FEATURE |
HYNM EYE ~フイナムの視点~ VOL.08フェスの理想形のひとつ、TAICOCLUBに行ってきた!

taicoco_01.jpg

世界有数のフェス大国となった近年の日本。大規模なものから、好事家だけで楽しむ小さなサイズのものまで、あらゆるジャンルのフェスが開催されています。

そんな中、2006年のスタートより生粋の音楽好きから愛され続けているフェスが「TAICOCLUB」です。本年の「TAICOCLUB’15」は記念すべき10回目の開催と相成りました。会場はおなじみの長野県木曽郡木祖村「こだまの森」!

taicoco_02.jpg
taicoco_03.jpg

雄大な自然の中に広がる会場には、早い時間からフェスラバーたちが続々と集まってきます。思い思いの場所にテントを広げ、ゆったりとくつろぎの時間を過ごしていました。

今回の「HYNM EYE」では、フイナムなりに回った「TAICOCLUB’15」を極私的にレポートしていこうと思います。

taicoco_04.jpg

まず我々が向かったのは、野外音楽堂にて行われていた、DJ of DJ クボタタケシ! 山下達郎、大瀧詠一、フィッシュマンズ、ビーチボーイズ、銀杏BOYZ、という誰もが一度は聞いたことのある曲を、独自の解釈でミックス、会場のボルテージを上げていきます。

taicoco_05.jpg

最初のアクトということで、のんびり構えていたオーディエンスも思わずガンガンに踊らされてしまっていました。もちろん我々も。

taicoco_06.jpg

終盤は、十八番であるラテンで攻め立てる! 軽快なリズムがこだまの森に気持ち良く響いたところで、ひとまずはお開きに。

taicoco_07.jpg
taicoco_08.jpg

「TAICOCLUB’15」の特徴の一つとして、テントを張ることができるエリアが広範囲に渡るということ。だだっぴろい平地の、いわゆるテントサイトだけではなく、こうして木々の間にも拠点を構えることができるため、より深く自然とコミットすることができるのだ。

taicoco_09.jpg

次に我々が向かったのは、専用のステージを構え、万全の体制でこの日を迎えたBOREDOMS。2007年に77台のドラムとのコラボレーションイベントである77BOADRUMをNYで、2008年には88BOADRUMを実現化した彼らだけに、今回のライブセットにも期待が高まります。

taicoco_10.jpg

毎回、BOREDOMSにしかできないオリジナルなライブを披露してくれるとあって、会場はあっというまに満員に。今回はEYEが輪の中心に位置し、指揮者のような位置に。

taicoco_11.jpg

EYEを取り囲むようにドラム、ギターなどが配置された。呪術的で荘厳なムードから静かに始まったライブは、いつの間にかつんのめるようなビートが縦横無尽に暴れまくる、破壊的なステージへ。

taicoco_12.jpg

ジャーマンロック、例えばCANにあるようなミニマリズムが、とんでもなく凶暴になったような音像とでもいうべきか。それにしてもライブ時間はおよそ90分。その間叩きっぱなしのドラマーたちの強靭ぶりに改めて震えた次第です。映画『セッション』とはまた違ったストイシズムがここにはありました。

taicoco_13.jpg

さて、今回の「TAICOCLUB’15」には、特設ステージと野外音楽堂の他に、もうひとつステージがありました。それが「Red Bull Music Academy(、以下、RBMA)」ステージ。

taicoco_14.jpg

今年10月25日から11月27日の間、2週間に渡りパリにて開催され、全世界4500通以上の応募から、Sapphire Slows (サファイア スロウズ)とCrystal / Sparrows(クリスタル / スパロウズ)の日本人2名が参加決定という快挙をあげた、「Red Bull Music Academy」がキュレーションを務めたステージです。
特設ステージと野外音楽堂のちょうど間にあるこのエリアは、夜の帳が落ちてきたころ、なんとも幻想的な雰囲気に包まれました。

taicoco_15.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool

巨大なティピーをステージへと変貌させたのは、エリアのサウンドデザインを手がけたWHITELIGHT。
この「RBMA」によるステージは毎年様々な趣向が凝らされており、昨年はダニエル・ベルやサカナクションの山口氏によるパブリックレクチャー、RBMA15周年映画『What Difference Does It make? A Film About Making Music』の野外上映会が開催されました。

taicoco_16.jpg
(C) Yukitaka Amemiya/Red Bull Content Pool
taicoco_17.jpg
(C) Yukitaka Amemiya/Red Bull Content Pool
taicoco_18.jpg
(C) Yukitaka Amemiya/Red Bull Content Pool

今年はいよいよアーティストたちのパフォーマンスの会場のひとつとして機能することになり、「RBMA」のアカデミー卒業生を含む才能溢れるアーティストたちが登場しました。

taicoco_19.jpg

今回我々が一番楽しみにしていたのが、各界をリードするクリエイターが注目する謎のシンガーYukiとJEMAPURによるエレクトロニックミュージックデュオ、Young Juvenile Youth(ヤング・ジュヴィナイル・ユース)。


taicoco_20.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool

客入れにブライアン・イーノの『Music for Airports』を使用するなど、開演前から期待度はMAX! 神々しくもキュートな歌声に、グリッチ感のあるクールなビートが絡みつき、色っぽくも中毒性のある楽曲を披露していました。今更ながら、今後最注目のアクトであることは間違いありません。

taicoco_21.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool

会場のそこかしこにキャンドルが配され、実にムーディな雰囲気に。

taicoco_22.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool

とっぷり夜もくれたところで向かったのは、今回の目玉のひとつである、ROBERT GLASPER EXPERIMENT。間違いなく今回のフェスで一番の集客があっただろう、大混雑ぶり。

taicoco_23.jpg
ヴォーカル:ケイシー・ベンジャミン、ベース:アール・トラヴィス、ドラム:マーク・コレンバーグ

キャッチーでとろけるような旋律を奏でるグラスパーの鍵盤に、バカテクのドラム、シルキーなボコーダーが心地よいヴォーカルなどが、ヒップホップマナーの上で自由に駆け回る圧巻のライブ構成。

taicoco_24.jpg
taicoco_25.jpg

会場が一瞬でブルーノートに変わったかのような錯覚を覚えました。

taicoco_26.jpg
taicoco_27.jpg

そのあとは、仲睦まじい漫談のようなMCと相まって、フォーキーな世界観を作り出していた、夫婦デュオのハンバート ハンバートをゆっくりと鑑賞。笑顔の溢れる素敵なステージにほっこりさせられました。

taicoco_28.jpg

しばらく野外音楽堂にいた我々でしたが、こいつだけは見逃せない、ということで、特設ステージでのClarkのライブに向かいました。いまや「WARP」を代表するアーティストであり、作品をリリースするたびに、なにかしらの新しい切り口を見せる、イノヴェイティブな電子音楽家です。


taicoco_29.jpg

この日、ステージから発せられた音像は、攻撃的で重量感のあるボディに乗る、どこかキャッチーなメロディー。徹底的にノイジーでありながら、ポップさを失わないパフィーマンスは圧巻の一言です。

taicoco_30.jpg

霧に包まれたような、アブストラクトな展開が続いたかと思えば、時折雷が落ちたかのような四つ打ちに切り替わったりと、オーディエンスをまったく飽きさせません。個人的に今回のベストアクト一つに挙げられるだろう、素晴らしい仕上がりでした。

実はClarkよりも前に出番のあった、Autechreも拝見していたのですが、ステージが本当に真っ暗で何も写らず! つんのめったビートに鋭角な音色は健在でした。

taicoco_31.jpg

さて、時刻は午前2時。宴もいい感じで盛り上がってきたタイミングで現れたのが、ceroです。新作『Obscure Ride』をリリースしたばかりとあって、会場は超満員。始まる前から熱気ムンムン! そんなオーディエンスの期待に十分すぎるほどに応える、素晴らしいライブが展開されました。


taicoco_32.jpg
taicoco_33.jpg
taicoco_34.jpg

強靭で確かな演奏力、ロックバンドのようなキレのあるキメ、フルート、トランペット、サックス、スティールパンなどがそれぞれにエネルギッシュなグルーブを生み出し、かなり“黒い”仕上がりに。ボーカルの高城晶平の存在感にも圧倒されっぱなしでした。今後、日本の音楽界を背負って立つトリオであることは間違いないでしょう。

taicoco_35.jpg

ceroのライブが終わるとすぐに、御大・石野卓球のDJがスタート! いつものようにダンスオリエンテッドでハキハキとした四つ打ちは、疲れた体を否応なしにダンスさせるという、嬉しくもハードな展開。

taicoco_36.jpg

フラフラになりながら踊ったフイナムチーム、ひとまずここで一旦休憩!ということで、テントサイトに戻ったのでした。

taicoco_37.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool
taicoco_38.jpg
(C)Yusaku Aoki/Red Bull Content Pool

ちなみに、その少し前の時間帯には「RBMA」ステージで元同僚!?の砂原良徳がプレイ中。こだまの森ごと眠らせてしまうのでは、というような幽玄なアンビエントライブセットを披露していたのでした。

taicoco_39.jpg

数時間後、目が覚めると抜けるような青空が姿を見せていました。実は夜の間は、少し雨に降られたりもした今回の「TAICOCLUB’15」。終わりよければすべてよし、ということで実に気持ちのいいシメとなりました。

また、「TAICOCLUB」についてよく聞かれる意見として、お客さんのマナーが本当に素晴らしいということ。みんながみんな、音楽を愛する人ばかりで、会場全体が本当にいいムードに包まれています。この雰囲気は本当にかけがえのないものだと思います。

そして「TAICOCLUB」。早くも来年の開催予定が発表されております。2016年6月4日(土)~6月5日(日)だそうです。フイナムでは今後も何かと「TAICOCLUB」の動きをウォッチ&サーチしていきたいと思います。

TAICOCLUB’15
http://taicoclub.com/15/

日程:2015年5月30日(土)~ 5月31日(日) オールナイト公演
開場/開演:開場 5月30日(土)13:00/開演 15:00
開催地:長野県木曽郡木祖村 こだまの森
出演: Autechre ・ cero ・ clammbon ・ Clark ・ cro-magnon ・ EGO-WRAPPIN’ ・ Electric Indigo ・ ハンバート ハンバート ・ クボタタケシ ・ Marcel Dettmann ・ Monolake ・ Nosaj Thing + Daito Manabe ・ Radio Slave ・ レキシ ・ ROBERT GLASPER EXPERIMENT ・ Sons of Magdalene ・ Sugar’s Campaign ・ Svreca × Pedro Maia × Yuriko Shimamura ・ Takkyu Ishino ・ The Kite String Tangle ・ YOUR SONG IS GOOD ・ SOHN  ・ Thieves Like Us ・ MOODMAN & PLAYERS ・ Nick The Record
Red Bull Music Academy Stage: 砂原良徳(Ambient Live Set) ・ Lo-Shi ・ Ametsub ・ Yosi Horikawa ・ A Taut line ・ Ryo Murakami ・ Young Juvenile Youth ・ Albino Botanic(Albino Sound+Sayaka Botanic)  ・ WHITELIGHT