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Why Calvin Klein? なぜ今、カルバン・クラインが面白いのか。 クリエイティブ・ディレクターが語ります。

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イタロ・ズッケーリ
2004年春にカルバン・クライン コレクションのメンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任。2009年には、アメリカファッション協議会からメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤーに指名され、2010年にはファッション工科大学/FITよりモーティマー・C・リッター賞が授与された。

まずはイタロ・ズッケーリの人物像について。

ーまずはご自身が生まれ育ったイタリアのラ・スペツィアについて教えてください。

イタロ:ラ・スペツィアは海に囲まれた港町で、とても美しい場所です。この場所で幼少期を過ごせたのは、とても素晴らしい経験だったと思います。ただ、とてものどかな場所なので、思春期を迎えた頃の僕には物足りなさを感じることもありました。ミラノまで出向かなければ、最先端のファッションや音楽に触れることができなかったですからね。

ーそんなのどかな場所で育っていながら、なぜファッションに興味を保つようになったのですか?

イタロ:10代の頃にロンドンを訪れたのがキッカケです。1983年頃かな。当時のロンドンは、音楽もファッションもたくさんの新しいムーブメントが生まれて、とにかく盛り上がっていました。あらゆるカルチャー混ざりあって爆発しているようなイメージ。その衝撃が僕を変えてしまったんです。そもそもクリエイティブな世界に興味を持っていたんですが、その世界に身を置く決心をしたのはロンドンでの経験が大きかったと思います。

ー当時、イタロはどんなスタイルをしていたんですか?

イタロ:とにかく奇抜なスタイルでしたね(笑)。毎晩、ド派手なスタイルにドレスアップして、クラブに足を運んで…。もし当時、スマートホンがあればストリートスナップされていたんじゃないかな。それくらいクレイジーだったからね(笑)。

ーそういった経験を経て、ファッションデザイナーを目指すわけですね。

イタロ:ロンドンのムーブメントがイタリアに押し寄せてきたことで、イタリアでも自分らしいファッションを楽しむことができるようになってきたんです。ラ・スペツィアのような場所で生まれ育った僕にとって、それは新しい時代の訪れでもありました。そういった時代背景が後押しして、僕はフィレンツェのファッションスクールに進学したんです。

ー当時のイタロは〈カルバン・クライン〉というブランドに対して、どんな印象を持っていたのですか?

イタロ:斬新なアプローチにクリエイティビティ、そして独創性、すべてを兼ね備えたブランドだと思っていました。なによりも印象的だったのは、ブルース・ウェーバーによる広告。1983年のアンダーウェアをキャンペーン。これは今もなおブランドにおけるアイコニックなクリエイティブとして、たくさんのインスピレーションを与えてくれます。

ー〈カルバン・クライン〉の他にどんなブランドに興味を持っていたのですか?

イタロ:〈コム・デ・ギャルソン〉に〈ジャンポール・ゴルチエ〉、〈モスキーノ〉に〈ロメオ ジリ〉、〈ヴィヴィアン・ウエストウッド〉、80年代のロンドンで人気を博した〈ボディマップ〉というブランドもよく着ていました。

ーアヴァンギャルドなブランドばかりですね。

イタロ:当時の僕はかなりパンキーなスタイルでしたからね(笑)。

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カルバン・クラインが「DSM GINZA」を選んだワケ。

ーそんなパンキーなイタロが、なぜシンプルかつエレガントな〈カルバン・クライン〉のデザイナーとして働くようになったのでしょうか?

イタロ:それは僕の経歴にあると思います。〈ロメオ ジリ〉に〈ジル・サンダー〉でメンズウエアのデザイナーとしてキャリアを積んできました。パンクな精神を持ちながらも、服作りはとてもミニマムなんです。

ーヨーロッパでの生活を捨てて、アメリカに渡るのは大きな決断だったと思うのですが。

イタロ:確かにそうかもしれません。ただ、それ以上に魅力的な仕事のオファーをいただいたからこそ、決断にいたりました。メンズのデザイナーがウイメンズのデザインをする、というコンセプトに非常に興味を持ったんです。しかも、ニューヨークファッションにおける伝説ともいえるカルバン・クライン本人からのオファー。彼と仕事を共にするのは、想像するだけだけでもワクワクするじゃないですか。

ー現在はメンズのクリエイティブディレクターを務めているイタロにとって、アメリカを象徴するブランドをイタリア人が手がけることに疑念はなかったのでしょうか?

イタロ:今では世界の一流メゾンでさえ、さまざまな国籍のデザイナーがトップを務めているじゃないですか。アメリカ人のマーク・ジェイコブスが〈ルイ・ヴィトン〉を、イタリア人のリカルド・ティッシが〈ジバンシー〉を。異なる国のアイデンティを取り込むことによって、新しいクリエイティブを作り出すのは、もはや当たり前の時代なんだと思います。ブランドの本質を理解できていれば、どこの国の人でも良いのではないでしょうか。

ーちなみにクリエイティブディレクターとして、日本のマーケットはどのように見ているのでしょうか?

イタロ:とても洗練されたマーケットだと思います。感度が高いし、長い歴史で培ってきた経験や知識もある。僕自身、日本からはたくさんのインスピレーションを受けているんですよ。

ー〈Calvin Klein platinum〉の認知度の高さについてはどうお考えですか?

イタロ:コレクションラインと〈プラティナム〉では、ターゲットもブランドとしての規模感も異なるので一概にはいえません。ただ、ブランドとして認知されていること自体は、とてもポジティブに捉えています。今後、コレクションラインを再導入していくなかで、とても大きなアドバンテージになりますからね。

ー今回のカプセル コレクションも、再導入に向けた取り組みの1つなのですか?

イタロ:そういうことになります。ファッションコンシャスな方々にコレクションラインをアピールするために、「ドーバー ストリート マーケット」という特別な場所で行いました。将来的に東京では、コレクションラインをメインにした旗艦店のオープンすることも見据えています。そのスタートという意味では、とても素晴らしい第一歩になったと実感しています。

ー最後に今回のカプセル コレクションでは、〈カルバン・クライン コレクション〉のメンズコレクションのどういう面を見てもらいたいのか教えてください?

イタロ:カルバン・クラインの核となるベーシックな部分とモダンな解釈、双方を楽しんでもらいたい。シャープなシルエットに、素材のレイヤード、ハードとソフトの組み合わせ。さまざまな要素から〈カルバン・クライン〉のコレクションを堪能してほしいですね。

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