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若きデザイナーが見つめる、スニーカーの新たな新潮流。

Special Interview For Filling Pieces

若きデザイナーが見つめる、スニーカーの新たな新潮流。

ここ数年、クリエイティブな業界における若い世代の活躍が目覚ましい。とくにヨーロッパのシーンでは、新しい才能や可能性に満ち溢れた若きデザイナーが数多く存在している。その筆頭ともいえるのが、オランダ・アムステルダムを拠点として、フットウエアブランド〈フィリング・ピーシーズ〉のデザイナーを務めるギオーム・フィルバートである。弱冠27歳でありながら、グローバルな視野を持って活躍する次世代を担う人物だ。〈フィリング・ピーシーズ〉はすでに世界45カ国以上で展開され、数々の著名なセレブリティが愛用しているアップカミングなブランドとして知られている。そんなフィルバートが「エストネーション」でのポップアップイベントの開催を機に来日。これまでにメディアで語られることのなかった、20代の彼が捉えるスニーカー観や、世界的な盛り上がりを見せる現在のスニーカーブーム、そして将来の展望までを訊いた。

  • Photo_Shinichiro Shiraishi
  • Text_Yuho Nomura
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Guillaume Phillbert(ギオーム・フィルバート)

1989年オランダ・アムステルダム生まれ。祖母のキャリアでもあった建築分野の学校に進み、デザインの基礎を学ぶ。それからすぐに自身の美学に基づいたフットウエア作りを志し、2010年に19歳の若さで自身のブランド〈Filling Pieces(フィリング・ピーシーズ)〉を立ち上げる。昨年、同ブランドのクリエイティブディレクターに就任し、現在はオランダ以外にも日本を含む世界45カ国以上でブランドを展開。ヨーロッパシーンで今最も注目を浴びる若手デザイナーのひとり。

アパレルに比べてスニーカーのマーケットは参入しやすかったんだ。

—早速ですが、まずはフィルバート自身のこれまでの簡単な経歴を教えてください。

フィルバート:元々は祖母の影響もあり建築分野の学校に通っていて、その頃はビルなどの建造物や空間設計について学んでいたんだ。それからデザインに対して興味を持つようになって、特に消費者の立場からプロダクトをデザインしたいと思うようになったんだよ。そして今から7年前の19歳の時にブランドを立ち上げたんだ。

—なぜスニーカーのデザイナーになろうと思ったのですか?

フィルバート:昔からスニーカーが大好きだったことはもちろん大前提にあるんだけど、それ以外の大きな理由としては、クロージングのブランドに比べて競合相手が少なかったことが挙げられるかな。僕の視点ではスニーカーのマーケットは参入しやすかったんだよ。

—どんなブランドイメージを持って〈フィリング・ピーシーズ〉をスタートさせたのですか?

フィルバート:ブランドを始める前は皆と同じように〈ルイ・ヴィトン〉や〈グッチ〉などといったハイエンドなブランドに対して憧れを抱いていた。しかし当然ながら当時はお金もないし、なかなか買うことができなかったんだ。かといってスポーツブランドのスニーカーにも飽きてしまっていた頃だった。そこでその中間の価格帯で高いクオリティを維持したスニーカーを求めるようになり、それこそが僕の欲しいスニーカーであり、ブランドを始めるきっかけともなったんだ。

—ご自身はこれまでにどんなスニーカーを履かれてきたんですか?

フィルバート:若い頃は、それこそ〈ナイキ〉や〈アディダス〉などのスポーツブランドのスニーカーを多く履いていたね。特にハイテクなモデルが多かったかな。本当ならハイエンドなスニーカーも沢山履きたかったんだけど、やっぱり経済的にもなかなか難しかったからね。今でもスニーカーは月に二足は最低でも買っていて、それくらいスニーカーに対しての想いは強いんだ。

—建築分野で学ばれてきた経験以外に、ご自身に影響を与えてきたものはありますか?

フィルバート:文化やアートがインスピレーションとなることも多いんだけど、オランダという国は沢山の人種が混在している。だから街中にいる人々やそこから生まれるカルチャーから影響を受けることも多いんだ。あとは母親からいつも靴はスタイリングの仕上げだと毎日のように教わっていたんだけど、その言葉が今でも僕の原動力になっているよ。

—スニーカーの機能やデザインなどについてはどんなことを求めますか?

フィルバート:まずデザインや機能性の前に、僕がプライス面以外でスニーカーに求めていることは、人々が僕の作ったスニーカーを手にしてスペシャルな気分を味わえるかどうか。だからこそユニークで革新的なモノを作りたいと思っているんだよ。さらに僕らがプロダクトのビジュアル撮影を行う際は、アフリカなどの国へ行って、その国の文化も一緒に提供できるような工夫をしているんだ。

「エストネーション」との別注で誕生したスリッポン。上質なスエードの素材感とクッショニングの高いソールが特徴。両者のイメージともリンクする”品格”の漂う表情が魅力的な一足。¥38,800(in TAX)

—それは新しい試みですね。だからこそ45カ国以上で展開されていたりと、様々な国で受け入れられているんですね。

フィルバート:そうだね。1シーズンに約300型くらいのスニーカーを作っているんだけど、その理由としては世界には色々なタイプの人がいるよね? 人種や体型、スタイルや趣向など。だからこそそうした沢山の人たちに向けて、皆にとっての最良な一足が見つかればいいなと思って、豊富な種類を揃えるようにしているんだよ。

—これまでに数々のブランドとコラボを実現してきて、ここ日本だと過去に〈ユナイテッドアローズ アンド サンズ〉ともコラボを発表しましたよね。そして今回は、来日の目的ともなった「エストネーション」でのポップアップに付随した別注モデルも製作されたそうですね。こちらはどんな一足に仕上がりましたか?

フィルバート:カジュアルなスリッポンタイプなんだけど、よく見ると分かると思うんだけど、ディテールだったり、素材だったりにとてもこだわってて、一言で言うとラグジュアリーなスリッポン。それは僕から見た「エストネーション」のイメージともリンクしていて、新しい提案のできる一足でもあるんだ。

—その別注モデルを製作する際には、具体的にはどんなやりとりなどがあったのでしょうか?

フィルバート:まず初めに僕らにとって「エストネーション」はとても大切なクライアントのひとつ。それは彼らがハイブランドなブランドからライフスタイルなアイテムまで幅広いカテゴリーをミックスさせた世界観を持っているということが僕らのブランドとも共通していたから。そしてその「エストネーション」からスリッポンをベースにしたスニーカーを作りたいというオーダーがあって、別注の企画がスタートしたんだ。どうしてもスリッポンと聞くとストリート感が強くて、アメリカナイズドされた印象を受けがちだけど、そこを「エストネーション」らしくプレミアムな一足にしたかったんだ。

—主な特徴としてはどんなところでしょうか?

フィルバート:各素材もアッパーはポルトガルの上質なスエード素材を採用していて、ソールはイタリアのもの。内側は豚革を使っているから通常のレザーに比べて薄くて、履き心地が良いんだよ。クッショニングも快適だしね。製作は僕らの工場のあるポルトガルで行っていて、カッティングもすべて手作業だよ。スリッポンだけど、今までにないシルエットに仕上がっていると思う。ぜひ体感してほしいね。

—現在、世界的にも大きなスニーカーブームが到来し、様々なニュースやトピックスが飛び交っています。そうした隆盛するシーンについてはいかがですか?

フィルバート:スニーカーのマーケットが年々大きくなっていることについてはブランドにとって絶好なビジネスチャンスだと思っている。それは市場が成長することによって僕らの活動にも注目が集まるから。それはアパレルショップでのスニーカーのシェア率(取り扱いするラインナップの)が高くなったことでも明白でしょ。だけど7年前に比べて競合となるブランドが増えたことも事実。良いことばかりではないんだよね。

—母国オランダのスニーカーシーンを語る上で〈パタ〉の存在を無視することはできないと思います。彼らはフィルバートにとってどんな存在ですか?

フィルバート:〈パタ〉は僕らからしたら大先輩で、15年以上も前からオランダを拠点にストリートのシーンを作ってきた人たち。彼らが初めてアムステルダムという街、そしてそこから生まれるシーンがクールだということを世界に伝えてくれたと思っている。そういった意味でもとてもリスペクトしているし、影響も受けているよ。

—またフィルバートの周りには、〈デイリーペーパー〉の面々や〈ニューオリジナル〉というブランドを手掛けるスミブといった同世代、あるいはもっと若いデザイナーやクリエイターのコミュニティがありますよね。

フィルバート:よく知っているね。〈デイリーペーパー〉のメンバーとは仲が良くて、いつも同じコミュニティとして活動しているよ。プライベートではもちろんなんだけど、ビジネス面でもサポートし合っている、良い仲間だよ。〈スミブ〉は僕よりも若いデザイナーなんだけど、世界的にも活躍しているよね。親交ももちろんあるし、会えばアドバイスをしたり、一緒にハングアウトしたりもしているよ。そして彼はそのアドバイスを活かすのが上手なんだよね。年下だけど良い刺激になっているよ。

—ここ数年オランダはもちろん、各国で若いデザイナーなどのユース世代が注目を浴びていますよね。そんな現状の中、ご自身に求められているものはなんだと思いますか?

フィルバート:もちろん良い傾向だなと思っているよ。僕らのような若い世代は、恐れるものがなく、どんな時もチャレンジ精神で溢れているんだよ。それこそがクリエイティブなマインドの源だと思っている。同時にフレッシュなエネルギーもあるしね。才能と同時にそうした要素を多く備えた人材が世界で沢山いるのに、これまではその機会やチャンスがほとんどなかったように思う。高い広告費を捻出して雑誌やメディアに作品を発表することもできなかったし。だからこそ今の時代、Instagramを始めとするSNSが主流となっていることは良いことだと思っているよ。誰もが宣伝できるチャンスを平等に持っているからね。

—フィルバートにとってもInstagramは重要な広告の宣伝ツールになっていますか?

フィルバート:そうだね。ヨーロッパやアメリカでは年々印刷物への重要性が薄れてきているように思う。だけど日本にはそういった文化がまだ残っているよね? 日本に来るたび、雑誌などの紙特有の良さを再認識しながらもSNSはそういったメディアとしてではなく、あくまでも広告ツールや商品の検証などといったマーケティング手法として活用するように意識しているよ。

今は人生に対して、大きな目的があるから幸せだよ。

—ファッション界隈以外で影響を受けた人はいますか?

フィルバート:PayPalの創業者でもあるイーロン・マスクかな。彼の持つ革新的な想像力はこれからの時代に必要とされていくものだし、最もクレバーでクリエイティブだと感じたよ。あとはもちろんAppleの創始者であるスティーブ・ジョブスからもとても影響を受けているね。昔は単純にデザイナーとしての活動に重きを置いていたのだけれど、彼らの影響によってもっとビジネス的なマインドを持つべきだと考えるようになったんだ。そんな経緯もあって、最近はビジネス面をサポートをしてくれるパートナーを迎え入れて、僕自身は昔よりもさらにクリエイティブに専念できるようになったよ。

—シューズデザイナーとして活動していくことで、自身の中でどんな変化がありましたか?

フィルバート:個人的なことをいえば、ブランドを始める前は明確な目的もなく、ただ学校に通っていたけれど、そんな退屈な日常が一変するきっかけになった。今は人生に対して、大きな目的があるから幸せだよ。朝目覚めて、自分には新しいスニーカーをクリエイトしなければならないという使命がある。おれこそ充実した毎日を送れる秘訣なんだと思う。そしてオフィスに行った時に、家族のような仕事仲間たちがいること。そしてビジネスでいえば、僕らはスニーカーで新しいイノベーションを提案したいと考えている。PayPalやAppleだってきっと成功するまでに多くの苦悩や失敗があったはずだよね?勿論それに伴って多くの時間がかかったはずだと思う。だとすれば僕らにもまだチャンスはある。今はその変化の途中にいるんだと思う。

—スニーカー以外のファッションについては、どんなこだわりがありますか?

フィルバート:もちろんスニーカーと同じようにファッションについても常にトレンドの動向を追っているよ。そしてこれから僕らもスニーカーだけではなくアパレルラインの展開も予定しているんだ。それは消費者に対してトータルコーディネイトで提案すること、また消費者たちがライフタイルとしてのプロダクトを求めていることが分かったから、スニーカー以外のプロダクトでもアプローチしていくべきだと考えたんだ。

—それは楽しみですね。今のお話の延長にもなるのですが、将来への展望や野望などあれば教えて下さい。

フィルバート:もちろんブランドをもっと大きくさせることが大きな目標。そのためにアパレルをスタートさせたり、今後はリテールショップのオープンも視野に入れているんだ。あとはブランドのマーケティングやブランディングを一括して行えるスタジオも構えたいと思っている。そこへ若いデザイナーやクリエイターをどんどん呼んで、コミュニティも拡大させていきたいだ。そうしてアムステルダムの新しいシーンを築いていけたらいいなと思っているよ。

Gravitate inc.

電話:03-3464-6588
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