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FEATURE|Innovation of KEEN “フットウェア業界のジョブズ”がもたらすロボット化という革命。

“フットウェア業界のジョブズ”がもたらすロボット化という革命。

Innovation of KEEN

“フットウェア業界のジョブズ”がもたらすロボット化という革命。

アメリカはポートランドを拠点とするアウトドア・フットウェアメーカー〈キーン(KEEN)〉。その代表モデル「ユニーク(UNEEK)」のデザイナーが、ローリー・ファースト・ジュニア氏だ。『フイナム』で“フットウェア業界のジョブズ”と呼ばれる彼をインタビューしたこの記事から約1年。今回は「ユニーク」を製造するロボット「ユニークボット」を引っさげて再び登場。このロボットは、キーンユーザーに、そして社会にとって何をもたらすのか。

  • Photo_Katsunori Suzuki
  • Interview&Text_Yasuyuki Ouchi
  • Edit_Shinri Kobayashi
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ローリー・ファースト Jr

2003年に誕生し、ポートランドに本拠を構えるアウトドア・フットウェアブランド〈キーン〉創業者の息子でありながら、昨年革新的シューズとして誕生し、瞬く間に世の中へと浸透していった「ユニーク」シリーズの産みの親でもあるシューズデザイナー。その後「ユニークボット」を作り上げた。巷では「フットウェア業界のジョブズ」と形容されるなど、イノベーターとしての才能にも注目が集まる。

フットウエア業界をみていて「退屈だな」と。

ー2014年に登場した「ユニーク」は、今では〈キーン〉の看板モデルともいえますが、日本、引いては世界での反響も踏まえて、この3年の率直な感想を聞かせてください。

ローリー:「ユニーク」を愛用してくれている方々から、「大好きです」と言われるのはすごくうれしいです。ただ、実は「ユニーク」を完成させた直後はうつ状態のようになりました。というのも、私たちは「ユニーク」を作り上げることに全力を注いでいたので、発売後の売り上げや反響などは気にかけていなかったからです。

個人的にも、「ユニーク」がたくさん売れているということはありがたいことですが、どちらかと言えば作り上げるプロセスがまずは重要だと思っています。だから作るという作業がなくなってしまった時点で、空虚になり気分が落ちてしまいました。この3年間の最初の頃は何をすればいいのか分からず、引退した方がいいのではないかと思うほどでしたね(笑)。

ー「ユニーク」のデビューから3年後となる今、新たにユニーク製造ロボットの「ユニークボット」が登場しますね。

ローリー:ロボットの開発というのは、「ユニーク」を考えついた当初からの念願でした。一定の売り上げを達成すればロボットに投資できることになっていたので、「ユニーク」が売れてよかったですね。ロボットのプロジェクトが本格始動してから、それまでの空虚な時間が嘘のように今日までノンストップで動いてきました。先ほどお話した「ユニーク」と同様に「ユニークボット」においても、作り上げたことが大事なのではなく、作り上げるそのプロセスが重要なのです。

ーそもそも「ユニークボット」を開発しようと思ったキッカケは?

ローリー:常々、フットウエア業界をみていて「退屈だな」と思っていました。靴の作り方って百年以上も変わっていないですよね? もちろん素材などに進化はみられますが、構造においてはまったく変わりません。そこで私は「ゲーム(靴づくり)全体を変えたい」、そして「ロボットで靴をつくりたい」と思い、そのためにまず「ユニーク」を開発したのです。ですから、ロボットで靴をつくりたかったから、ユニークを誕生させたと言っても過言ではありません。

ーロボットで靴をつくりたくて、結果的に「ユニーク」が生まれたということですか?

ローリー:100%その通りです。ロボットは正確であり、同じ動作を繰り返すことができます。「ユニーク」も同じパターンを繰り返し、キチンと足にフィットするためには正確でなければいけませんから。

ー約1年前に「HOUYHNHNM」のインタビューで「全く新しいものというアイデアも模索していきたい」という発言がありましたが、そのアイデアのひとつがこの「ユニークボット」だったのですね?

ローリー:そうですね。ただその当時、ロボットのことは秘密にしていたので、同じプロジェクトチームの3人くらいにしか話していなかったんです。ちょっと怖かったのかもしれませんね。やはりクレイジーな夢って、あまり人に言うものではないですから。

「ユニークボット」の開発によって失職した人はいません。

ー我々「ユニーク」ユーザーにとっての「ユニークボット」の魅力とは?

ローリー:いい質問ですね。一番重要なことは、しっかりと設計されたロボットなら、電源と圧縮空気さえあれば、(一定の技術者の)誰でも何処でも動かすことができる、という点です。

ーより具体的には?

ローリー:まず作り上げる工程を見ることができます。完成するまでの時間も早いですし、カスタムもできます。消費者と対面式で作り上げることができるのが、この「ユニークボット」なのです。

ー「ユニークボット」の登場により、環境への負担も軽減されると聞きました。

ローリー:商品の出荷の際に、生産工場からの商品輸送コストや時間、輸送に伴う燃料消費によるCO2の排出量や梱包材を抑えることができます。また今回のイベントでは「ユニークボット」を動かす電力の約半分は太陽光発電です。

ー一方で、“ロボットが人間の仕事を奪う”という社会的な問題にも繋がってくると思うのですが。

ローリー:今回、ロボット開発のプロジェクトを進めていく中で感じたことは、私の娘二人が生きていくであろう社会、彼女たちが就くであろう仕事というのは、今の世の中とは大きく変わっているのだろうと思いました。

「ユニークボット」について言えば、「ユニークボット」が誕生したことで失職した人はいませんし、むしろ仕事は増えています。ポートランドにあるキーン本社でもプロジェクトマネージメントという新たな仕事が生まれています。日本でもエンジニアを採用するなど、新たな雇用を生んでいます。また「ユニークボット」をプログラミングしてくれた会社は、パートナーとして組み始めた当初より5倍ほど大きな会社になっています。もちろん私たちからの仕事があったからだとは言いませんが…。

キーンにとっては、“靴の作り方を変える”ということで、革新をもたらす。“何処でも靴を作ることができる”ということを実現したかったのです。ただ、自動化、機械化、ロボット、人工知能の問題は、大きな社会的な問題です。人類にとって今後真剣に考えていかなければならない問題だと思います。

15分でユニークを作るという未来。

ー今後は、この「ユニークボット」をどのように展開していくのですか?

ローリー:最終目標は、「お客様がフラッと店舗に来て『ユニーク』を注文し、別にオーダーしたコーヒーを飲みながら待っていると、飲み終わる頃には注文通りの『ユニーク』が完成している」ことです。現段階で、ユニークボットが靴を作り上げる平均時間は30分強です。これを15~20分くらいに短縮すれば可能ですよね。

ー近い将来は「ユニークボット」が、キーンの各店舗に設置されるわけですね?

ローリー:本当は各家庭に一台置きたいくらいです(笑)。

ー常に進化し続ける「ユニーク」ですが、一方で様々なアーティストなどとのコラボレーションも盛んですが、その辺りについてもお聞かせください。

ローリー:コラボレーションというのは、フットウエアだけに限らず、業界全体の流れだと思います。コラボレーションこそが未来だとは言いませんが、マーケティングの面からも理にかなっているのではないでしょうか。それはソーシャルメディアから発信されるのがほとんどで、例えばコラボレーションする二人がお互いに5000人の友人がいた場合、合わせて1万人に伝わり、コラボレーションによってさらに新しいフレンズも生まれます。ただ注意も必要です。自分のブランドも守らなければいけませんので。何をするにしてもやり過ぎはいけませんね。

ー「ユニーク」の次の展開で、お話できることがあればお聞きできる範囲で教えてくれませんか?

ローリー:あります。だけど、まだ発表できません(笑)。楽しみにしておいてください。

ーでは、〈キーン〉の今後の展望をお聞かせください。

ローリー:〈キーン〉は新しいアイデアとイノベーションから始まった会社なので、そこを模索していくことは変わりません。また、キーンはファン(ユーザー)にもっともっと寄り添っていきます。理由はひとつ、ファンのためにモノづくりをしたいからです。

ー最後に、「ユニーク」&〈キーン〉ファンにメッセージをお願いします。

ローリー:〈キーン〉を履いてくれている方々、本当にありがとうございます。先ほど売り上げなんて気にしないと言いましたが、履いてくださっている方、ファンとおっしゃってくださる方の声を耳にすると、とてもうれしいです。

そして、どうか既成概念に捕われないで発想してください。「ユニーク」が実現したのも既成概念にとらわれなかったからこそなのです。夢をみるなら、失敗することを恐れずに大きない夢をみましょう! ただし、本当に夢を実現したいなら、頑張りすぎて死んでしまうくらい頑張りましょう(笑)! 世界中の人たちが自分の大きな夢に向かって努力すれば、世の中は今よりもずっとよい場所になると思います。これこそが「ユニーク」の実現レシピです。

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