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MY BEST HERSCHEL SUPPLY ハーシェル サプライを選んだ4人の目利き。Vol.3 青谷克也(ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ バイヤー)

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街で楽しむデイパックとして、すっかりスタンダードな存在になったカナダ発のバッグブランド〈ハーシェル サプライ〉。アウトドア、ヴィンテージ、スポーツ、トラベル、ファッション。どんなキーワードにも絶妙に馴染んでしまうバランスと存在感、使いやすさとデザイン。2009年に誕生してから約6年、ここまで定番化した理由はなんだったのか? 〈ハーシェル サプライ〉をシーンに浸透させてきた4人が、愛用のバッグとともにその魅力を語ります。

Photo_Satomi Yamauchi
Text_Mayu Sakazaki
Edit_Hiroshi Yamamoto

いい意味での“軽さ”がある。

3人目の目利きは、2008年からビューティ&ユース ユナイテッドアローズのメンズバイヤーを務めている青谷克也さん。時代性やファッションの“流れ”を的確にとらえたバイイングを続けてきた青谷さんにとって、〈ハーシェル サプライ〉に惹かれた理由はなんだったのか。

青谷:最初の出会いは、4、5年前のアメリカ出張ですね。LAのセレクトショップで初めて見かけて、ひと目で気に入ってボストンバッグを私用で購入しました。その足で訪れた〈ステューシー〉では、ポップアップショップが行われていて。なんだか偶然が重なるなって思っていたら、今度はNYに駐在しているスタッフから「こういうブランドがあるんだけど、どう?」って連絡がきて。「凄い巡り合わせだな」と感じたのを憶えています。

しかも、当時はちょうど手頃な価格なバッグを探していたんですよ。トレンドもデザインコンシャスなヨーロッパテイストからアメリカのクラフト感へと移行し始めた頃。クラシックなアウトドアブランドよりも洗練されていて、専門的なバッグメーカーほど仰々しさもなく、しかも都会的。〈ハーシェル サプライ〉は理想的なブランドでした。

ありそうでないスタンスだし、いい意味での“軽さ”も持ち合わせている。展開するのに迷いはありませんでした。売れるだろうという直感をもとに、新しいブランドでありながら全店舗での展開に踏み切りましたからね。

ムーブメントが起こる瞬間というのは、「ちょうど」がたくさん重なっている。そして、それがきちんとした“いいプロダクト”であれば、人気は一過性ではなく定番になっていく。

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遊びの効いたセレクトで差別化できる。

店頭での販売がスタートすると、お客様の反応がダイレクトに返ってくる。予想外だったのは、若年層や女性からの支持だという。

青谷:ブランドの世界観がはっきりしているので、洋服好きの方には一定の評価は得られるだろうとは思っていました。ところが、いざ蓋を開けてみると若い世代の反応が圧倒的に良かった。10代から20代前半のお客様から動き出して、女性にも好印象。

もちろん30代前後の洋服好きな方々にも、デザインとブランドの世界観に共感をいただきました。それだけターゲットを選ばないブランドって、なかなか無いんですよ。しかも、価格はリーズナブル。ここまで人気が出るのも頷けますよね。

ここ数年で〈ハーシェル サプライ〉の人気は定番化。あらゆるショップに取扱われる一方で、ショップごとの差別化が難しくなってきているのも事実。そんななか青谷さんは他のショップとの違いをどのように見出しているのか。

青谷:小物を取り扱わなかったり、あえて新しいシリーズを展開したり。店頭で定番化しているモデルをキープしながら、チャレンジングなセレクトをするようにはしています。この春夏であれば、止水ジップを使った少し高価格帯のシリーズを店舗限定で展開してみたり。ブランドとして確固たる人気があるからこそ、セレクトで遊ぶことができるんですよね。

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一緒にモノ創りするうえで、最良のパートナー。

コラボレーションモデルも、違いを作り出す方法の一つと言えるだろう。

青谷:とにかくレスポンスが早くて、常にイメージ以上のサンプルを上げてきてくれる。カナダのブランドでありながら、時差や距離感をまったく感じさせないし、コミュニケーションを通じて僕たちのテイストをきちんと理解しているのが伝わってくるんです。ブランドとして信頼をおける存在だし、一緒にモノ創りするうえで、最良のパートナーなんですよ。

実は、最近ではコラボレーションモデルに限らず、さり気なく仕様変更したモデルも数多く存在します。ボディカラーの変更や、パイピングの色を変えてみたり、細かい仕様変更にも柔軟に対応してくれる。これだけブランドが普及したなかで、セレクトショップとしての色を出しやすい生産背景や態勢は非常にありがたい。結果、僕らとしても競合他社と差別化したセレクションでご紹介できますからね。

「カンパニーとして尊敬できる」。ディストリビューターであるCANVAS CO., LTD.の鈴木さんが話していたように、ブランドに垣間見える人間性が、セレクトショップでの提案をより広げてくれるんだろう。

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