ー〈シュナイダーマン〉はどんな想いのもとに生まれたブランドなんですか?
ジョエル:スウェーデンには〈アクネ ストゥディオス〉や〈アワーレガシー〉を筆頭にトータルでウェアを提案するブランドがたくさんありますが、シャツにフォーカスしているブランドは僕の知る限りなかった。それが〈シュナイダーマン〉をスタートさせた大きな理由です。
ーこのブランドを始動する前はどんなことをされていたんですか?
ジョエル:スカンディナビアの法律事務所で弁護士をしていました。
ー現在とは真逆と言っていいほど、違うことをされていたんですね。
ジョエル:そうなんです。しかし、僕の家族はベルトやテキスタイル、アクセサリーなどをつくる会社を経営していて、ファッションは幼い頃からなじみ深い存在でした。そういった背景があったからこそ、この仕事をやってみようという気になったのかもしれない。あと〈シュナイダーマン〉には僕ともうひとりパートナーがいて、彼と意気投合したことがブランドをはじめる大きな原動力となりました。
ーそのパートナーは、どんな方なんですか?
ジョエル:〈アクネ ストュディオス〉でクリエイティブの仕事をしています。しかしそこ以外にも表現の場を求めていたので、それならば、ということで一緒にやることになりました。
ーシャツというアイテムに照準を絞ったのはどうしてなんですか?
ジョエル:シャツが好きだから、という理由しかありませんね。カジュアルでもフォーマルでも、どんなオケージョンにも対応する力をシャツは持っている。誰にとっても普遍的な存在だからこそ、こだわる部分が多いと思うんです。
ー襟の型やフィットが変わるだけで、アイテムの表情も大きく変化しますもんね。
ジョエル:〈シュナイダーマン〉のクリエーションは、あくまでクオリティ重視でいきたい。「Less Is More(少ないことは、豊かなこと)」という言葉で表せるような、装飾的な豊かさではなく中身の充実さを目指したいと思っています。そうして幅広い人に愛されるシャツをつくりたいんです。
ーなるほど。逆に言えば、シンプルなものほどデザインのごまかしがきかない分、良質なアイテムをつくるのは決して簡単なことではないですよね。具体的にどんなところにこだわってデザインを手がけていますか?
ジョエル:上質なクオリティの生地やボタンを使うこと、そして快適に着られるようなフィットに仕立てることです。世界中の生地のなかから頭の中で描いているデザインに相応しいものを選んだり、イタリアの上質なボタンを使用したり。フィットに関しては常々微妙にアレンジして、快適でそのときの気分に合うシルエットになるように心掛けています。新しいものを創造するというよりは、本質を追求することに力を注いでいるんです。ベーシックに対する情熱。これを絶やさないようにすることが重要だと考えています。
ーもの作りの職人が、クラフトマンシップを大事にするのと似ていますね。
ジョエル:そうですね。しかし一方で、自分のこだわりが一方通行にならないように気を付けなければならない。表現が偏り過ぎて、誰にも受け入れられないものをつくってもしょうがないですから。