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〈スント〉のプロダクト・フィロソフィーに迫る。遺伝子に織り込まれた探究心。SUUNTO 7R KAILASH

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ーご出身は、〈スント〉の本社所在地であるフィンランドなのでしょうか?

はい、その通りです。

ーフィンランドというと、デザイン先進国というイメージがあります。

デザインを正しく評価し、楽しむという文化は広く根付いていると思いますね。

ー日本においては十分に理解されている分野ではないと感じます。私自身も勉強中です。

私たちの国では、デザインを特別なものとして捉えていません。目的があり、それにフィットする形状や素材を選ぶという概念を、あくまで日常的に考えています。幼い頃から親しんでいるからかもしれませんね。

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ー今まで〈スント〉で手がけてきたプロダクトについて教えてください。

〈スント〉はもともとダイビング機器からスタートしたブランドですが、今では様々なカテゴリが存在します。その中で、ダイビングやアウトドアカテゴリの数多くのモデルや、〈スント〉の代表的なモデル「コア」や、GPSウォッチ「アンビットシリーズ」など、数え切れないくらいのプロダクトを手がけてきました。現在はライフスタイルカテゴリのチーフデザイナーとして日々業務に携わっています。

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ー今回発表された「7R」というシリーズは、“全人口の20パーセントのみが持つ冒険的な性向をもたらす遺伝子”という斬新な切り口を冠していますが、コンセプトメイキングから携わったのでしょうか?

コンセプト設定段階からプロジェクトに参加しています。かなり早いタイミングで「7R」というキーワードは決定していました。〈スント〉は、さまざまなシーンにおける「アドベンチャー」をサポートするブランドですが、今回の「7R」というシリーズに関しては、日常のあらゆるシーンがアドベンチャーであるという思想に基づいて設計され、それに伴いライフログ機能が搭載されました。

ーKAILASHの特徴や、既存のモデルとの差異などを教えてください。

ディテールや素材などは既存のモデルから大きく変更しています。チタンの採用が特に印象的かもしれません。デザインは、とにかくシンプルかつミニマルに徹しました。ライフスタイルの中にいかにこのプロダクトを溶け込ませるか、ということを意図しています。ただし、「コンパス」という、〈スント〉にとって重要なモチーフを象徴する文字盤のスリットは踏襲しています。また、腕時計の「重み」は、時計ファンにとって重要なファクターだったりもするのですが、「KAILASH」は前述の理由から、デイリーに使用できるように重量を抑えています。

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SUUNTO KAILASH ¥130,000

ーいまのお話とも関連しますが、プロダクトデザインを行う際の考え方やポイントについて教えてください。

ケースバイケースなので、やはり一概には言えません。コンセプトや用途が決定され、それに基づいて必要なファンクションやマテリアルが選び抜かれ、そしてそれらに呼応するようにデザインが総合的に立ち上がっていきます。プロダクトデザインは、「どのように使われるか」を重視するという点で建築デザインとよく似ています。

ーなるほど。〈スント〉の魅力は、無機物と有機物の中間のような、絶妙な塩梅のデザインにある気がします。ここにも何か意図があるのでしょうか?

ありがとうございます。その印象は私たちの意図するところです。都会的でソリッドな洗練と、有機的な温かみが両極にあるとしたら、その両立にトライするというのが〈スント〉の一貫したデザイン・コンセプトです。

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ー常に肌に触れているプロダクトだからこそ、そのバランスが丁度いいのかもしれません。すこし遡りますが、ティモさんがデザインの仕事に携わることになったきっかけについて教えていただけますか。

もともと〈スント〉に入社した当初はデザイナーではありませんでしたが、デザイナーと密接に仕事を行う中でその領域に興味を持ち、仕事をしながら勉強してデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。出身大学は4年制の一般的なスクールです。

ーそれは勇気付けられるエピソードですね。プロダクト・デザインの仕事に憧れる人は少なくないですから。

ラッキーだったとも思うのですが、最も大切なのは仕事に対する姿勢だと思います。ひとつひとつ真摯に取り組むことが一番ですね。こうして仕事で東京に呼んでいただけることを非常に嬉しく思います。

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ー私もそう心がけます。あとふたつ、質問させてください。デジタルウォッチの未来についての考えと、今後搭載したい機能などがあれば教えてください。

そうですね。使用されるシーンや方向性によってユーザーが求めるものは変化してゆきます。アウトドアとライフスタイルではニーズは大きく異なります。それぞれが独立した思想のもとに設計され、進化してゆくのではないでしょうか。

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ー異なる領域だとは思いますが、たとえばApple Watchについてどう考えていますか?また、〈スント〉がこれからそういったスマートウォッチ領域に参入する可能性などはあるのでしょうか?

誰にも未来のことはわかりませんが、〈スント〉は時計に集中してプロダクトメイキングを行っています。アップルウォッチはガジェットとしての機能が強く、〈スント〉の目指すところとは重なりません。使用される技術やアイデアは異なるものだと考えています。

ーなるほど。納得しました。〈スント〉のデザインフィロソフィーに関してはずっと興味があったので、今回伺うことができてよかったです。貴重なお話ありがとうございました。

スント カスタマーサービス TEL: 03-4520-9417
http://kailash.suunto-japan.jp