「無理に格好つけたところがない筆致がいい」(藤原)
−藤原さんは内田さんのグラフィティをどのように見ていらっしゃるのでしょうか?
藤原:いわゆるスプレーを使ったヒップホップっぽいものよりも、僕は内田さんが書いていらっしゃる雰囲気のほうが好きですね。筆致がちょっとパンクなところがいいな、と。あの何もないボストンに4年間住んでNYに頻繁に遊びに出かけて、何かを吸収しながらグラフィティを書いているという流れも面白い。僕も放浪とまでは言いませんが、海外に行って自分なりにいろんなものを見るのが好きなので。わりとベーシックに好きなものは似ていると思います。
内田:嬉しいですね。特に今回のTシャツに関しては、パンキッシュな感じで書いてみました。勢いに任せる部分はすごくありましたね。
藤原:ヒップホップっぽいものも書けたりするの?
内田:描けないですね~。いま書いているようなスタイルのものばっかりです。意識としては「グラフィティ」というよりも「自分の文字」をただ書いているだけなんです。落書きに近いのかな。
藤原:確かに「グラフィティ・アート」と呼ぶのは違うかもしれませんよね。
内田:そういう目線で始めていないからですね。「グラフィティ・アート」は見ていてすごくいいな、と思うのですが、それをそのままやりたいとは思っていなくて。僕自身はただ書いているのがすごく楽しいだけなんです。誰かに手紙を書くような文字をそのまま発表しているという感じです。
藤原:内田さんの文字は無理に格好付けている感じがないところがいいんだよね。素朴な感じというか。
内田:気取るのはできないですね。それでもある程度は考えないとできないし、考え過ぎるとできないという感じもあって。あるとき、飽和点みたいなものがふと、くるんですよね。「もういいや、やってしまえ!」と思って、やってみると意外とスッと書けたり。図らずも自分が思っていた雰囲気になったりもしますね。「格好良く書こう」と思って、狙ってやってしまうと大体いいことが起きないんですよね。最初の一筆目とかは力が抜けていて、いい雰囲気だったりします。
藤原:スプレーとかは使わないの?
内田:最近ちょっとずつ使い始めています。大きなスペースに描こうとすると、ペンではとてもじゃないですけれども追いつけないので、そういうときはスプレーを使うこともあります。
−藤原さんはグラフィティのような落書きは普段から書かれますか?
藤原:デザインのギミックとして、手書きをするときは筆ペンを使いますね。普通に文房具屋さんで売っている日本製の筆ペンの書き味が好きです。僕は字が下手なので、普通に書くとパンクっぽくなる。
内田:あははは(笑)。
藤原:英語を書けばオリエンタルな感じにはならないし。筆ペンはトライしたことはないですか?
内田:まだないです。毛先がふにゃふにゃするのが過去にしっくり行かないなと思ったことがありまして。
藤原:じゃあ、強いストロークで書いているの?
内田:スピードが早いんですよね。筆圧と手の角度だけで文字の軽い感じとか、どっしりとした感じとかは作っています。今回のTシャツで描いた文字の品種名部分は、書くのに数秒もかかっていないと思います。「サイコプシスカリヒ」っていう名前なんですけれども。
藤原:名前もちょっとパンキッシュな感じですよね(笑)。
−最後におふたりの今後のご活動について教えてください。
藤原:「the POOL aoyama」が来年春でクローズするので、次の新しいお店や展開を考えています。また、そのときに内田さんにはお手伝いをしていただきたいと思っています。
内田:はい。是非、宜しくお願いします! 僕は新たな展開はいまのところ考えていないです。植物を大事に育てて、お客さんとの会話を楽しみながらお店をやっていくのが身上です。イベントなどで東京に呼んでいただくことがあり、東京にお店を出さないのか質問をいただくことがあるのですが、そういったことは今のところは考えられないですね。生まれ育った福岡の地は、東京と違って、時間の流れがゆったりしているところが僕の肌に合っていますし、蘭を育てる環境としても良いと思っています。福岡は美味しいものがいっぱいあるので、観光がてらお店に遊びに来ていただきたいですね(笑)。
藤原:本を作ったりはしないの?
内田:あ、それはいろんな人に言われるんですよね。いつも頭の片隅にはあるのですが、目の前の業務で忙しくしているのでまだきちんと考えられていません。どこかのタイミングで作りたいなと思いますね。
藤原:写真と文字だけでもいいと思います。
内田:今回やらせていただいたTシャツも写真の上に書く作業がすごく楽しくて。この仕事の後にNYに行ったのですが、そのときも自分で適当に写真を撮って、写真の上にバァーっと文字を書いていましたが作業がだんだん楽しくなってきました。
藤原:分厚い植物図鑑を全部手書きで書いてみるのもいいよね。
内田:それは素敵なアイデアですね。蘭の種類が原種だけでいくと2万8千くらいあるので、書く作業が途方も無い感じで生涯かかりそう(笑)。
藤原:蘭だけに絞らずに「好きなもの図鑑」みたいなものも面白そうだよね。各々の絵は写真にして、そこに内田さんの手書きの文字を添えてみるのもいいと思う。
内田:「好きなもの図鑑」は楽しそうですね。そのような感じに近いことをZINEでやってみようかな、と思案中です。クルマがすごく好きなので、クルマのお尻だけを撮っていて、それにバァーって書いています。
藤原:クルマはどんなものが好きなの?
内田:アメ車のピックアップトラックとかが好きですね。
藤原:ピックアップトラックにそういった文字はちょっとハマり過ぎちゃいそうな気もするよね。
内田:なるほど。ここ最近はずっとクルマにハマっていますが、藤原さんは最近興味を持っていることはどんなことですか?
藤原:僕も最近NYに行ってきたのですが、マッドバリという写真を撮って、映像を作る若いクリエイターのチームとずっと一緒にいたんです。海外の若いクリエイターがしっかりと地に足を付けて自分たちで会社を経営しながら、クリエイティブなことをやっているエナジーがすごく良くて刺激を受けました。そういったところが日本とずいぶん違うなあと思いますね。自分のやりたいことをインディペンデントにやっている人に出会うと影響されますね。海外で出会った感動や衝動を活動に活かしていきたいです。
「→YOICHIROUCHIDA×the POOL aoyama」カプセルコレクションは、9月19日(土)より、
「the POOL aoyama」店舗にてスタート。
the POOL aoyama
住所:東京都港区南青山5-12-24シャトー東洋南青山1F
問合わせ:ジュンカスタマーセンター 0120-298-133(10:00-19:00 日曜定休)
THE-POOL-AOYAMA.COM