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FEATURE|The Man Who is Working At The Place.

接客に情熱を燃やす
札幌店のスニーカーマニア。

奥さんに怒られてでも買ってしまうほどのスニーカーフリーク。

福嶋さんに普段の仕事について真面目に語ってもらったあとは、ちょっと頭を休めて趣味の話題を。何を隠そう福嶋さんは道内随一のスニーカーフリークなのである。この日、福嶋さんのご自宅にもお邪魔させてもらったけど、玄関のドアを開けると床から天井に至るまでビッシリとスニーカーで埋め尽くされていて、その景色は圧巻の一言。宅急便の配達員もこれを見て驚くそうだ。

これだけの数のスニーカーを見せられて(玄関だけじゃなくて他の部屋にもビッシリとスニーカーが積まれている)気になるのは、どうしてスニーカーに魅了されるようになったのか? その歴史はいつからはじまったのか? ということ。まずはそんなことから福嶋さんに聞いてみた。

「中学のときにバスケ部だったんですよ。ちょうど90年代の話です。当時はNBAがすごく盛り上がっていて、マイケル・ジョーダンとか誰でも知っているようなスーパースターがゴロゴロいて。当然、彼らが履いているバッシュにも目が行くわけで…(笑)。うちのバスケ部は結構厳しいほうだったので、1、2年のうちは好きなバッシュを履かせてもらえなかったんです。でも3年生になったらある程度融通が利くようになるので、そこで念願の『AIR JORDAN 6』を履くようになって。そこがぼくのスニーカー人生の原点ですね」

中学、高校とバッシュに目を向けつつ、その後古着屋で働くようになった福嶋さんは、ヴィンテージのスニーカーにも興味を持つようになる。

「そこで〈アディダス〉とか〈コンバース〉とか〈ヴァンズ〉などの、オールドスクールなスニーカーに出会うんです。その頃からスニーカーを買うようになって。譲ってしまったものもあるんですけど、いまはたぶん300足くらいはあるかな。なんか、色違いとか揃えたくなるんですよね。正直、ここまで持っている人、札幌にはいないと思いますよ。どんどん増えていくので最近は嫁に怒られっぱなしなんですけどね(笑)」

とくに集めているという感覚はなく、欲しいスニーカーを買っていたらこれだけ集まってしまった、と福嶋さんは語る。収集欲というよりも、所有欲という表現のほうがしっくりくる。

「むかしは札幌にも個人経営のユニークなショップがあったんですけど、いまはなくなってしまって。買うのはネットか、旅行や出張で札幌から離れたときですかね。旅行中も買っちゃうんで、また嫁に怒られちゃうっていう(笑)。あまりハイテクなモデルには興味なくて、古着とかストリートファッションが好きなので、目が行くのはもっぱらローテクなアイテム。古着屋とかで〈コンバース〉や〈ヴァンズ〉の珍しい柄のスニーカーがあると、すぐ買ってしまうんです」

そんな福嶋さんにも、スニーカーに関する悩みがあるんだとか。

「最近ちょっと太ってしまって、いままで28センチだった靴のサイズがちょっと小さく感じるのが悩みです(笑)。ジャーナルスタンダードでは、だいたい28センチまでなんですよね、サイズの展開が。でもそれだと小さいから、欲しいアイテムが入荷したときは、わざわざ他のお店でまったく同じモデルの29センチを買って店頭で履いています。これが意外と接客のネタになっていいんですよ(笑)」

300足の中からセレクトする、3つのお気に入りスニーカー。

仕事も趣味もどこまでもストイックな福嶋さんに、思い入れの深いスニーカー、好きなスニーカー、最近よく履くスニーカーの3つを紹介してもらった。

「思い入れの深いスニーカーはやっぱりコレかな。〈アディダス〉のアイテムなんですがモデル名は不明です。ジャーナルスタンダードに入社した頃、憧れの先輩がいて。その人がコレを履いていて『超カッコいい!!』と思ったぼくは、その先輩に直談判して譲ってもらったんです。履きまくってボロボロになているんですけど、どうしてもこれは取っておきたくて。いまもこうして保管してあるんです」

「コレは“スニーカー”と“スター・ウォーズ”というぼくの好きジャンルがひとつになったアイテムですね。2年前くらいに購入しました。エピソード5のシーンがモチーフになったアイテムで、ほかにもあるんですが、今回はとりあえずコレを。『スター・ウォーズ』で好きなキャラクターですか? ストーム・トルーパーですね。スピンオフ・シリーズで『クローン・ウォーズ』っていう作品があるんですけど、そこでは彼らが主人公になっていて、もう最高なんです。『スター・ウォーズ』が好きなら一度でいいから見てみてください」

「最近よく履いているのはこの〈コンズ〉の『ワンスター』です。これはアメリカで企画されている〈コンバース〉のスケートラインのアイテム。インソールに〈ナイキ〉の『ルナソール』が使われていて、クッション性がとにかく最高なんです。日本では発売されていないモデルで、履いている人がまだまだ少ないところがお気に入りのポイントです」

シューレースを正しく通せなければ、
真のスニーカーフリークではない。

最後にスニーカーを履く上での福嶋さんのこだわりを紹介したい。観賞用にするのではなく買ったら履くのはあたり前だし、それをメンテナンスするのも当然のこと。でも、それ以前にやっておかなければならないことがある。それがシューレースの通し方だ。「シューレースって意外とおざなりにされがちなんですけど、これをちゃんと通すだけでスニーカーの見栄えって全然変わるんですよ」と語る。

「ぼくがシューレースを通す上で鉄則としているのがこの結び方です。紐は穴の下から通すのではなくて上から通す。あと、紐が交差するところは、足の内側からでてくるほうを上にすると、見え方がすごくキレイになるんです。コレ、基本中の基本なんですけど、意外と知らない人が多い。やっぱりこういう部分にもこだわりを持ってこそ、真のスニーカーフリークだと思うんですよね」

スニーカーについて語っている最中、ずっと目を光らせているのが印象的だった福嶋さんに、スニーカーフリークとしての目標を聞いてみた。

「やっぱり北海道は冬になると雪が降るので、スニーカーを履く人が減るんですよ。でも、ぼくはお店での接客を通して、冬のスニーカースタイルを提唱していきたい。雪があるから仕方なくスノーブーツを履くんじゃなくて、冬場もしっかり足元にこだわることでファッションのレベルも上がると思うんですよ。そうやって札幌のファッションシーンを更に盛り上げていきたいと思ってます」