バイヤーから作り手へ。尾花大輔を変えた一言。
ー それだけ古着に傾倒していた尾花さんが、なぜ服作りを始めたのでしょうか?
尾花:実はゴーゲッター時代にアメリカのディーラーに言われた一言がきっかけなんです。「お前が探しているものは、ヴィンテージじゃなくて、アンティークだ」と。衝撃的でしたね。その一言で自分のなかではファッションのつもりでやっていたことが、もはや考古学レベルにあるんだと気付かされたんです。
ー そこでショップ「ミスターハリウッド」及びブランド〈N.ハリウッド〉に繋がってくるわけですね。
尾花:実はミスターハリウッドのオープン当初は、〈リーバイス®〉のリメイク品を扱っていたんです。〈リーバイス®〉ってそもそもブランドの価値観がはっきりしているじゃないですか。だからこそ、時代にフィットするための引き算のデザインが必要だと考えたんです。それが僕らも驚くほど好評で。オフィシャルではなかったんですけど……。
ー その後、〈N.ハリウッド〉では正式にコラボレーションを行いました。
尾花:ブランドを立ち上げて2年目くらいの頃ですね。
ー自社で作ることと、〈リーバイス®〉と一緒に作ることに違いはあるのでしょうか?
尾花:技術的に大きな差はあるわけではないので、正直いってしまえば自社でも作れるとは思います。でも自社で作ると、あくまでも〈リーバイス®〉風の物になってしまうんですよね。だからこそやるからには必然性のあるものを作らなければいけない。長い歴史で培われたさまざまなディテールを抽出しながら、僕らと〈リーバイス®〉が一緒に取り組む理由を形作っていくんです。その作業はかなりデリケートにやっていましたね。