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HIP THINGS VOL_8 すべて150個限定。Doozyというブランドについて。

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〈ドゥーズィ(Doozy)〉というブランドをまだ知らない方も多いはず。2010年に「Doozy Inc.」を立ち上げ、紆余曲折あって、2013年8月から本格的にスタート。他ブランドと決定的に違う点は、ひとつのデザインに対して150個しか生産しない点で、モノづくりのベースはアメリカンヴィンテージ。そこから得られるアイデアをデザインに取り入れている。また、素材に対するこだわりにも目を見張るものがあり、シルエットもスタイリッシュで都会的なムードを持つ。服に道具としての利便性を求める人はもちろん、モダンな服を探している人にもフィットする、次世代のブランドだ。

今回は、そんな〈ドゥーズィ〉のディレクターを務めるスティーブ氏にブランドスタートから現在に至るまでの過程を訊いた。彼が探求する素材やディテール、そして”150”にまつわることなど、語れる要素が詰まった、男心をくすぐる〈ドゥーズィ〉の全貌とは。


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「Doozyのモノづくりは、古くなっても廃れることのない服にこそ価値があるという考えのもと、製造過程が偉大だった1940年代後半から1950年代初頭のデザインから様々なインスピレーションを得て、現代的なものより古いアイデアを主に取り入れています。また、すべての生産を最大150個までに限定し、コットンの原料からアイテムが完成するまで、ゼロからモノづくりを見ています。それは、細かい部分を疎かにすれば全体がダメになってしまう、つまり商品は決してせかすものでなければ、手抜きをするものもではないという思いからです。だからこそ、日本の産業や技術を支えている職人と真摯に向き合い、ともにモノづくりができることを誇りに思っています」

日本に住み始めて10余年。その言葉からは日本人よりも日本人らしいマインドが伝わってくる。そこまで日本に魅了されたスティーブ氏は、一体何者なのか。

「私は、イギリスの第2の都市であり、工業地帯であるバーミンガムで生まれました。祖父はエンジニアで、ロールスイスとジャガーで働いていて、常々やればできると教えられてきて、完全であることへの追求と細部への留意の大切さを学ばせられました。大学では、芸術と自然世界に対して興味があり、結果的に自然環境学の課程を1年で辞めて、グラフィックデザインを学びにアートカレッジへ転学しました。そこで、Doozy Inc.の根幹となるパッケージや、服に活かされているデザイン、レイアウト、タイポグラフィを学びました。それから日本に来るまではもちろん、来日してからもずっと、スキル向上のために、いろんなモノを作り続けてきました。そして2010年、自分自身のデザイン会社を設立することを決心しました」

自然環境学という服飾とは異なる環境に身を置き、ある時からモノづくりに情熱を傾けるようになったスティーブ氏。そこで学び覚えたのが”150”という数字だったそう。それが〈ドゥーズィ〉のブランディングに大きく関係することになるわけだが、その真意とは。

「各デザイン150個に限定して生産するという手法をとったのには、2つの理由があります。1つ目はイギリスの人類学者ロビン・ダンバーが、個体と個体が安定した関係を維持できる数の認知的上限を発見し、人間にとってその数が150であったこと。限定個数にすることで、すべての服に細心の注意を払い、ディテールと品質にも高いこだわりを持っていることを意味します。そして2つ目は、ファッションを通して人々を結びつける〈ドゥーズィ〉のコミュニティを発展させること。ビジネス的に成り立たないのではないかという意見をよく聞きます。でも、あえて個数にこだわり、”品質”を最大の価値としているので何も心配はしていません」


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大規模の会社ではなくあくまで小規模で、自分の目の届く範疇の中でブランドを展開していく。それは”150”という確かな計算に裏打ちされた理念があってこそのもので、今までにない新しい形態であり、インディペンデントなブランドではないだろうか。さらに言えば、母国以外でブランドをスタートさせるのも稀なことのはず。では、何がスティーブ氏をそうさせたのか。

「来日した時、母国(イギリス)で起きていることが日本でも起きているのを見て悲しくなりました。それは、大規模の工場が増えたことで、伝統技術を担う職人の数が劇的に減少したこと。アジアなどの海外生産の価格は、日本よりも圧倒的に安いため、結果的に職人の賃金をかなり安く支払うことになり、それが派生して、多くの若者の間で、職人は儲からないというレッテルを貼られることになって、後継者もいなくなるという、もう負の連鎖ですよね。それから10年、僕はかつての職人が勢いを持った時代に、何かしらの形で戻したいと思ったんです。それと同時に、このまま続くであろう国内生産が低下する様子を、ただ指をくわえて見ている傍観者ではもはやいられないと思いました。それでDoozy Inc.を立ち上げたんです。ただ、予想していた以上に、真の職人さんを見つけることは難しく、納得いくまでは、相当長く厳しい道のりでしたね。でも今一緒に働いてくれている方さんたちにはとても満足していますし、自信を持って紹介できますよ」

よく耳にする、”服好きが高じてブランドを始めました”的なアプローチではなく、母国や日本に根付く産業に一石を投じたいという、特異な視点でのブランディングが面白い。そして2013年8月から本格的にスタート以降、ゆっくりではあるが着実に前進している〈ドゥーズィ〉。最終的な着地を何処に置いているのだろうか。

「まずはブランドを多くの人に知ってもらって定着させること。その次の段階としては、デザインソースを進化させて、新しい機会を作りたい。それはアメリカやイギリス、日本の職人が友好な関係を持つことでもあります。今の〈ドゥーズィ〉は日本の職人さんが主ですが、イギリスやアメリカの職人さんにもお願いしたい。広く言えば、世界における手染めの技術を深く掘り下げようとしています。そして紺紫である茄子紺のような、忘れられていたインディゴを普及させようと思っています。とにかく、単純に素晴らしい人々と本当に価値ある生地ともにモノづくりを続けること。クオリティに対してこだわるけれど、そんなに慎重になりすぎず、本当に良いものを追求していくつもりです。なので、まだまだ終わりは見えないですね」

〈ドゥーズィ〉は、服はもちろん、スティーブ氏のパーソナリティや人間性が表現されたブランドといえる。大量生産・大量消費的なファストファッションのブランドも増えているが、あえてその真逆を行き、徹底して丁寧なモノづくりを続けることで、「本当にいいものを知ってもらいたい」とはスティーブ談。まさに「スティーブワールド」が堪能できる、希有なブランドではないだろうか。最後に同ブランドが現在展開しているプロダクトを紹介。初号機となるアイテムから新作まで、すべてオンラインにて購入可能だ。


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'Dharma Blue' ¥22,950 in TAX
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〈ドゥーズィ〉がスタートして初めてつくったのが、このスウェット。極上のオーガニックコットンと抜群のフィット感。やわらな肌触りからは想像のつかないタフなつくりで、ひとつひとつ手作業で染められたスウェットはそれぞれが独特の色合いを持つ。全シーム部分には2本針ストラドルステッチ、首周りはネックテープで強度をプラス。ヘム、首周りのリブにはスパンデックスを5%使用し、伸びダメージを最小限に抑えている。150着のみ。


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'One Fifty' ¥12,690 in TAX

オーガニックコットンをシャトル織りで仕上げた一枚。ユニークなダイヤモンドシェイプのロゴは、1950年代に初めてプリントされた地方労働者のためのTシャツや、同時代に見られた木製クレートのブランドロゴや焼印にインスパイアを受けたもの。首周りは補強テープ、ストラドルステッチで強度をプラスし、アームホルダーにはダーツを入れフィット感を高めた。150着のみ。


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'Suzie Q' ¥12,690 in TAX

1950年代、アメリカで一時代を築いた無敗のプロボクサーでヘビー級王者のロッキー・マルシアノ。彼のスポンサーだった乳製品メーカー〈サニーハースト・デアリー(Sunnyhurst Dairy)〉のシャツをソースにした一枚で、その復刻版。ボディはオーガニックコットン100%。首周りは補強テープ、ストラドルステッチで強度をプラスし、ヘム部分は2本針ステッチでたたいている。150着のみ。


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Crewhand Classic ¥24,840 in TAX

1940年代のハードワーキングスタイルからインスパイアされた第2弾となるスウェット。前後ともに汗止めを付け、さらに先端部分は本縫いを入れる細かさ。ラグランスリーブにすることで肩周りのストレスをなくし、よりフィット感を高めた一枚。ボディはもちろんオーガニックコットン100%。150着のみ。7月1日より発売開始。直接メールで事前予約も可能。