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FEATURE|The Man Who is Working At The Place.

ファッションも趣味も
とにかくスマートな名古屋店スタッフ。

元寿司職人だったというお父さんに憧れて料理をするように。

仕事や好きなファッションに対する想いを熱く語ってくれた薄田さんだけど、彼が情熱を燃やすのはなにも洋服だけじゃない。じつは趣味である料理にもこだわりがあるのだ。休日だけじゃなくて、仕事で疲れて帰ってくる日も、自分の手で料理をつくるのが薄田さんにとってリフレッシュになっているんだとか。この日も夕飯をつくりながら、自分の趣味についていろんなことを教えてくれた。

「父親がもともと寿司職人だったんですよ。だから、ぼくが物心ついた頃からキッチンには父の姿があって、男が料理をするのは当たり前のことだと思っていたんです。だから小さな頃から自ずと料理に対する興味があって、幼いながらにチャーハンとか玉子焼きなどの簡単な料理をつくっていましたね」

現在は地元である福井にて建具屋を運営しているという薄田さんのお父さん。日本海に面した土地だけあり新鮮な魚がたくさん獲れ、その魚を捌く父の姿に憧れの念を抱いていたという。

「もちろん家では母親も料理をしていたので、夕飯の支度の手伝いをしながら包丁の使い方や味付けの方法など、料理の基礎はほとんど両親に教わりました。やらされているというよりも、自分から聞きにいってましたね。単純に楽しかったんですよ、料理をするのが」

レパートリーは100個近く!
冷蔵庫にあるものでも一品つくれるほどの腕前。

薄田さんが大学生になると、友人宅に招かれては手料理を振る舞うというのが習慣になっていたそう。そしてジャーナル スタンダードに入り、名古屋でひとり暮らしをスタートさせたときに手の込んだ料理にもチャレンジするようになったんだとか。

本やネットのレシピを見ながら和食を中心にいろんな料理をつくりました。ひとつの料理をマスターするために、何度もおなじものをつくっては試行錯誤を繰り返すんです。そうすると味付けの方法やその料理のアレンジ方法などが見えてくるんです。ひとり暮らしをしてもう丸5年になりますが、アレンジ料理も含めるとレパートリーは100個近くあると思います。冷蔵庫のなかのものでなにか一品つくる、みたいなこともできるようになりましたね」

この日つくっていたのは「焼き鯖寿司風どんぶり」。地元福井の名物である焼き鯖寿司をどんぶり飯にアレンジしたものだ。

「ちょっと前にチャレンジしたんですけど、そのときは風味が足りなかったので今回はごま油を足したのと、レシピには載ってなかったんですけどショウガ醤油をすこしだけ加えようと思っています」

料理をおいしくするコツは、楽しくつくること。

朝早く起きて下準備をしたというサバを手際よく調理しながら、こちらの問いかけに優しく答えてくれる薄田さんに、料理をするときに大事にしていることについて聞いてみた。

「楽しくつくる。これに尽きますね。料理をつくっているとき、ぼくはビールを飲みながら好きな音楽をかけるんです。そうして気分を上げながらやるとテンポよく料理ができるんですよ。一食で何品かつくるには色んな作業を並行してやらなければいけないので、リズムが大事になってくる。そうするためにも、ぼくにとっては音楽とビールは料理に欠かせないものですね(笑)」

そうしたポジティブな精神が料理の仕上がりをよくしてくれるんだとか。楽しく料理をする以外に、薄田さんには調理道具にもこだわりがある。

「包丁やまな板、あとは料理を盛る器はすべて日本製のものを使ってます。実家が建具屋でプロダクトがつくられる過程をみてきたということもあって、職人の技が注がれたものになんだか愛着が湧くんです。自分の気に入った道具を使うことも、料理を楽しくするひとつの要素なんですよ」

そんな薄田さんが一番気に入っている道具が、お父さんがつくってくれたというキッチンカウンターだ。完全オーダーメードのカウンターは、薄田さんの身長に合わせて高さが設定され、なかには調理道具が収納できるようになっている。

「ぼくがひとり暮らしをはじめたときに父親にオーダーしてつくってもらったんです。ちゃんとキッチンスペースに合わせて寸法を測ってあるのですごく使いやすい。これを福井からわざわざクルマに乗って運んでくれたんですよ。父はぼくの自慢であると共にこの世でいちばん尊敬している人でもあります。仕事をがんばって、親孝行したいですね」

これからは料理を通して人と人を繋げていきたい。

そうこうしているうちに「焼き鯖寿司風どんぶり」が完成。部屋には焼き魚のおいしそうな香りが漂い、食欲を刺激してくる。盛り付けもキレイにされていて、いますぐ口に運びたい気分。できあがった料理を早速食べる彼。気になるお味のほうはいかがだろうか?

「うん、今回はうまくできました。やっぱりごま油とショウガ醤油の風味が効いている。サバも上手に焼けておいしいし、我ながらあっぱれです(笑)」

そう話しながら満面の笑みでおいしそうにご飯を頬張る姿が印象的だ。最後に「薄田さんにとっての料理とは?」という質問を彼に投げかけてみた。

「仕事中、友達といるとき、部屋ひとりでいるとき、ぼくはいつもなにか考え事をしているような気がするんです。でも、料理をしているときだけは無心になれるんですよ。月並みかもしれないですけど、ぼくにとって料理は最高のリフレッシュ方法なんです。これがあるからこそ仕事ががんばれるし、休日も充実しているような気がします」

「あと、料理って人を繋ぐものだとぼくは思うんです。これまでたくさんの人に料理を振る舞ってきましたけど、料理があったからこそ色んな人と仲良くなれたように思います。これからもどんどん新しいメニューにチャレンジしたいし、それをまたみんなに食べて欲しい。そして自分の料理を通して人と人が繋がってくれたら幸せですね」