アンドレア・ウェスタリンド
スウェーデン出身。幼少期よりマウンテンバイクやトレイル・ランニングなどアウトドアアクティビティを楽しむ。2011年にショールーム「ウェスタリンド」を立ち上げ、2013年にはアクセサリーを中心にオリジナルアイテムの制作を開始。2016年春夏より都会・屋外に関わらず、生活にフィットするアパレルコレクションを展開する。
ーまず、〈ウェスタリンド〉のことについて教えてください。
アンドレア:「ウェスタリンド」はもともと、ショールームとしてスタートしました。アウトドアにおける機能性と都市生活になじむファッション性が融合したブランドを中心に取り扱っています。日本でもなじみ深いブランドだと〈テバ〉や〈スノーピーク〉、そして〈フィクチュール〉なども取り扱っています。いまはニューヨークでショップの運営も行っていて、そちらも順調です。
ーさらにアパレルウェアのブランドとしての顔も持っているんですよね。
アンドレア:そうです。わたしは体になじむ生地が好きで、ヘンプやコットン、ウールファブリックなどで仕立てたシンプルなデザインのウェアを展開しています。
ーなかにはストレッチ性のあるナイロン生地をつかったブルゾンもあります。
アンドレア:着たときの着心地がいちばん大切だと思っているので、肌触りがよかったり、ストレスを感じさせないものづくりを心掛けているんです。そういった意味でストレッチの効いたナイロンは抜群の効果を示してくれます。ナイロンといえばツヤがあって、ツルッとしたテクスチャーの生地が多いのですが、わたしたちが使っているのはコットンのような着心地の生地です。
ー“快適な着心地”もアウトドアにおいてはひとつの機能として成立すると。
アンドレア:そうですね。わたしたちのアイテムはシンプルにつくっているぶん、多機能ではありません。むしろテクニカルなアイテムは他のブランドからたくさんリリースされているし、わたしたちのショールームのなかにもたくさん存在します。だから、あえてバランスを取る意味でも〈ウェスタリンド〉はシンプルなアイテムをつくっているんです。機能的なウェアと、わたしたちのシンプルなウェアをコーディネートすることで、きれいなハーモニーが生まれるんじゃないかと思っています。
〈ウェスタリンド〉タンクトップ ¥11,000、スエット ¥18,000、Tシャツ ¥8,300(すべて スノーピーク 表参道)
ーアンドレアさんご自身のスタイルもシンプルで洗練されていますが、ルーツはどんなところにあるのでしょうか?
アンドレア:わたしはスウェーデンで生まれ育ったので、やはり北欧のクリーンなデザインやスタイルは自分のベースとなる部分です。そこにいまの生活から得られるさまざまな事象をミックスして、クリエーションを行なっています。いまはニューヨークで〈ウェスタリンド〉の活動を行なう傍ら、アメリカ西部のユタ州に家を買ってそこでアウトドアに勤しんでいますね。あと、ユタには昔ながらのカウボーイもいて、彼らのユニークなスタイルにも影響されています。
ーウエスタンファッションはトレンド的な視点でみてもすごく興味深いトピックだと思うんですが、カウボーイたちはいまどんな格好をしているんですか?
アンドレア:昔といまでそんなに大差はありませんよ。デニムジャケットにフランネル素材のチェックシャツ、そしてボロボロのジーンズ。頭にはツバの広いフェルトのハットを乗せて、足元はレザーブーツを履く。いい意味でずっとかわらないスタイルだからこそ、学ぶべきことが多いように感じますね。
〈ウェスタリンド〉スノーピーク別注カラーのハット ¥14,000(すべて スノーピーク 表参道)
ー〈ウェスタリンド〉の象徴的なアイテムのひとつにフェルトのハットがありますが、これは彼らのスタイルに影響されてつくったんですか?
アンドレア:そういうわけではなくて、偶然彼らのスタイルと重なる部分があったという感じです。ユタでは雪がよく降るんですけど、このハットはツバが硬めなので雪が積もっても顔が濡れる心配は要りません。逆に晴れの日も太陽の光から守ってくれるので重宝しますよ。通年で使えるアイテムなのでビーチでの日光浴にもおすすめです。
ー今回「スノーピーク 表参道」でポップアップイベントを行うようになった経緯を教えてください。
アンドレア:〈スノーピーク〉はわたしの大好きなブランドのひとつであり、ニューヨークで一緒に仕事をしている大切なビジネスパートナーでもあります。デザイナーの(山井)梨沙とは親しい友人のような関係で、お互いのモチベーションを高め合えるかけがえのない存在。そんな梨沙と「一緒にコラボレートしよう!」という話をしていて。それが今回この場所で実現することになったんです。
ーおふたりはどのようにして知り合ったんですか?
アンドレア:わたしがキュレーターを務めるトレードショーをニューヨークで開催していて、そこに〈スノーピーク〉を招待したのがきっかけです。〈スノーピーク〉はアパレルラインを始める前からの大ファンだったので、いまこうして一緒に仕事ができるのがすごく幸せですね。
ー最初に〈スノーピーク〉のアパレルラインをご覧になられたときの第一印象を教えてください。
アンドレア:とにかく素晴らしかったですよ。梨沙は幼い頃からアウトドアに慣れ親しんでいたこともあって、洋服のもつ機能性がしっかりと表現されていました。それにデザインはすごくシンプルで着やすく、ファッション性も抜群だったので、ひと目見てすぐにファンになりましたよ。
ーまさに一目惚れだったんですね。山井さん自身も「わたしと〈スノーピーク〉アパレルを育ててくれたといっても過言ではない」とアンドレアさんについて語っていたんですが、クリエーションに関してなにかアドバイスなどをされたりしたんですか?
アンドレア:とても嬉しい言葉ですね。でも、わたしはアドバイスなんて大それたことを言ったつもりはないですよ(笑)。ただ、アメリカのマーケットにおいて〈スノーピーク〉アパレルを打ち出すにあたっての意見を伝えただけで、それを咀嚼して上手に表現しているのは梨沙の力です。
ーおふたりの関係性が見えてくる素敵なエピソードですね。
アンドレア:きっとわたしたちは深い部分で共鳴しているんだと思います。梨沙のお父さまは〈スノーピーク〉の代表を務められているし、わたしの両親もおなじようにファッションビジネスをしているんです。それにお互い幼い頃から自然に恵まれた環境で育って、当たり前のようにアウトドアアクティビティを楽しんできました。
〈ウェスタリンド〉オックスフォードシューズ ¥35,000(スノーピーク 表参道)
ー育った環境が似ていると。
アンドレア:それに日本とスウェーデンは、デザインの感じ方や、美に対する感覚がどこか似ているような気がするんです。そういったセンスの一致が、わたしたちの関係を強固にしているように感じますね。