ。このアルバムには自分たちの経験や自信が詰まっているんだ。

ーこれまでは「ポップな曲より尖った曲を作らないと」っていうプレッシャーがあったのでしょうか。

オリヴァー:1stアルバムはミステイクによってできたアルバムだと思う。何も知らない分制限があって、そのなかでできたアルバムなんだ。2ndアルバムは人が僕らに何を求めているかを知ったので、それを意識して作ったサウンドだった。今回はそういうのを全部とり払って、自分たちが聴きたいと思うサウンドを素直に作れたんだ。だから、作っていていちばん楽しいアルバムだったよ。

ー前作との間にジェイミーがソロ・アルバムを出したことの影響はありますか?

オリヴァー:ジェイミーのプロジェクトをオーディエンスとして観に行くことでインスピレーションを受けたけど、何より「自分達もまたステージに立ちたい!」と思ったんだ。ステージが恋しくなったというか、音楽制作の意欲に火をつけられたというか。そして、彼のレコードに参加したことによって、これまでのエックス・エックスにこだわらないサウンドを作りたくなったし、それ以上に音楽を作ることをこれまで以上に楽しむことができるようになった。ジェイミーがあのプロジェクトを通じて、より才能が磨かれ、経験を積んでエックス・エックスに帰って来たこともアルバムに好影響を与えていると思う。

ーあなた自身は、新作の制作にあたって何か変化がありました?

オリヴァー:ソングライティングの方法がちょっと変わった。以前は、人として経験をまだそんなに積んでなかったから、歌詞の内容も「こうだったらいいな」っていう期待だったり、僕らの経験じゃなく、他人から聞いた体験も含まれてた。でも、今は僕らも成長したから、自分たちの経験に基づいたソングライティングをするようになってきた。だから最近では、僕らにとって曲作りはセラピーみたいなものなんだ。曲を書くことで自分達が何を思っているのかを見直すことができる。

ーエックス・エックスの曲は歌詞が先にできることが多いと聞いたのですが、歌詞は重要ですか?

オリヴァー:前はそうだったけど、今はいろんなやり方でできるようになったよ。メロディーを先に思いついたり、ジェイミーがサンプリングを持って来て、そこから始まったりね。

ー例えばファースト・シングル『オン・ホールド』はどんな風にして作られたのでしょう。

オリヴァー:最初はエレクトロニックな音が一切なくて、ベースとギターだけ。シンガーソングライター・スタイルで作っていたんだ。それがエレクトロになったり、バンドっぽくなったり、いろんなヴァージョンで作ってみて、最後にジェイミーが持って来たサンプルが加わったことで、やっと自分たちがしっくりくるものができた。サンプルが曲を固めてくれたんだ。ほかの曲もいろんなヴァージョンで作ってみて、そこから磨きをかけていったよ。

ー曲が完成するまでに、メンバー間で時間をかけて話し合うんですね。

オリヴァー:たっぷりとね。3人それぞれ違うものが好きだし、意見もバラバラだからまとめるのは難しい。例えばジェイミーだったらメロディーとか曲の展開なんかを気にするし、僕とロミー(・マドリー・クロフト)だったら歌詞が気になったりして注目する部分が違う。みんなの意見が一致してようやく「完成!」っていうことになるんだ。いちばんフラストレーションがたまるのが、オリジナルのアイデアからどんどん発展していって、最終的に最初のアイデアに戻るパターンかな(笑)。

ー3人とも結構、頑固なんですか?

オリヴァー:ちゃんと主張するけど妥協もする。3人の妥協で成り立ってるのがエックス・エックスだと思うね。ラッキーなことに僕らは全員あまりエゴが強くないので、それでうまく行ってるんだ。特にジェイミーはプロデュースもするから、わがままになれる立場にいると思うんだよね。でも、彼はそういう部分が一切なくて、僕らのアイデアを聞いてくれたり、「変えてほしい」と言えば変えてくれたり。ほんとに優しいというか、エゴがないプロデューサーだと思う。

ーちなみに、煮詰まってしまった場合はどんな風に解決していますか?

オリヴァー:1週間ぐらい、その曲から完全に離れてみるんだ。「いい音楽なのかな? そうじゃないのかな?」なんて考えずにね。あと、自分たちがリスペクトしているミュージシャンに聴かせるとか。

ー例えばどんなミュージシャンに?

オリヴァー:LAにいた時は、サヴェージズのジェニーとかウォー・ペイントのステラとか。みんな友達なんだ。

ーみんなフランクに感想を言ってくれます?

オリヴァー:ああ。僕らの気持ちを考え過ぎてしまう人、例えば母親なんかに聞かせたら、絶対「良いんじゃないの」って言うだろうからね(笑)。誰に感想を訊くかは、ちゃんと選んでるよ。

ー今回特に手こずった曲を挙げるとしたら?

オリヴァー:『パフォーマンス』だね。2013年に書き始めた曲で、一度レコーディングもしているんだけど納得できなくてね。何回も何回もレコーディングし直して諦めかけていたんだけど、諦めなくて良かったと思うよ。実は今でも「ほんとに完成したのかな」って思ったりもしてるんだけどね(笑)。「曲が完成した」と思って、マネージャーや信頼できる人達に聞かせた時に、「なるほど。で、これをどんなふうに変えるの?」って訊かれた時がいちばん嫌なんだ。僕は「すごく良い曲だからリリースしよう!」っていう言葉を待ってるんだけど、その言葉が聞けない時は、曲を良くするには何をしたらいいのか、わからなくなってしまう。だから「自分たちにできるのはこれだ」っていうことを自覚することが大事だと思う。

ーなるほど。自分達ができることを自覚することが自信に繋がるのかもしれないですね。そういえば、あなたは〈ディオール オム〉のキャンペーンモデルをしていましたが、音楽以外の活動をしてみてどうでした?

オリヴァー:音楽に直接は影響はないけど、〈ディオール オム〉のショーではラフ・シモンズとかたくさんの有名人に会うことができた。その経験はとても刺激的だったし、自分にとってもプラスになったよ。

ーじゃあ、モデルの仕事や役者のオファーがあったらまたやってみたい?

オリヴァー:(激しく頭を振って)いやいや、もういいよ(笑)。今の僕には、ミュージシャンという自分にとってベストな仕事があるからね。

The xx 『I See You』

発売日:2017年1月13日
価格:¥2,590+TAX
thexx.info/
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