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デザイナー、エミールが語る理想のモノ作り。

Philosophy of the Hill-Side

デザイナー、エミールが語る理想のモノ作り。

2009年にニューヨークのブルックリンでスタートした〈ザ ヒルサイド(the Hill-Side)〉。アメリカのトラッドをベースにしたこのブランドのアイテムは、太平洋を隔てて繋がる2つの国の感性がリンクしてつくられている。日本とアメリカの文化がどのようにブレンドされ、デザインが行なわれているのか? デザイナーのエミール氏の想いに加え、主要取り扱いショップ「ジャーナルスタンダード トライセクト」バイヤーの中本幸平氏の視点も交えて、ブランドの魅力に迫る。

  • Photo_Kazuhiko Tawara
  • Edit_Yuichiro Tsuji
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エミール・コーシロ

(右)エミール・コーシロ
ペンシルバニア大学にて美術を専攻。卒業後は大学院へ進み、ボストン大学にて美術の博士号(MFA)を取得。その後、プーマやトレトンといったメーカーでグラフィックデザイナー、アートディレクターとして活躍。2009年、弟のサンディーと大学時代の友人であった小口尚思氏を加えたメンバーで〈ザ ヒルサイド(the Hill-Side)〉をスタートさせる。

(左)中本幸平
人気セレクトショップ「JOURNAL STANDARD」のバイヤーを担当。洋服に関する知識が豊富で、世界中を飛び回りながら、感度の高いアイテムの買い付けを行なっている。またお店ではMDも兼任。バイヤー業務で培われた鋭い観察力に加えて的確な判断力も持ち合わせたショップの重要人物。

日本とアメリカの文化が交わった、ハイブリッドなブランド。

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エミール

アメリカのトラディショナルなアイテムを、現代のムードに合わせてデザインする。そういったクリエーションを行なうブランドは星の数ほど存在するが、〈ザ ヒルサイド(the Hill-Side)〉の場合はちょっと違う。エミール・コーシロとサンディ・コーシロ、そして日本人クリエイターの小口尚思の3名がつくるアイテムは、単なる過去の焼き増しではなくて、クラシックなアイテムに新しい価値を与えているからだ。

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エミール:「ぼくたちは日本とアメリカの歴史や文化を融合させたモノづくりを行なっています。例えば日本の上質な生地を輸入して、それをアメリカの工場で裁断・縫製し、洋服としての命を吹き込む。とてもシンプルなことですが、ぼくたちはこのハイブリッドなクリエーションにこだわりを持っています」

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エミール

そう語るのは、デザイナーのエミール。淡々とした口調でありながらも、言葉のなかに強いエネルギーが込められているのを感じる。

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エミール:「この発想が生まれたのは20年ほど前。大学に入学したぼくは、いまのパートナーである尚思に出会って度肝を抜かれました。彼は単に洋服を着ているだけではなく、そのブランドの背景にまでこだわってコーディネートを行なっていた。洋服の歴史や文化を重んじることなんて頭の片隅にもなかったぼくは、そのときにファッションの新しい魅力を知りました」

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エミール

彼の語る小口尚思氏は、アートに関して鋭い感性を持った人物。その感性を現在はファッションに捧げ、〈ザ ヒルサイド〉ではブランドの経営や企画、生産管理などを担当している。大学で出会い、すぐに意気投合したふたりは、彼らの背景である日本とアメリカを繋いだモノづくりをしたいと思い描くようになり、その想いが2009年に〈ザ ヒルサイド〉というカタチを取って結実する。

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エミール:「もしかしたらぼくたちと同じようなことを行なっているブランドは他にもあるかもしれない。けれど、ぼくたちは工場と密にコミュニケーションをとっています。デザイナーはあくまで設計者であって、洋服の本来のつくり手は工場で働く職人たちです。彼らの技術を実際に目の当たりにしながら、あれこれとコミュニケーションを取ってよりよいモノづくりを行なう。このコミュニケーションがぼくたちの最大の武器でもあります。こういう単純な作業が、アイテムのクオリティーに大きな影響を及ぼすのに対して、他のデザイナーは良質なデザインばかりに気を取られがちです。技術があってこそ、はじめてデザインが活きるのに」

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エミール

このブランドのアイテムを多数取り扱う「ジャーナルスタンダード トライセクト」のバイヤー、中本幸平氏は、〈ザ ヒルサイド〉というブランドに対してどのような感想を抱いているのだろうか?

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エミール:「2009年にスタートしたときはネクタイや小物だけを展開するブランドでしたが、シャンブレーのタイの裏側に耳がついていたりと、細かなこだわりが見えたんです。些細なこだわりでも、そこに情熱があれば惹き付けられるというか、当時強い引力を感じたのを覚えていますね。それに『ジャーナルスタンダード トライセクト』が提案するノーブルな世界観にもマッチしていて、ひと目見て『これはいいな』と思いましたね」

ユニークな視点を加えてつくられるアパレルコレクション。

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エミール

中本氏の言葉にあったように、ブランド設立時は小物類だけの展開だったが、2014年にはウェアやシューズもリリースするようになった。「自分たちが表現したいことをより明確に伝えるために必要なことだった」とエミールは語っている。ラインナップにあるのは、アメリカのトラディショナルにユニークな視点を加えたアイテムの数々だ。

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エミール:「ぼくはもともとスケートや、ポップなグラフィックに影響を受けて育ってきました。でも、大学で尚思と時間を共有するにつれて、“日本人が着こなすアメリカントラッド”に影響を受けるようになりました。アメリカの文化を上手に消費して新しい価値を生み出す日本人のセンスに、とにかく脱帽したのを覚えています。これがぼくたちのクリエーションの原点になっているのは間違いない事実です」

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エミール

と、少しだけ恥ずかしそうな表情を浮かべながら話すエミール。それ以来、彼の頭のなかには常にアメリカのトラディショナルのことがあって、それをいかにユニークなアイテムへと変換するかを考えているそうだ。

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エミール:「例えばこのデニムジャケットは、第二次世界大戦のときに日本軍の兵士が着ていた“Type-2”というジャケットがベースになっています。なにかの写真集でオリジナルのアイテムを見たときに、ポケットの多いデザインに惹かれたんです。でも、それをそのままつくってもおもしろくない。そんなときに、リーバイス®の“Type-2”(通称 セカンド)と呼ばれるデニムジャケットの存在を思い出して、それをミックスしようと思い立ちました」

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エミール

アパレルのコレクションがローンチしたことで、ブランドが提案する世界観がより濃密になった、と中本氏は話す。

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エミール:「ウェアの展開がスタートしたことは、ぼくたち『ジャーナルスタンダード トライセクト』にとっても嬉しいことでした。というのも、ブランドの奥行きが一層深まることで、店頭での陳列も単純にパッケージとしてのおもしろさが出てきた。それに他のブランドのアイテムとの関わり合いも緻密になって、ユニークな提案ができるようになったんです」


大事なのは、マイノリティーのなかにおもしろさを見出だすこと。

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エミール

〈ザ ヒルサイド〉のコレクションは“トラディショナル”というキーワードが切っても切れないものになっているけど、それは決して古臭さを意味するものじゃない。それは彼らがいま“おもしろい”と感じるカルチャーやスタイルが、オンタイムでデザインに付与されているからだ。そのデザインの秘訣をエミールに聞いたら、いろんなところから情報を得ることが大切だ、と教えてくれた。

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エミール:「やっぱり、窓もなにもない部屋に閉じこもっていたら新しいものは生まれないですよね。外へ出て感性を刺激するものに出会い、それを自分たちのルーツと混ぜ合わせることで、はじめて新しいなにかが生まれるのだと思う。だからぼくも常にアンテナを広げるようにしています」

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エミール

彼が大学時代に衝撃を受けたように、やはり現在でも日本の雑誌は情報源として欠かすことのできないツールになっているそう。加えて、自分たちのブランドとは正反対に位置する奇抜で鋭いクリエーションを行なうブランドにも、好意的な目を向けて観察しているという。

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エミール:「誰かとおなじことをやってもつまらない。リスクを取って、新しいことにチャレンジする。大事なのはマイノリティーのなかからおもしろいことを発見することだと思います。これはぼくが10代の頃にスケートをやりながら学んだことです。大人たちから冷たい視線を浴びながら、ぼくたちはスケートに明け暮れ、街に落書きされたグラフィックに感銘を受け、パンクロックを大音量で聴きながら青春時代を過ごしてきました。こういったメジャーに対する反骨精神がぼくのルーツになっています」

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エミール

エミールが真剣な眼差しで語る。加えて、いまの自分の原動力に関しても話してくれた。

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エミール:「世間に対してなにか発信したいという思いを昔から持っていて、それがそのままぼくの力の源になっています。幸いなことに『こういうアイテムをつくりたい』という願望を具現化させる環境も、いま整いつつある。だからいま、デザインをしていてすごく楽しいですよ」

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エミール

この言葉を受けて、中本氏も口を開く。

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エミール:「デザイナーが楽しみながらアイテムをつくっているブランドって、お店から見ても惹かれるんですよね。だから展示会でアイテムを見ているときも自然といろんなアイテムに手が伸びて、アレもコレもってオーダーに力が入るんです」

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エミール

この言葉が教えてくれたのは、〈ザ ヒルサイド〉のクリエーションは独りよがりではないということ。自分たちの独自の視点でモノづくりを行ないながらも、しっかりと人に伝えるための術を彼らは知っているのだ。そこにもブランドの懐の深さを感じる。最後にエミールはこんな言葉を残してくれた。

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エミール:「楽しみを共有することで新しい波が生まれたら最高ですよね。ぼくがいろんなものに影響を受けてきたように、だれかが〈ザ ヒルサイド〉のアイテムを見て刺激を受けてくれたら、それに勝る喜びはないです。最近ぼくたちはブルックリンにショップをオープンさせました。まずはそこから、自分たちの世界観を発信させていこうと思っています。もし機会があれば、ぜひ遊びに来てください」

58works

http://thehill-side-jp.shop-pro.jp/

Instagram / @thehill_side_japan

the Hill-Side POP-UP STORE at JOURNAL STANDARD

JOURNAL STANDARDの一部店舗では下記日程にて〈ザ ヒルサイド〉のポップアップイベントを開催。同店の通常ラインナップに加え、ウェアを中心にたくさんのアイテムをご覧いただける絶好の機会なので、気になる方はぜひ足を運んでみてください。

 

開催期間
2016年7月15日(金)〜7月31日(日)

開催店舗

JOURNAL STANDARD 表参道

住所:東京都渋谷区神宮前6-7-1

電話:03-6418-7961(メンズ)

JOURNAL STANDARD 心斎橋店

住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-3-21

電話:06-6253-8032(メンズ)

JOURNAL STANDARD 新宿店

住所:東京都新宿区新宿4-1-7

電話:03-5367-0175(メンズ)

JOURNAL STANDARD 二子玉川店

住所:東京都世田谷区玉川2-21-1 二子玉川ライズ タウンフロント 1F

電話:03-5797-5761(メンズ)

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