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SLANT × Ryuichi ISHIKAWA 写真家・石川竜一が踏み入れた、“サバイバル登山”という新境地。

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気になったものを撮っていくだけ。

ーこれまでは沖縄のストリートで写真を撮ってこられたと思うんですが、フィールドが変わることで写真へのアプローチは変わりましたか?

石川:写真を撮るという行為については変わらないですね。ただ、見慣れた街にあったものが全くなくて、まず自分がなにを見ていいのかわからなくなった。山に入って、人もいないし、ハンバーガーも写せないし、みたいな。「俺、なに撮るの。なんもないでしょ。木しかない」。それからですね。森でも街でも同じで、ただ気になったものを撮っていくだけ。」

ー全く初めてで、且つ過酷な環境での撮影。1回目の結果はどうでしたか? 思い通りに撮れていましたか?

石川:撮れてないですね。思い通りが……まずないっていうのもありますし、まず、カメラも身体も普段の動きはできないので。服部さんからは、泊まってそこで生活する分には何日いてもいいし、その中で写真を撮ることもできると言われたんですけど、登山は歩き抜くことに目的があるので、じゃあ、その歩く中で僕はなにが撮れるのか、ですからね。

日村:僕も竜一くんが撮ったらこんなんだろうな、みたいな想像はできなかったので、最初にポンって出てきたときは「おっこれか」みたいな感じで、すぐに「いいね」というのはなかったです。でも、それなら、俺はなんだったら満足なのかというのもわからない状態でした。

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ーでは、この時点では写真集を作ろうとはなっていなかった。

日村:まだわからなかったですね。感じるものはありましたけど、これで果たして出せるのか。2回目どうなるんだろう、カメラも調子悪くなって、竜一くんも行きたくないとか言ってるし(笑)。「もう死ぬ、絶対死にます、もうほんとに死ぬから」って。細かいシチュエーションを聞いたら、たしかに「あっこれヤバイな」と思いましたけど。

石川:おかしいんです。ほんとそう思いますよ。山から降りてきて、この人、ほんとにどうにかしてると思った(笑)。

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ーそんな過酷な2回目の登山から無事生還して、あらためて写真を見た時はいかがでしたか。

石川:撮ってるときも、自分でなに撮ってるかわからないんですよ。とにかく、ちょっと気になったから撮ってみようかって感じで。だから、あがってきた写真を見ても、なんなんだろうみたいなところがあって。

ーそれは、日村さんも同じような気持ちですか。

日村:いまはいいと思うし、もっと見てみたいと思いますけど、完成のイメージがない分、出てきたものをすぐに消化できなかったですね。

石川:けっこう見返して、何回も選びなおして「こんな感じなんじゃないか」って日村さんに送って、「やっぱり、こんな感じじゃない」を繰り返していく中で、「ああ、わかってきた、わかってきた。これだ、これだ」って。

ーふたりのやり取りの中で浮かび上がってきた作品で構成をした、と。

日村:基本的には竜一くんですね。僕は大まかなセレクトを見せてもらって、そこから絞ってく段階になった時に、僕がいいなって思った写真はバスバスなくなっていて。服部さんも「あっここはシャッター切るだろうな」って思ったところを絶対撮らなかったって言ってましたね。そこは、独自の視点があるんでしょうね。

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ー写真集に服部さんのポートレートは収められていないですよね。撮影自体はされているんですか?

石川:なんでも気になったら撮ってるんで、その中には服部さんも写ってますね。

日村:服部さんもびっくりしたんじゃない。最初に写真集を見たとき。

石川:俺、写ってねえって(笑)。

日村:「たぶん、あのカットに俺、入ってるんだろうなあ」と思って開いたら、「えーーー入ってねえ」。

石川:まとめるとき、日村さんとはじめにした話で頭の中に残ってることがあって。服部さんや、登山を説明するような写真群になったらダメだなというのがあったんですよ。服部さん自体が影響力を持ってるから、それを入れることは、普通に道を歩いてる人を入れるのとはぜんぜん意味が違う。服部さんの山での生活を追いかけるだけでも1冊できるけど、そうじゃない。僕がサバイバル登山の中で、なにを見て、なにを感じたか。やっぱり、中心はそうなっていきますね。

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まだ続けてもいいかなって思える。

ー続編の構想などは考えているんですか?

日村:今回はきっかけが僕だから、「SLANT」で形にしましたけど、あとは竜一くんのものなので、他から出すかもしれないです。ただ、3月から服部さんと山に入って、撮りに行くというのは聞いています。写真集は半年経っても一年経っても、次が出るまでは1作目は廃れないじゃないですか。僕が他の作品でもシリーズものをやっているのは、そういう意図もあるんです。写真集って話題になっても、半年後には「ああ、あったね」なんて、忘れられるのも早いですよね。でも、こんなにいいもの、自分たちもワクワクしたものだから生かしておきたい。1冊目とは直接繋がらないものになるかもしれないけど、来年の春くらいに出せたらいいと思っています。

石川:かなりイメージできてるじゃないですか(笑)。僕の中では、まだ収拾がついてないというか、可能性、余白があるから、まだ楽しめるかな。自分が山でどういうものを撮るかっていうイメージがつかないことが、まだ続けてもいいかなと思える理由です。

日村:写真集って1回出して、また別のテーマで出しての繰り返しが多いんですよね。それよりも、今回の作品はすぐに理解できないけど、なんとなく面白いなって楽しんでもらって、1年後、2年後かもわからないけど、続編が出てトータルで見たときに、より楽しんでもらえればいいですね。長い時間をかけて、みんなで一緒に価値をつくっていく。そこに竜一くんでやるからこその意味もあると思います。

ー今後の動向も楽しみですね。

日村:そうですね。同じものにはならないとは思っています。竜一くんが死ななければ、ですけど(笑)。

石川竜一 CAMP
haveAnice…gallery(台北)
住所:台灣台北市富錦街455號
日程:2016年3月18日~3月27日
時間:12:00~19:00(入場無料 会期中無休)

Opening Party
2016年3月18日18:30~

Gallery Talk
石川竜一、川島小鳥
日程:2016年3月19日
時間:14:30~15:00

同時開催
「考えたときには、もう目の前にはない」 石川竜一 展
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野
住所:神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1-17-3
日程:2016年1月30日~2月21日
時間:10:00~18:00(入場無料 会期中無休)
展示会場では「CAMP」作品も一部展示あり。
http://artazamino.jp/event/azamino-photo-20160221/

企画・主催:SLANT
協力:服部文祥、WAG gallery、haveAnice…gallery、株式会社モンベル、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、株式会社カシマ、横浜市民ギャラリーあざみ野

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