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アンルートにまつわるエトセトラ。 vol.1 ディレクター・沼田真親が語る“アンルート第二章”

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アンルートにまつわるエトセトラ。 vol.1 ディレクター・沼田真親が語る“アンルート第二章”

「Wearable Tokyo」をコンセプトに、モードな香り漂うオリジナルアパレルとスポーツウェアをかけ合わせ、独自のスタイルを提案している〈アンルート〉。スポーツムードの高まりを受け、今後の躍進が期待される同レーベルのいまをあらゆる角度から徹底解剖していきます。第一回目はクリエイティブディレクター沼田真親のインタビュー。〈アンルート〉の「いま」と「これから」について、根掘り葉掘り聞いてみました。

  • Photo_Kentaro Matsumoto
  • Text_Issey Enomoto
  • Edit_Hiroshi Yamamoto
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沼田真親 / アンルート クリエイティブディレクター

1992年ユナイテッドアローズ入社。グリーンレーベル リラクシングのクリエイティブディレクターを経て、2013年よりアンルートのクリエイティブディレクターを務める。

突然の銀座店クローズ。その真相について。

ー〈アンルート〉は2014年9月に銀座に1号店をオープンし、2015年4月に二子玉川に2号店を出店しましたが、銀座のほうは2017年2月28日をもって営業が終了しました。なぜクローズしたのでしょうか?

沼田:まずはっきりとお伝えしておきたいのは、銀座の店舗のクローズはあくまでも前向きな決断であるということです。〈アンルート〉のブランドとしての未来を考え、よりお客様にブランドの方向性や世界観をわかりやすく伝えようとしたときに、二子玉川の店舗に統合するのが最善の策だと判断しました。

ー銀座の店舗に関しては、当初の想定と違っていたところなどがあったのでしょうか?

沼田:メインストリートではない立地だったこともあり、偶然通りかかってふらっと来店されるお客様よりも、目的をもってお店を目指して来るお客様が多かった印象です。もちろんそれは初めからわかってはいたことですし、立地を上回る魅力を備えたお店にしようと思ってやってきました。ただ、結果としては難しいところがあったというのも正直なところです。

とはいえ、あの場所に出店したことで、ブランドとしてのエッジは立ったと思いますし、海外のお客様への訴求も含め、ブランディングとしては一定の成果を上げたと思います。

二子玉川という街の特性に、〈アンルート〉はあっている。

ー銀座と二子玉川では、街の雰囲気も人の流れも大きく異なりますよね。二子玉川に統合したことの狙いは?

沼田:ぼくらとしてはどちらの街でもいけるという仮説を当初から立ててやってきました。ところが、いざ両方に出店し、それぞれの立地を照らし合わせて検証してみると、ぼくらのやりたいことや続けていきたいことは、二子玉川でこそ実現できることだと改めてわかったんです。

〈アンルート〉というブランドをこれからどうしていきたいかを考えたときに、軸となる要素がふたつあって。まずはお客様がお洒落をしたいという気持ちに応えるブランドでありたいということ。そしてもうひとつはウェルネス、つまり健康をサポートするブランドでありたいということ。そのふたつがひとつの店舗のなかで同時にプレゼンテーションされているお店は、まだまだ少ないと思います。

「健康でいることって、やっぱりお洒落だよね」。そういったことを表現することこそが〈アンルート〉の存在意義だと思っています。健康であり続けることは何をするにも基本になることだし、身体を動かすことで自分を輝かしている人って結局何を着ても似合うじゃないですか。ぼくらはそこをファッションのアプローチでサポートしていくことをビジネスにしていきたいという思いでやっています。

その思いをお客様により伝えやすい立地はどちらなのか? やっぱり二子玉川なんですよね。河原があって、空が抜けてて、太陽を浴びながら身体を動かすシーンがあって。そして、ちょっとローカル感がありながらも、ファッションがライフスタイルにきちんと根付いている。そういう土地って東京にもなかなかありませんが、二子玉川はまさにそんな街です。

尖っていた部分を丸く。価格は抑えめに。

ー二子玉川に店舗を統合するにあたって、商品構成などに何か変更はあったのでしょうか?

沼田:コンセプトなど基本的な部分はもちろん変わりませんが、商品に関しては尖っていた部分をすこし丸くすることを意識しました。二子玉川の店舗一本でやっていくなら、そこにお越しいただくお客様が求めるものとはどういうものかをオリジナルもセレクトも含めて改めて練り直しました。

たとえば服の色味に関して。これまでの〈アンルート〉はモノトーンが多かったのですが、この春夏からはベージュ、オリーブ、そしてスモーキーなパステル系も積極的に取り入れています。それらはいままでは土臭さがあったので避けていたところがありましたが、自分たちのテイストで料理すれば〈アンルート〉らしい服として表現できるんじゃないかって。

ー〈アンルート〉らしい服って、言葉にするとどういったことになりますか?

沼田:いやそれが、ぼくらとしてもなかなかいい言葉が見つからないのですが(笑)。ただのオーセンティックカジュアルでもないし、ザ・アメリカンカジュアルでもないし、油っぽいラギットでもない。強いて言えば、ぼくなりに言葉にすると“デイリーモード”って表現しています。それがいまのところはいちばんしっくりくるかな。

二子玉川は生活をする場であり、ここで暮らす人の思いとしては「肩肘張らずにリラックスしていたい」いうのが根っこにあると思います。とはいえ、休みの日にただのリラックスウェアは着たくないし、いわゆるファストファッションのデイリーウェアでも満足できない。「もうちょっと気が利いている、いい感じの服ってないの?」って探している人は結構多いと思うんですよね。ぼくらとしてはそういった層に響くファッションを提案していきたいと考えています。

また、商品の価格帯も見直しました。オリジナルの価格帯はこれまでと比べて3割ほど下げています。二子玉川は日常とハレの場がいい感じにミックスされた街でもあり、そういう街で手に取りやすい価格帯ってあると思うんですよ。そこはビジネス的な広がりを考えたうえでしっかり調整して、買いやすい価格帯に設定しました。

ー〈アンルート〉はセレクトだけでなくオリジナルにも力を入れていますよね。

沼田:はい。〈アンルート〉では自分たちでつくるアイテムを “オリジナルコレクション”という呼び方をしています。俗に“セレクトショップのオリジナル”って言い方があるじゃないですか。かつてはセレクトショップにとってインポートものがメインで、それを補うベーシック商材みたいな立ち位置でしたが、〈アンルート〉では取扱商品の6〜7割はオリジナルコレクションが占めています。自分たちでつくるからにはそこにプライドを持ってやって、きちんとひとつの世界観ができるようなモノつくりをしていきたいと思っています。

実は二子玉川こそが〈アンルート〉の原点。

ー消費者の立場からすると、二子玉川の〈アンルート〉ってコンセプトや空間設計含めて、『二子玉川ライズ』との親和性がとても高い印象があります。

沼田:そうですね。それに絡めてすこし裏話をすると、〈アンルート〉が最初にオープンしたのは銀座でしたが、実は二子玉川のほうが物件としては先に決まっていたんですよ。

ーえっ、そうなんですか?

沼田:ただ、『二子玉川ライズ』は大規模開発のため、出店が決まってからオープンまでの時間が長かったので、それよりも前に1店舗オープンさせようということで、あとから出店が決まった銀座のほうが先にオープンすることになったんです。

ー銀座の1号店が華々しくオープンしたので、それが〈アンルート〉のイメージを醸成したところはあると思いますが、むしろもともとのコンセプトづくりは二子玉川のほうから始まり、1号店の銀座のほうが実験的な店舗だったということですか?

沼田:その通りです。だから実は二子玉川のほうが〈アンルート〉にとって原点なんです。

かつての『サウンズグッド』から学ぶこと。

ーユナイテッドアローズにはかつて『サウンズグッド』というスポーツファッションの業態がありましたよね。『アンルート』を運営するにあたって、そのことは意識しましたか?

沼田:非常に強く意識しました。『サウンズグッド』は業界内でも話題となり、一定の評価は得ましたが、結局事業としては志半ばで終了してしまった。そこは反面教師ではありませんが、同じ轍は踏まないように、なぜ『サウンズグッド』は継続させていくことが難しかったのかを自分なりに徹底的に考えました。

スポーツファッションのビジネスって、お洒落なジャージを売ることではないんですよね。スポーツが好きな人だって、ずっとスポーツをしているわけでは当然なくて、仕事をするとき、食事にでかけるとき、それぞれにふさわしい服装があって、そこは地続きではない。それがリアリティだと思うんです。

アメリカの西海岸なんかでは、スパッツにチェスターコートを着て〈ナイキ〉のスニーカーを履いて、そのまま仕事に行って帰りにジムに寄る、みたいに服装が地続きだったりするけど、日本人はいわゆるTPOにちゃんと合わせて着替えるし、シーンに応じて服装のテンションも細かく使い分けるじゃないですか。ぼくはそれってすごく「東京らしいな」って思うんです。

だからぼくらとしてはお客様のリアリティに寄り添った品揃えにしていきたいと常に考えていて、シティウェアとスポーツウェアはひとつの店にあるけれども一緒くたにするのではなく、2軸で表現するように意識しています。

ただ、そのあたりの概念的な部分を人に伝えるのはなかなか難しく、マスコミからインタビューを受けて説明しても、限られた字数で表現しようとすると最終的に“アスレジャー”って一括りにされてしまったりするのですが(笑)。

ーぼくらも含め、メディアはなにかと括りたがりがちですからね……。

沼田:ぼく自身の性格なのかもしれませんが、括ったり括られたりするのがすごく嫌なんですよ。「あなたはこういう人ですね」ってすぐに括りたがる人がいますが、人ってそんなに簡単にカテゴライズできるものではないじゃないですか。

人はひとりひとり違って当たり前。ブランドだって同じことです。ブランドがひとつの人格だとしたら、あんな面もあるけど、こういう面もあるっていう多面性が面白いわけで。ひとつひとつ違った個性を備えたブランドの魅力をどうやって表現していくかはぼくが常々考えていることです。

スポーツ機運が高まるなか、〈アンルート〉としてできること。

ーところで、3年後の東京オリンピックに向けて、世の中全体のスポーツ機運が高まりつつありますが、〈アンルート〉ではそのあたりも意識していますか?

沼田:そうですね。せっかくなのでいっしょに盛り上がりたいと思っています(笑)。冒頭でも言いましたが、健康はすべての基本。世の中的なマインドもオリンピックに向けてその方向に高まっていくことは間違いないし、自分たちもそこに乗っていきたいですね。

具体的にぼくらが何かをできるわけではないかもしれないけれど、何かしらのかたちでいっしょに盛り上げていければと思います。先日、東京を拠点に活動するランニングチームとコラボレーションしたTシャツを〈アンルート〉で製作したのですが、それもそのひとつかもしれません。東京にもこういうランニングカルチャーがあるということを世界に向けて発信することも、〈アンルート〉だからこそできるアウトプットのひとつだと思いますから。

EN ROUTE FUTAKOTAMAGAWA

住所:東京都世田谷区多摩川1-14-1 二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット 1F
電話:03-5797-3184
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