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Gap REMIX Project SPECIAL INTERVIEW ファンタジスタ歌磨呂「想像力のスイッチとなるデザインを求めて」。

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グラフィックや映像制作の他、アパレルデザインも手がけるマルチなクリエイター、ファンタジスタ歌磨呂。漫画やアニメといった日本特有のポップカルチャーを取り入れた作風で世界を席巻する彼にとって、デザインとは、表現とは、一体何なのか。自身が参加する〈ギャップ〉のアートプロジェクト「Gap REMIX Project」の話題を中心に、ファンタジスタ歌磨呂が語る、デザインに対する想い。

Photo_Kazumasa Takeuchi[STUH]
Text_Yuichiro Tsuji
Edit_Hiroshi Yamamoto

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ファンタジスタ歌磨呂
株式会社コトブキサン代表。アーティスト、イラストレータ、テキスタイルデザイナー、グラフィックデザイナー、アニメーションディレクターとして、多岐にわたり活動を行う。ポップで彩度の高い世界観が特徴で、国内のみならず海外でも活動するなど、グローバルな活躍を見せる世界が注目の日本のクリエイターの一人。
fantasistautamaro.com

当たり前だと思っていることに、あえて変化を加える。

ーまずは「ファンタジスタ歌磨呂」というお名前の由来を教えてください。

ファンタジスタ歌磨呂:大学生のときから『マッシュコミックス』というデザイン、アート、漫画をミックスしたZINEのようなものを仲間内で作っていて。その中で自分の作品を発表するにあたり僕の本名がありきたりな名前なので、ユニークなペンネームのようなものをチームのメンバーに付けてもらったのが始まりです。

ー『マッシュコミックス』では、具体的にどんな表現、活動をしていたのでしょうか?

ファンタジスタ歌磨呂:簡単に言うと、漫画の既成概念を再構築することですね。例えば、全ページ袋とじにしてみたり、ひとつのお店の内装で漫画を表現してみたり。みんなが思う漫画の概念を一度壊して、自分たちが良いと思うデザインやアートの要素を加えて作り直すんです。

ー今では当たり前となった漫画に、自分たちならではの美的センスをもとに捉え直すということですね。

ファンタジスタ歌磨呂:当たり前だと思っていたモノやコトを、角度を変えて見てみたり、思いもしなかったものと組み合わせることで、すごく新鮮なものへと生まれ変わることってあるじゃないですか。あえて違和感を作り出すというか。『マッシュコミックス』で表現したいのはそういったことです。活動をはじめて今年で16年になりますが、この活動を通して僕のモノ作りに対する姿勢が形成されていったといっても過言ではないほど、大切なプロジェクトなんです。実際、今回の参加させていただいた「Gap REMIX Project」も、『マッシュコミックス』の延長線上にあるとも言えますし。

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日本の象徴をデザインに取り込む。

ー今回、〈ギャップ〉の「Gap REMIX Project」に参加された経緯を教えてください。

ファンタジスタ歌磨呂:香港をベースに活躍しているフォトグラファーで友人のウィン・シャが昨年のこのプロジェクトに参加していたんです。彼を通して〈ギャップ〉の方とニューヨークで食事をする機会があったんですが、そのときに今回のプロジェクトのお話が持ち上がり、「やってみませんか?」「え! やりますやります!」という感じで。

ー〈ギャップ〉という世界的なブランドからのオファーを受けたときの率直な感想を教えてください。

ファンタジスタ歌磨呂:単純に嬉しかったですね。「よっしゃ! やってやる!」みたいな(笑)。世界的なブランドであるのことはもちろん、確固たる歴史もある。おのずと気合いが入りますよね。

ーデザインに関しては、どのように進めていったのでしょうか?

ファンタジスタ歌磨呂:まずはグローバルな企画に日本人として参加するので、日本の象徴となるものをデザインに取り入れようと思いました。そして、僕の作品のコンセプトである“無限増殖”という要素も表現したくて。この2つの要素が絡み合うものを考えたとき、ふと日本の唐草模様が思い浮かんだんです。

ー日本のトラディショナルを世界に伝えるという意味で、和柄の唐草模様は今回の企画にふさわしいパターンだと思います。

ファンタジスタ歌磨呂:草木をモチーフにした模様って国によってさまざまな解釈があるんですが、日本では“繁栄”を意味していてポジティブなメッセージがある。僕は日本人だし、「これはイケる!」と胸を張って主張したかったんです。

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