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Gap REMIX Project SPECIAL INTERVIEW ファンタジスタ歌磨呂「想像力のスイッチとなるデザインを求めて」。

すべてはトリミングされている。

ー“無限増殖”というコンセプトの部分は、どのように表現したのでしょうか？

ファンタジスタ歌磨呂：形あるものって、すべてトリミングされているじゃないですか。「形」というフレームに制限されているというか。だけど、人の気持ちや祈り、願い、想像というものは、制限がないですよね？ 頭の中で考えることは、無限の可能性を秘めている。僕のいう“無限増殖”というのは、つまり想像力のことなんです。例えば、山脈を写した風景写真があるとします。その写真自体はトリミングされていて限定された景色しか写っていないけど、人間という生き物はそこに収められていない背景を無意識に想像してしまいますよね。その想像力、イマジネーションこそクリエイティブの入り口だと、僕は思うんです。

ートリミングされていることで、逆に想像力が喚起されるということですね。

ファンタジスタ歌磨呂：僕は自分の作品を通して、想像するきっかけを作りたいんですよね。一目見て終わりではなく、なにか考察させるようなもの。人の想像力にスイッチを入れられるような作品というか。

ー今回デザインされたTシャツも「何か気になるな」と思って考えると、パターンになっていて無限の広がりがあることに気づかされます。

ファンタジスタ歌磨呂：そうなんです。それに加えて、パターンをよく見ると漫画の擬音のようなモノが書いてある。それも「ファンタジスタ歌磨呂って書いてあるぞ」みたいな（笑）。実は他にも仕掛けはあるんですが、説明するのも野暮だったりもするんですよね。無意識のうちにいろいろ探って発見してくれたら嬉しいです。

説明するのは野暮だけど、伝わらなければ意味がない。

ーそういったギミックを仕掛けることで、着るだけでなく視覚的にも面白いデザインになっていますね。漫画のような文字を入れるのにはどんな狙いがあるんですか？

ファンタジスタ歌磨呂：漫画の文字って漫画の中にあると普通だけど、一度外に飛びしてしまうと少しぎょっとすると思うんですよね。ちょっとした違和感が生じる。でもその違和感は、すぐ漫画という記憶で保管されてすんなりと受け入れられてしまう。固定観念を少し揺さぶられた体験は、人生に取って何かのきっかけになるヒントになることが多いんじゃないかなって思って。

ー『マッシュコミックス』の活動で得られたクリエイティビティが、ここで活きてくるわけですね。

ファンタジスタ歌磨呂：そうですね。『マッシュコミックス』においても、固定概念から外れた部分で、いかに面白いことをするか考えていますからね。そういったことを続けていくなかで、ときに新しい価値観が生まれることだってあります。それはどんなに小さな芽生えだとしても、新たな価値を創造できるのはアーティストとしてこの上ない喜びだと思っています。

ー確かに物事の可能性が拡がるということは、新しい楽しみが増えるということに繋がりますからね。デザインに関して〈ギャップ〉とのやりとりはあったんですか？

ファンタジスタ歌磨呂：唐草模様を世界中の人に分かりやすく伝えるために、何度かコミュニケーションをとりながらデザインを見直していきました。自分がどんなに素晴らしいと思うものでも、人に伝わらないと意味がないですからね。普段のデザインを行なううえでも、そういったことには常に気を使っています。

ー他のデザイナーの作品で、気になるものはありますか？

ファンタジスタ歌磨呂：同じ日本人のChocomooさんの作品はすごく可愛いなあ、と思います。実際に着て街を歩きたい。年齢のせいか、昔はド派手一本な感じでしたが、今はモノクロだったり、シンプルな色味の方が丁度いいんですよね。

ーご自身がデザインされたものは、どんな方に着て欲しいですか？

ファンタジスタ歌磨呂：また新たな価値観を与えるという意味では自分自身のスタイルを確立している人に着て欲しいです。着ることによって人それぞれのオリジナリティを感化させたいというか。

ーイマジネーションのきっかけになれば、ということですね。

ファンタジスタ歌磨呂：そうですね。僕のグラフィックは何かを発見するとか、当たり前のものに対して問題定義をするようなメッセージを込めています。このTシャツを着ることで物事に対して疑問を投じるきっかけになったら嬉しいですね。