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MY BEST HERSCHEL SUPPLY ハーシェル サプライを選んだ4人の目利き。 Vol.1鈴木義人(CANVAS CO., LTD. 代表)

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街で楽しむデイパックとして、すっかりスタンダードな存在になったカナダ発のバッグブランド〈ハーシェル サプライ〉。アウトドア、ヴィンテージ、スポーツ、トラベル、ファッション。どんなキーワードにも絶妙に馴染んでしまうバランスと存在感、使いやすさとデザイン。2009年に誕生してから約6年、ここまで定番化した理由はなんだったのか? 〈ハーシェル サプライ〉をシーンに浸透させてきた4人が、愛用のバッグとともにその魅力を語ります。

Photo_Satomi Yamauchi
Text_Mayu Sakazaki
Edit_Hiroshi Yamamoto

とにかく、ルックに一目惚れしたんです。

〈ハーシェル サプライ〉のディストリビューターとして、いち早く日本にブランドを紹介したCANVAS CO., LTD.の代表・鈴木義人さん。他にも〈ポーラー〉や〈ピープル フットウェア〉など、カナダやアメリカの新感覚ブランドを提案し普及させてきた。〈ハーシェル サプライ〉との最初の出会いは、友人の紹介だったそう。

鈴木:カナダの友人から「友達がはじめたブランドだから見てみて~ って軽い感じでメールをもらったんです。その時は2010年の1月とかだったかな。ホームページか何かで写真を見てみると、ルックがズバ抜けて良かったのを鮮明に憶えています。今までにないようなアーティスティックなイメージ。でも、あまりにもクオリティが高いので洋服のブランドだと勝手に思って。当時、洋服は他でも展開していたので今は難しいかな、と思ってパソコンをパタンと閉じてしまったんですね。

でも、その日は休日で、家でゆっくりしてたこともあって(笑)、もう一度チェックしてみたらバッグのブランドということを理解して。バッグブランドでこんなヴィジュアルを作っている、その意外性に目が留まって、改めて見たらロゴのデザインも良くて。それで実際の商品も見ないままに日本で販売しようと決めて、すぐに返事をしたんです。そのあと、カナダに向かいました。

今でこそ、商品の見えかたよりも写真のクオリティやイメージを重視したルックを作るブランドは多いが、当時はその先がけだったそう。クリエイターが多いというカナダ・バンクーバーの空気感やセンスが表れた写真に、魅力を感じずにはいられなかった。

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そのときの気分というのが、新しい流れになる。

その頃バックパックといえば、昔からあるアウトドアブランドの定番ものを使うか、セレクトショップで別注したデザイン性の高いものを使うか、大きく分けるとどちらかだった。〈ハーシェル サプライ〉のような新しいバッグブランドが入る隙間はなかなか無く、入り口を探すのが大変だったという。

鈴木:日本でこのテイストで、っていうのは新しいタイプだったんです。アウトドアではなく、街から入るようなバックパックブランド。でも、僕としては〈ハーシェル サプライ〉はすごく“気分”なブランドだったんです。少し前にピストブームがあって、メッセンジャーバッグなんかが出てきて、そういうカルチャーが盛り上がっていた。

それが少し落ち着いて、またベーシックなバッグに戻ってくるようなタイミングだったので、そこにちょうどハマったのかなと、今になって思いますね。街でバックパックを使うといえば定番のアウトドアブランドしかなかったのが、〈ハーシェル サプライ〉はデザイン性もあってプライスも安く、ルックも面白い。使い勝手がいいし、シーンを選ばない。そういうものが、ちょうど求められるタイミングだったのかな。

一方で産声を上げたばかりのブランドだからこそ、バイヤーやお客さんたちのリアクションは重要になってくる。彼らの意見は、鈴木さんを通じてカナダにフィードバック。プロダクトの完成度は目を見張るスピードで上がっていったという。このレスポンスの早さも、急速に人気が高まった理由のひとつ。

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いいブランドである前に、いいカンパニーであること。

鈴木さんが〈ハーシェル サプライ〉に惚れ込んだのは、感覚的な部分だけでなく、人としての魅力も大きいという。それは、CANVAS CO., LTD.で取り扱うすべてのブランドに共通している。

鈴木:入り口はもちろん、その時の気分に合うか、というのはすごく重要なんです。でも、そのブランドに芯があるかどうか、という部分も僕にとっては大事。〈ハーシェル サプライ〉も、ルックやプロダクトだけではなく人間性というところも含めて、これなら紹介できるなって思えた。デザインだったり、ブランドを見せるセンスというところはもちろん、カンパニーの経営の仕方とかスタッフのまとめかたとか、そういうところがもう天才的。ちょっと言い過ぎかもしれないですけど、本当に天才なんです(笑)。そういう部分を見ると僕もただ紹介して販売するだけでなく、いろいろな提案をしていきたくなるし、自分の会社も見習わなければと思う。うちで取り扱うブランドは、すべて人も含めて魅力があるブランド。パッと見がよくても、中身が薄っぺらく感じてしまうと自分の中でストップがかかるんです。そういう意味でも、〈ハーシェル サプライ〉は尊敬できるブランドだと思います。

定番化したからこそ、面白いことができる。

街を歩けば、年齢や性別を問わず、〈ハーシェル サプライ〉のバッグを愛用する人は多い。ファッションとして街で使う人もいれば、旅行やちょっとしたアウトドアに出かける人も、さらにはビジネスバッグとして取り入れている人もいる。ここまで定番化したなかで、これからの〈ハーシェル サプライ〉はどうなっていくのだろう?

鈴木:まだ最初のリリースから5年ほどしかたってないので、正直まだまだこれからだとは思っています。ただ、皆様(ショップやお客さん等)のおかげで、ベーシックな存在になりつつあるのも実感している。そういう部分をもっと意識して、遠い将来はスニーカーブランドのように、長く愛され続けるブランドになったらいいなと。

そのなかで、コラボレーションや別注だったり、ポップアップショップだったり、面白いことをどんどん仕掛けていければ。もちろんデザインや機能面でもブラッシュアップしていけるように、気になったことはどんどん本国に伝えていきたいですね。

最初はレストランでご飯を食べながらミーティングしていたくらいなのに(笑)、最近ではブランド会議の規模もどんどん大きくなっています。だからこそ、いい部分はずっと変わらずに定番化して、あとは常に面白くいられれば。いろいろなものを取り入れられる柔軟さも、カナダブランドのいいところだと思うので。

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