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FEATURE| What the hip think about? 注目の人物にインタビュー。漫画家・横山裕一

What the hip think about? 注目の人物にインタビュー。漫画家・横山裕一

What the hip think about? 注目の人物にインタビュー。漫画家・横山裕一

その道のプロや識者に話を聞き、「なるほど!」と膝を打つこと。あまりに規格外のひとを見て「何だ、これは!」と既成概念がぶち壊されること。こういった体験に勝ることはありません。アート、メディア、ライフスタイル、デザイン、マーケティング、政治など、さまざまなジャンルのなかで、鋭い視点と発想、卓越した技術と知識を武器に世の中をにぎわす、要注目の人物たち。雑誌『フイナム・アンプラグド』では、1号目から最新号まで毎号掲載し、これまでにDOMMUNE・宇川直宏さん、デザイナー・宮下貴裕さん、渋谷区区長・長谷部健さん、ジャーナリスト・荻上チキさん、写真家・石塚元太良さんなどにお話を聞いています。ウェブのフイナムでも同じ企画がいよいよスタート。第一回は、ユーモアあふれる作風で知られ、マンガとアートの狭間を生きる奇才漫画家・横山裕一さん。絵画からマンガへの転換、作品を本として残すことへの想い。かれ特有の経験と才能によって生まれた視点から見る“漫画家”、そして“芸術”とは。メディアにはあまり登場しない横山さんに話を伺いました。

  • Photo_Kenji Nakata
  • Interview&Text_Mayumi Yamase
  • Edit_Shinri Kobayashi
  • Copyright_Yuichi Yokoyama
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横山裕一

1967年、宮城県生まれ。漫画家。独特な世界観と時間軸を表現したマンガが特徴。主な作品として「アイスランド」「ニュー土木」などがある。NANZUKAギャラリーにも所属しており、国内だけではなく世界的に高い評価を得ている。

ダメだしされるということはやっぱり大切なことです。

ーでは、最初に簡単な自己紹介をお願いいたします。

横山:漫画家です。まあ、売れてない漫画家として紹介してもらえれば大丈夫です(笑)。時間の大半はマンガに費やしていますが、収入の大半はイラストですね。

ー時間の比重はマンガの方が大きいんですね。

横山:そうですね。マンガは僕にとって一番やらなくてはならないことですから。イラストは他にもいっぱい描けるひとがいますんで。

ー横山さんの描くマンガは、吹き出しがなくてオノマトペ(擬音を視覚化した漫画表現)だけとか、般的なマンガと少し作風が違いますよね。

横山:はい、だから売れてないんですけどね(笑)。

ー(笑)。そんなことないじゃないですか。いまの作風に至った経緯を教えてください。

横山:最初は(美術としての)絵を描いていたんです。例えば、コップの絵を描くとするじゃないですか。でも、その絵は一度描いてしまうとそれで終わってしまいます。でも僕は、その絵が“その後にどうなるか”を描きたいと思ったんですよ。

例えば、その絵の中のコップのお水を飲む、空になる、そしたらまたお水を注ぐ、といったように連続性を描きたいと思っていたんです。だから、僕のやっていることは絵の延長なんです。

絵を描くひとって大抵、何か思い浮かんだ場面や、何かを見て、このひとの顔を描いてみよう、と何か閃いて描くわけです。若い頃僕は、岩、窪み、あたり一面は人工芝、といった場面を夢のなかで見たときに絵にしました。普通の人はこれを1枚描いたら終りです。でも、僕はその絵をマンガにして、その場面がその後にどうなるか、その前はどうだったかという絵を描いていたんです。そうすると、それは24ページにまで膨らみました。

ーそれはどんなストーリーになったのですか?

横山:岩に人が集まってきて、岩をくり抜いたり、電球やスイッチをつけたりするんです。それで、岩が地下に降りるエレベーターになっていくというようなお話です。そんな風に、一つの場面を思いついて、それをマンガにするというのが僕のスタイルですね。なので、普通に読んで面白いはずがないんですよ(笑)。

ー以前よりも現在はマンガという分野がアートとして世の中に受け入れられている印象を受けます。

横山:そうですね。今では少しそんな扱いになっていますが、昔はまったくそうではなかったです。僕は武蔵野美術大学の油絵科を出ているのですが、その当時の先生にとって「マンガやイラスト」という言葉は、デキの悪い絵を貶す時の表現でした。「君、これじゃイラストだよ」、「マンガじゃないんだから」とか。そういう風に使われていました。今ではそうでもなくなってきましたけど、僕のいた頃はそうでしたね。

ーそういった悪いといわれていた分野に、わざわざ飛び込むのには勇気が必要だったのではないですか?

横山:わざわざ飛び込んでいくのは確かに恐いことでしたね。ただ僕は、絵を描いてはコンクールに送っていたのですけど、出しては落ちてを繰り返していました。だから、どこかで諦めがついていた部分もあったんです。「もう絵ではダメなんだろうな」って。

もしコンクールに出して落ちる、という経験をしていなかったら今だにまだ絵画というものにこだわっていたかもしれませんね。だから、ダメだしされるということはやっぱり大切なことです。それがないと、自分に本当に合うところに行けなくなってしまいますから。今から20年も前の話ですけどね。

絵って描いていると本当に楽しいんですけど、でき上がっても何にもないんですよ。マンガって全然楽しくないんだけどでき上がるといろんなことが起こるんです。

ー なりたかった職業はありましたか?

横山:小さい頃は水族館の飼育係になりたかったですね。カメとかカニとか水辺の生き物が大好きだったんです、サンショウウオとかも。ただそれをやるには理系の大学に行かなきゃいけなかったので諦めました。全然勉強もできなかったので。でもならなくよかったです。絵描きか、漫画家かと心のどこかでは思ってはいたので。それに今もなんとなくそういう職業に就けていますから、本当に幸せなことですよ。

ーマンガを描き始めたきっかけはなんだったんですか?

横山:昔住んでいたのが、12畳くらいある割と大きめな部屋だったんです。それも、どんなに汚しても平気というすこし変わった大家さんで。だから、大きな板に絵を描いていたんです。でも、それをコンクールに送ると落ちるわけですよ。恥ずかしいし、お金もない。そう思っている最中に、アパートが取り壊しになるので出て行けと言われたんです。

それで引っ越したところは、6畳くらいのアパートで、もう大きな絵は描けない。なので、紙に描くようになっていったんです。場所も気持ちもどんどん追い詰められている時に、友人が「雑誌とかに応募して、イラストの仕事をしたらいいんじゃない?」と一言。でも自分的には「そこまで落ちぶれたくないな」という思いだったんですけど、コンクールに出してみたらすぐに入選しちゃって(笑)。そしたら、仕事もそのあとから来るようになったんです。

営業もして、その時すでにマンガは描いていたので、訪ねて行くと「マンガの連載は難しいけど、イラストならできそうだね」といった具合に割と仕事では困らなくなっていきました。そして、そうやっているうちに、マンガを載せてくれる人も出てきた、という感じですね。

ーマンガを出版されたのもその頃ですか?

横山:そうですね。最初に出版の話をくれたのは外国人の方だったんですけどね。出版社を作ろうと考えていたフランスの方が、日本に遊びに来ていたときに、たまたま見かけた僕の作品を気に入って連絡してきてくれたんです。僕のマンガが『コミックQ』という本に載っていたので、それを観てくれたみたいです。

外国の方のそういう探究心には本当に感心します。お金を儲けるということではまったくなくて、本当に「文化」として扱っているんです。全然売れないのに、どんどん出版しようと言ってくれるんです(笑)。そういう方が世界中に何人か知り合いでいまして。アメリカ、イギリス、スペイン、イタリアと、大体各国にいます。頼むとみんなだいたい出版してくれます。本当に海外の人は売れなくてもやってくれるんですよ。日本だとそうはいかないですよね。

ーそうですよね。今はどんなものを制作しているんですか?

横山:今は『ひろば』っていうものを描いています。ブラジルの変な格好をして、みんなが踊ったり行進したりするお祭りがあるじゃないですか? あれはなんでやっているのか、ちゃんとはわからないのですが、多分神様に感謝するという意味合いがあるんでしょうね。お祭りってそうゆうものですから、そういったのを描いています。

歩くコースがあるんですけど、その上をずっと間抜けな格好をした人たちがずっと行進し続けて、それを周りの観客がワー! とかいいながら見て楽しんでいるっていう、熱狂的な描写が225ページもあるんです。あと残り17ページで完成なんですよ。もう1年10ヶ月くらい描いてるんですけど。

ー今描いているものにストーリーはあるんでしょうか?

横山:ないです、とりあえずずっと行進が続いていくんです。225ページも。来月にはペン入れがすべて終わるのでバイトさんに頼んで、トーンを貼ったり背景を入れたりと、またその作業が3カ月くらい続くんです。本当にマンガって楽しくない。絵って描いていると本当に楽しいんですけど、でき上がっても何にもないんですよ。マンガって全然楽しくないんだけどでき上がるといろんなことが起こるんです。

一番わかりやすく言えば、安いながらもお金になります。あと一番いいのが、読者がいますよね。絵は描いて、個展を開いたりしても大して来てくれないんですよ。美術館でやったとしても何千人という単位です。ところが、マンガ本だと、本を一冊出すことでそれが世界中の人にたちまち広がるわけです。人数は1万人か、2万人かはわかりませんが、たくさんの方が見てくれます。なおかつ、本屋にはずっと置かれ続けます。

見てくれないから、描いて終了っていう絵とは違うわけです。だからやっぱり描いていても虚しいですよね。ミーハーなんで、皆さんに騒いでいただきたいのです。読者がいて、褒めてくれないとやる気もでませんからね(笑)。

たとえば、鳥とか昆虫が人間を観察しているような視点で描いています。

ーストーリーのアイデアはどこからやってくるのでしょうか?

横山:それは絵を描くひとと同じですよ。日常を生きているなかで何か見たときに、あ、これを絵にしてみようって思うはずなんです。無意識にネタを探してるんですよね。面白いなって思って写真を撮って、あとから描く人なんてたくさんいると思います。それとまったく同じですね。あとは、なんでもない誰かの一言とか。見たテレビとか。そういうものを膨らましてマンガにすることもありますね。

まあマンガって本当に誰でも描けるし、例えばこの喫茶店に1カ月監禁されたとしても、ネタはいくらでも転がってますよね。それがたとえ、誰もいないとしても。日本人はマンガが得意ですからね。サッカーなんてしたらダメですよ(笑)。マンガなら勝てます。毎年きっと優勝しますよ。それくらい得意なのになんで描かないのか。不思議に思いますよ。なんで油絵なんて描いてるんだろうって。

あと、ストーリーとは言ってますが、僕のマンガはいわばストーリーらしいストーリーがない。それはどこか動物が人間を見ているような視点で描いているからなんです。たとえば、鳥とか昆虫が人間を観察しているような。主人公の名前もなければ、セリフもない。表情もない。猫や鳥が人間をみたときに、これが男か女かなんの職業なのかとかは考えないわけで、ただ動く人間として考察しているんです。で、餌をくれるのかくれないのか、っていう利害の話になりますよね。

昆虫の立場で考えれば、その人が危害を加えられないかとか、笑っているのか怒っているのかなんて関係ないわけです。そういった視点で何かを描きたいというのはありますね。その方が公平だなって思うんです。人間なんて小さなものなので、人間の視点だけで何かを描くのはつまらないと思います。

ー今描かれている「広場」も同じような視点で描いているのでしょうか?

横山:そうですね。基本的には斜め上から眺めているので、大体の場面が同じように描かれています。人が行進しているのを俯瞰しているような視点ですね。間抜けな状況ですよ。斜め上の視点で見下ろして「なんであんなことに熱狂しているんだろう」と少し冷めた感じですね。それが楽しいんです。公平な視点ですよ。

ー絵にまだ執着はありますか?

横山:ないわけじゃないです。ただ(自分は)絵画じゃないだろって思うんですよ。絵描きで好きな人はたくさんいますし、自分よりいい絵を描いてる人もたくさんいます。だから、そんな人がたくさんいるならば自分がやらなくてもいいだろって思うんです。

ーかつては貶められるときの例えになっていた、マンガやイラストについては今はどう思いますか?

横山:適度にチャラい僕みたいな人間にはちょうどいいもんです。観る人がいてくれて、みなさんがキャーキャー騒いでくれる。絵なんて描いても誰も騒いでくれませんよね(笑)。誰もチヤホヤしてくれませんし。一部の美術マニアを除いてはですけど。大した人数の違いはないかもしれませんけどね(笑)。

ーお金を稼ぐ仕事と自分の作品制作をわけてやられる方もいますが、横山さんはいかがですか?

横山:だいたい同じことですね。お金がすごく欲しいわけじゃないんですけど、お金になっていないってやっぱり、“世の中に必要とされてないもの”になっちゃう。で、それをやるのはいいことなのか? って考えるとちょっと疑問なんです。特にファインアートで油絵をずっとやっていた人間にとって、すごく疑問ですね。「これをやっていて何になるんだろう?」って。

取材も大体断ります(笑)。日を決めるのが嫌なんですよ。

ー普段はどのような生活サイクルでしょうか?

横山:お昼頃起きて、明け方に寝ます。起きてる間はずっとマンガ描いていますね。1日に2回くらい料理して、ご飯を食べて、あと1日に30分くらいは“体育の時間”があります。あと月の1週間から10日くらいはどこかに遊びに行ったり仕事の出張で出ますね。そのついでに釣りに出かけたりとか。あと、サーフィンが好きなんで、海が近い場所に行くことがあればサーフィンもします。そんなことをやっていると大体1ヶ月に1週間から10日くらいは遊びで時間が喰われちゃうんですよね。

そのかわり家での作業はやりたくないことは一切してないです。イラストも描かないですし、取材も大体断ります(笑)。というのも、日を決めるのが嫌なんですよ。目の前に予定があってそのために戻ってきたりしなきゃいけないのは。イベントとかで僕がずっとその場所にいるときに取材をしてくれるのはいいんですけどね。

ー何か他のお仕事をされていたことはありますか?

横山:通信教育の水彩画の先生をやっていました。全国のお年寄りから水彩画が送られてくるんです。それに、僕がセロハン紙を張って上から修正をして、文章をつけて送り返すと1枚500円になるんです。僕は字が本当に下手くそで、全然読めないと苦情がたくさんくるんですよ。なので、「もうちょっと字を綺麗に書かないと回せない」とか言われちゃって。どんなに頑張っても一ヶ月8万円にしかなりませんでしたね。でも、その当時住んでたアパートの家賃が1万5000円とかだったんで、なんとかやっていけましたけど。ものすごい貧乏でしたね。

それに嫌な仕事だったんで、電車のなかでやっていたんですよね。そうすると字が揺れるので余計に汚くなっちゃって(笑)。それである時、酔っ払っていた時にそのお年寄りの絵を20枚くらい棚の上に置きっぱなしにして失くしてしまったんです。そのことがあってから、段々クビに向かっていくわけです(笑)。これはまずいなと思い始めて、イラストの営業をし始めましたね。

ーイラストのお仕事だとクライアントさんの要求に応えないといけませんよね?

横山:基本なんでも描けますけど、女の人は描けないんです。油絵で本人を目のまえにして3カ月くらいあれば描けるかもしれませんが。サラっとは描けないですし、マンガにも登場したことはありませんね。マンガの登場人物は全員男なんで。男しか出てこないような戦争映画とかが好きで、どこか憧れがあるのかなとも思いますね。

ー今描かれているブラジルのお祭りもですか?

横山:あれは、女ばかりですよね。でも、絵の中では全員男性です(笑)。変ですよね、でもいいんです。神様に奉納するものなんで。相撲のようなものですよ。

ーなるほど。まだ早いかもしれませんが、この次に描かれるものも決まっていたりしますか?

横山:4つくらいありますね。一生かかってもきっと終わらないですね。どっかで絶対に病気になってしまいそうですし。ひとつ描くのに大体2〜3年かかってしまうので。まあ締め切りがないんでね(笑)。だから週刊誌に毎週20ページとか描いてる人は本当にすごいと思いますね。僕が20ページ描こうと思ったら1カ月半かかりますから。下書き合わせたら2カ月かかっちゃうかもな。全部一人ですしね。たとえアシスタントがたくさんいたとしてもスピードはそんなに変わらないですね。

僕のマンガは楽しませるためのものでもないけど、楽しもうと思えばいくらでも楽しめますよ、っていう。

ー描く上で何に一番気をつけていますか?

横山:スムーズな時間の流れですかね。僕はコマとコマの間を一定にしているんです。例えば、1つのコマから次のコマに映る時間を2〜3秒に設定しているんですよ。なるべくスムーズに、自然に見えるように。1コマに情報を込めたいときはコマのサイズを大きくするんです。それでも1コマずつの間隔は2秒と変わりません。それはずっと守っていることのひとつですね。

普通のマンガは例えば、最後のコマが寝るシーンだとしたら、次のコマが次の日に飛んでいたりするじゃないですか。それは僕のマンガにはありえません。だったら次の日までずっと2秒ずつ夜中じゅう描かないと気が済みませんね。だから、僕のマンガは例えば全部で30ページの本だったとしたら大体どのくらいのストーリーなのか計算できちゃうんです。今描いている「広場」が大体225ページなんですが、読者の人にこれは「これは何分間の物語なんですか?」と質問されて、僕は2時間か3時間の物語の想定でいたんですけど、コマを割って計算してみたら24分くらいしかなかったんですよね。ガッカリしましたね。

確かに読むのにかかる時間は大体そのくらいかなとも思いますが。マンガは読む人にとってはあっという間ですからね。早く描き終えたいんですよね。描き終えるといろんな病気、不調が一気に治るんですよ(笑)。朝から晩まで描いているので怠けてるわけじゃないんですが、もう2年くらい経ちますからね。

ー横山さんのマンガを読む人にどんな風に気持ちになって欲しいとかありますか?

横山:もう自由に楽しんでもらいたいですね。あんまり入り込んでもらいたくもないですし、何かを押し付けたくないんです。楽しむ人はものすごく楽しむし、ダメな人は始めからダメだと思います。ジェットコースターみたいな見所や盛り上がるポイントみたいなものを盛り込んでいないので、本当に人それぞれです。

僕は雨が大好きでして、僕自身が全身雨具を着て台風の中を歩き回るとか昔よくやっていたんです。完全な防水雨合羽で雨の中に飛び込むと、本当に濡れないんです。快適で、気持ちよくてすごく好きだったんですけど、そしたらアメリカにそういうクラブがあったんです。みんなで雨のなかに繰り出して転がりまわったりするらしいんですけど。さすがアメリカって思いましたね。で、雨ってエンターテイメントでもなんでもなくてただの自然現象なんです。僕のためだけに降っているわけでもないけど、僕が勝手に楽しんで喜びを得ているわけなんです。

僕のマンガもそういうもので、楽しませるためのものでもないけど、楽しもうと思えばいくらでも楽しめますよ、っていう。でもそれはあなた次第ですよ、ってことなんです。美術って本来そういうものなんだと思うんです。美術館ってそれこそ昔は敷居が高い場所で、行ってみると誰もいない空間に絵が張ってあってサービス精神の欠片もない。「わからない人はわからないでしょうし、わからないあなたが悪い」って具合だったんです。美術はそれでいいと思うんです。

でも今の美術ってどこか違う。エンターテイメントに寄っているものが多くて。であれば、あなたは東京ディズニーランドに勝てるの? と。 もし勝てないのならば諦めるべきで、もとの高飛車な姿に戻った方がいいと思います。とはいえね、あんまり売れないのも困りますからね(笑)。

ー横山さんの作品は今の話でいうと、どこに位置するとご自身では思いますか?

横山:建前で言えば雨のような高飛車なものになりますが、実態は売れ行きを気にしている非常に陳腐なものであります(笑)。残念なことに何を描いてもいいわけでもなくて、描いたからって本にならないものなんてたくさんあります。けど、一定のレベルのものにしないと本になりませんし、ページ数だってそうです。10ページで本が出せるかといったら無理ですからね。

ーその通りですね。今後の出版、個展などの活動予定を教えてください。

横山:海外の美術館でやることがひとつ決まっていたような気がします(笑)。あと今やっている北斎という展示が各国を巡回しているのですが、それにも参加させてもらってますね。でも今年はまだ少ない方です、毎年いつも10くらいはあるので。出版でいうと海外からはいくつか出るのですがすべて過去の作品なので出版という感じではないですかね。

ーなるほど、何か最終的な目標があれば教えてください。

横山:ずっと思っているのが、電話帳のような分厚い本を出版したいと思っています。なんのストーリもない絵がずっと続くんです。コーヒーを飲んで、お代わりをいれてっていうような、本当になんでもないものを永遠と描いてみたかったんです。誰が見ても面白くないものですね(笑)。それを電話帳のように描けたら最高だなって。

あと、戦争のマンガですかね。永遠と人が死んでいく、破壊の世界。まあでも、両方とも無理ですね。特に戦争の方は人が死ぬところ描きたくないですし、いろいろ解決しなきゃいけない問題も色々出てくると思いますし。あと、最大の問題は描いても本にならなかったりっということもありますしね。あとは体力の問題も。体力は言い訳になりませんが、電話帳と戦争の話2つが最初は目標でしたね。今はちょっと無理そうだなと思います。なので、今は目の前にあるものを本にしていく、本にし続けるということですかね。

横山裕一さんの今後の展示予定または開催中および出版情報

「Mangasia: Wonderlands of Asian Comics」
www.barbican.org.uk/bie/mangasia
※アジアの漫画に関する国際巡回展
「マンガ・北斎・漫画展」
4月18日〜30日:ベトナム/ベトナム国立美術博物館(ハノイ)
5月12日〜26日:ベトナム/ホーチミン市博物館展覧会場(ホーチミン)
6月10日〜7月28日:フィリピン(マニラを予定)
8月〜10月:タイ(バンコクを予定)
11月〜2018年3月:オーストラリア(シドニー、ブリスベンを予定)
www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/traveling/manga_hokusai.html
マンガ『アウトドアー』英語版の出版
ブレークダウンpress社英国 年内刊行予定
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