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A TWISTED TRADITION 由緒正しき英国の異端集団とその魅力。

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バッファローは、いわゆる英国文化っていうものともまた少し違う気がします。

ー丸山さんがバッファローを知ったのはいつ頃ですか?

「僕がまだアシスタントだったときです。でも、それまではバッファローという集団がいるっていうことも、それを率いたレイ・ペトリという人のことも知らなくて。でも、師匠の馬場さんが好きなスタイリストは? っていう質問をされときなんかに、レイ・ペトリという名前をよく出していたんです。今思えば、それがきっかけですね」

ーUKのカルチャーは丸山さんのバックボーンのひとつだと思いますが、バッファローに出会う以前から傾倒されていたんですか?

「もっとずっと前ですね。僕はパンクからUKにハマってるから、どちらかというとレイト70sの英国シーンですよね。バッファローが活動していた80sの文化まで、当時は掘り下げてなかったんです。でも、パンクはカルチャーですけど、バッファローは集団じゃないですか。レイ・ペトリを筆頭に、バリー・ケイマンみたいなスタイリストや当時勢いのあったカメラマンなんかが所属していた、っていう。ひとつのコミューンを作っていたというか。だから、いわゆる英国文化っていうものとも、また少し違う気がします」

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ー初めて彼らを知ったとき、どう思ったか覚えていますか?

「率直に言うと、なるほどな、と思ったんです。上の世代の人たちが感化されたのはこういう所か、って。僕らみたいな後追いと違って、リアルに80sを通ってきてる人たちにだけ共通している感覚みたいな物があるんじゃないでしょうか。それはパンクにしてもそうですけどね。僕らがリアルタイムで経験したのは、パンクよりもグランジでしたし。今でこそ、スポーツアイテムとトラディショナルなものを合わせるって言うことを当たり前のようにやってますけど、当時としては御法度なことをやったワケじゃないですか。ジャージにジャケット合わせるのかよ?!みたいな。それをセンセーショナルに感じたのが、僕らより上の世代の人たちなんだと思います」

ーその時代には衝撃的だったでしょうね。

「絶対にそうだったと思います。でもUKらしいなと思うのが、掟破りなことはしないじゃないですか。ジャージにジャケットを合わせること自体が常識破りではあるんですけど、あくまでもイギリスならではのトラディショナルさみたいなものはちゃんとあるんですよ。だから、僕の中でのバッファローのスタイルっていうのは、トラディショナルにスポーツの要素が加わって、それがすごくキレイにまとまっているというイメージなんです」

ーなるほど。でも、そこから30年くらい経った今の日本で、そういうスタイルが広まっているのもおもしろいですよね。

「そうですね。ファッションとは何ぞや? っていうセオリー通りの時代が続くと、その反動が出てくると思うんです。昔のパンクスが服を破いたり、安全ピンで繋ぎ合わせたりとか、バーストして服を着たのもそのひとつだと思います。で、その後に出てきたバッファローは、相反する要素をミックスするっていうことをやった人たち。そう考えると、やっぱり全身モードな特権階級ではなくて、労働者階級の人たちに支持された価値観なんでしょうね」

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ーそういうカウンターカルチャーやムーブメントが生まれるのも、しっかりとした伝統があるイギリスならではかも知れませんね。

「本当にそうですよ。イギリスに行くといつも感じるんですが、やっぱり現地のスケートしてる白人の男の子たちとか、今もリアルに〈ドクターマーチン〉を履いてますからね。どこかひとつは外すけど、全部を外すことはしないというか」

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バッファローから影響を受けたのは、そのアティチュード。

ーご自身のスタイリングでも、守るべき部分と外すべき部分というのは意識されるんですか?

「例えば、シャツは必ず前を閉めるとか、そういう基本的な部分は守るようにしています。外すとしたら、アイテムの組み合わせなんかで外すようにしていて、服を着崩すっていうことはまずしません。ルールに則った上で外すというか。だらしなくは見せたくはないんです。そういう視点で見ても、バッファローの人たちの感覚には共感できる気がします。スタイリング自体を参考にするというより、そのアティチュードに影響を受けました。レイ・ペトリがもし生きていたら、こんな風にしたかもな……なんて思ったり」

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ー時代を越えたシンパシーがおもしろいですよね。

「スタイリスト的な目線で言えば、この写真集って、めちゃくちゃカタいんですよ。小物とか、洋服のディテールとか、スタイリングで見せるべきポイントが確実に映ってる。だから肩の力が入っていて、抜け感が少ないんですけど、それが結果的に良いヴィジュアルの重さに繋がっているように見えますね。だからすごくストイックですよ。今の時代は、もう少し力を抜いてみようよ、っていう空気感だと思うんです。それももちろん良いけれど、こういうスタイルや表現にしかないエネルギーっていうのは確実にあると思う。今でもたまに『BUFFALO』を開くことがあるんですけど、ファッションシュートってやっぱりこういうことなんじゃないかって、その度に思わせてくれるんです。もちろん、自分の身の丈にあった、取り入れやすいお洒落をたのしむのも悪くはないけど、ファッションってやっぱり憧れさせてナンボだと思うんです」

丸山晃が見る、〈ドクターマーチン〉2015AWシーズンの最新作。

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往年のパンクスを想起させる、トウのスチールが露出した3ホールシューズ。「昔、8ホールや14ホールのブーツのトウをヤスリで削ったのを思い出しますね」

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シンプルな8ホールのレースアップブーツは、アウトソールからライニングまで徹底したオールホワイトが洒脱。「この潔い配色が抜群に今っぽいと思います」

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アイレットと履き口のパッドが目を引く一足。「デザインはすごく新鮮だけど、馴染みの深いイエローステッチっていうのがおもしろい。ルーツを感じます」

ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
電話:03-5428-4981

丸山 晃

1977年生まれ。馬場圭介氏に師事した後、2002年よりフリーランスとして活動を開始。10代から傾倒しているUKカルチャーを思わせる、上品でもモダンなスタイリングが真骨頂。現在アシスタントを募集中。詳細は下記より。

akira-maruyama.com