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BIG YANK The Third Edition  5人の好事家デザイナーがアレンジした、それぞれのビッグヤンク。 Case3_坂田真彦

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日本を代表するデザイナーのひとりである坂田真彦さんも、今回の〈ビッグヤンク〉のプロジェクトに参加。数々の人気ブランドのディレクションを務める一方で、過去に南青山でヴィンテージショップ「アーカイブ&スタイル」を経営するなど、根っからの古着好き。最先端のモードからコアなヴィンテージまで知る数少ない人物。今回のプロダクトは、そんな坂田さんのヴィンテージへの敬愛ぶりを感じる仕上がりとなっている。

—坂田さんといえば、大の古着好きとして知られていますが、〈ビッグヤンク〉を知ったきっかけはなんですか?

坂田:20数年前にヘビーウエイトのネルシャツを買った記憶がありますね。当時はネルシャツと言えば〈ビッグマック〉が有名で、チェックのカラーリングもいいものが多かったんです。ネルシャツを探しているときに、ラックを見ていると〈ビッグヤンク〉がたまたまあって。なんだ、この紛らわしい名前は?と思ったのが正直な感想です(笑)。でもよくよく見てみるとヨークをカーブさせて、背中を丸みのあるパターンにすることで、動きやすくしていたり、随所に独自の意匠があったんです。それで、このメーカーは大量生産なのに凝った作りをしているんだなと感心しましたね。

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ー坂田さんは以前、青山で「アーカイブ&スタイル」の屋号で古着屋を経営されていましたが、〈ビッグヤンク〉は買い付けていましたか?

坂田:もちろん扱っていましたよ。この〈ビッグヤンク〉の企画を受けるにあたって、普段のディレクションやデザイナーとしての関わり方でなく、自分が古着屋をやっていたというパーソナルな部分で携わりたいと思ったんです。普段の買い物もそうですし、お店をやっていた時にバイヤーが買ってきたヴィンテージに関しても、すごくいいと思う古着はサイズが大きい場合がほとんど。そういう時に、自分ならどういう着方をするのか、ああでもないこうでもないとシミュレーションするのですが、今回はそういうニュアンスを存分に取り入れたプロダクトにしました。定番のプルオーバーのハーフジップとガチャポケのシャツをベースにして、通常は展開していない18で作ってもらうことから始めたんです。

ー18というとXXXLくらいのサイズ感ですか? 15ハーフでLくらいの印象ですけど。

坂田:そうですね。この大きさには、当時のタグにビッグントールという表記がされていたので、それも復元してもらっています。

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HARF ZIP SHIRT ¥23,000+TAX

まずはロング丈のハーフジップシャツですが、かなり今っぽい印象ですね

坂田:この着丈は18サイズのまんまで、襟をカットしてスタンドカラーにして、袖もアームホールなどはいじらずに七分袖にしています。カットオフした部分にはあえて同色のネイビーの糸にすることで、うまくリメイク感を出しました。

ーなるほど、当時の人が雑に同色の糸で直しを加えていた古着ってありますもんね。

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坂田:そうそう、その雑さがまたかっこよかったりするわけじゃないですか。これは白に関してはリネン、青に関してはコットンにしています。縮率が異なるので、おのおのでパターンを変えています。今の時代ってなんでも揃っている、いろんなものが作れてしまうからこそ、当時のような限られた状況下の中で、新鮮に感じてもらえるものを作ってみたいなと思ったわけです。

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ー次に定番のガチャポケのシャツに関してお伺いしたのですが、まるでエンジニアジャケットのような風貌になりましたね。

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坂田:これの大きな特徴は、襟から胸元までカットして、身返しを付けていることです。その部分に芯地を使わない代わりに、裏から当て布をしてもらっています。この選んだ生地がちょっとクセモノで、そのままだと縮率が違いすぎて洗濯をするとバランスが悪くなるので、斜めに使うことで対処しました。自分は芯地が好きじゃなくて、それが古着の好きな理由のひとつでもあるんです。

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SHIRT JACKET ¥23,000+TAX

坂田:今は技術が高くない人でもうまく縫えるように、芯地を入れて縫製することがほとんどなのですが、35SUMMERSさんがいろいろと工夫してくれて、こちらの要望をよく聞いてくれました。このシャツジャケットは、先ほどのシャツと違って、長い裾を切って三巻にして、スッキリとした着丈にしたり、カフスを一度外して、袖の長さをカットしてから〈ビッグヤンク〉らしいストームカフで仕上げたりと、少しギミックが効いている風に見せています。

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ー実際に着てもらうと、また印象が違いますね。かなり洒落ています。坂田さんが似合う服ですね(笑)

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坂田:いやいや、万人の方に似合いますよ(笑)。春先にジージャンだと少し生地が固いし、カーディガンだとちょっと頼りないって時にちょうどいいかなと。けっしてエンジニアジャケットを作りたかったわけじゃなくて、あくまでもシャツをリメイクした延長にあるものにしたかったんです。これならいかにもワークウエアという表情ではないので、ラギッドにも見えないし、ほどよく軽く見えるかと思います。あえてタイドアップしてコーディネートしてもおもしろいですね。一方のノーカラーシャツは、グルカショーツに合わせたり、スラックスを穿いてもバランスがいいのではないでしょうか。2つともヴィンテージの本格的な仕様で、ありそうでなかったものにしたかったんで、そういう意味では大満足しています。〈ビッグヤンク〉ファンの方々はもちろん、あまり知らなかった方に、このブランドのことを知るきっかけになってくれれば、この上なく光栄です。