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ラフ・シモンズが語る2017年春夏コレクションとフィレンツェへの想い。

ラフ・シモンズが語る2017年春夏コレクションとフィレンツェへの想い。

イタリア・フィレンツェで毎年1月と6月に行われている「ピッティ・イマージネ・ウオモ」。近年は1200ものブランドが出展し、国内外から2万人以上のバイヤーが訪れるメンズのプレタポルテの見本市だ。スタートから90回目となる今回、フイナムは取材を行う機会に恵まれた。後日改めて、この模様をレポートするが、本特集ではメインイベントとして注目を集めた「FLORENCE CALLING : RAF SIMONS」を先行して紹介する。

  • Photo_HOUYHNHNM
  • Edit_Ryo Muramatsu
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メイプルソープを理解してもらえるようなコレクションにしたかった。

ー   

シモンズ


「FLORENCE CALLING : RAF SIMONS」は、6月16日の20時半から行われた。会場は、1848年に開業したレオポルダ駅舎。いまは使われてない、この巨大な倉庫のようなスペースは、〈ラフ シモンズ〉が2003年に初めて「ピッティ・イマージネ・ウオモ」で発表した場所でもある。会場は暗く、スポットライトが不規則に置かれたラフのアーカイブ作品をまとう無数のマネキンを照らし出し、これから始まるランウェーショーへの期待を高めた。発表されたのは2017年春夏コレクション。その中心はアメリカ人写真家のロバート・メイプルソープの作品をあしらった服だった。以下のインタビューは、ランウェーショーが終わった後、バックステージを訪れるたくさんの友人たちへの挨拶を済ませ、舞台の入口に突然現れたラフ・シモンズが会場に残り続けたメディアに語ったものだ。

ーロバート・メイプルソープの作品とコラボレートすることを決めたのは誰ですか。

シモンズ:ロバート・メイプルソープ財団が私にアプローチしてきたのです。最初に連絡を受けたとき、私はまったく違う世界にいるし、声をかけてくれたことに興味を持ちました。財団は、メイプルソープの作品をレトロスペクティブな方法で発表したいのかなと思ったのです。もちろん、長年、彼をアーティストとして尊敬してきたので、とても光栄なことでした。そこから財団と連絡を取り合うようになり、私はいくつかの都市を訪れ、彼の作品をすべて見ることになったのです。

ー作品を見るのにどのくらい時間かけたのですか。

シモンズ:時間はかからなかったです。オリジナルの作品は膨大にあるのですが、多くの作品はコンタクトシートや紙焼きとして、しっかり整理された状態で保存されていました。アーカイブを見るのは面白く、見たことない写真もたくさんありましたよ。ものすごくエモーショナルな衝撃を受けたし、私が尊敬しているアーティストも多く撮影されていたのです。例えば、画家のアリス・ニールやウィリアム・デ・クーニングなどのポートレートは、私が大好きな作品のひとつです。

ーキャットウォークを歩く少年たちは尖った雰囲気が出ていて、1970年代のクラブで遊んでいるような感じを受けますね。

シモンズ:そういう要素が滲み出ていることは避けられませんね。メイプルソープの作品を見ると、彼そのものを表すような写真がたくさんあります。アーティストのなかには、人格が作品に繋がってないことも多いのですが、彼の場合、本人の個性がよく出ています。例えば、花を撮影した写真からセクシーさを感じることもあります。こういったことを真面目にとらえるべきだと思うし、私はそういう作品を美しいと思うのです。

彼の作品を純粋に表現するためには、キャンバスの使いかた、無地のキャンバスの上とか、何もない壁を背景に、体との距離感を計算し、整然と作品を並べて表現することが大切だと思います。ギャラリーや美術館で見せるより、私にとっては現実的な方法だったのです。

彼の作品をギャラリーや美術館、または、写真集などで見る一般の人にとっても、その他のオーディエンスにとっても、今回のコレクションを自然な鑑賞としてとらえてもらえるよう、体の上に配置された作品からエモーショナルな感情が湧き出るように服を表現することも、私にとって大きな挑戦でした。そして、彼の作品を愛する人たちだけでなく、その他の人たちにも理解してもらえるような、感動してもらえるようなコレクションにしたかったのです。

ー   

シモンズ:この大きな挑戦は数ヶ月に及び、多くの人への説明が必要になりました。メイプルソープの作品を使えるようにしてくれた財団には本当に感謝していて、アリス・ニールの家族にも会うことができました。このようなコラボレーションをするとき、まず連絡をしなければいけない人たちへの説明、そこから始めたのですが、一筋縄ではいかないときもありました。

すでに撮影から数十年が経過しているため、肖像権を確認するための連絡先が見つからないケースもあり、自力でリサーチしなければなりませんでした。その大変さは複雑で困難で、コレクションを作る、説明をする、承認を得る……など、3つのアクションをこなす必要があったのです。その結果、すべての人から承認を得ることができました。

ー今回、発表の場に「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を選んだ理由を教えてください。アーティスティックでクリエーティブなあなたの世界観をパリではなく、このようなコマーシャルな場所でプレゼンすることは矛盾のようにも思えるが、その点についてどう思いますか。

シモンズ:そんな風に思ったことは一度もないし、ピッティでは良い思い出しかありません。まさにここレオポルダ駅です。ブランドを立ち上げて間もないころ、ショーをやってみないかと提案を受けて、過去の資料を見せてもらったときに、何をしたら良いのかまったく分からなくなって、漠然と服をモデルに着せて、ただ歩かせるのはやめようと思いました。

結果、外壁のないアパートメントを作り、少年2人が生活を共にしてパーティを行うなど、ドキュメンタリーのようなコレクションを発表しました。それから11年前にはランウェーショーも。コレクションと写真集、映画の発表を行ったので、今回そのような発表はやりたくないと思いました。

でも、私はフィレンツェに帰ってきたかったのです。なぜなら、人々は素晴らしいし、ラポ・チャンキ氏(ピッティ・イマージネ・ウオモのコミュニケーション&プロジェクトディレクター)も素晴らしい人柄の持ち主であり、素晴らしい感覚を持っているからです。

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シモンズ

ラフ・シモンズ
1968年ベルギー・ニールペルト生まれ。ゲンクのデザイン学校で工業デザインを学びながら、デザイナーのウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのもとでインターンを経験。'91年に卒業後、家具デザイナーの道を歩むが、ファッションへの興味が強く、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学科ディレクターのリンダ・ロッパのすすめで、'95年に自身のブランドを設立。'97年、初めてパリ・メンズコレクションで発表。自身のブランドを続ける一方、〈ジル・サンダー〉のクリエーティブディレクターを2005年から約6年半にわたって務める。その後、’12年から’15年まで〈クリスチャン ディオール〉のアーティスティックディレクターに就任。

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