日本を代表する写真家、森山大道。現在、彼が小説家・太宰治へのオマージュとして選んだ作品を展示した写真展「DAZAI」が、原宿のアートスペース「AM」にて開催中。

太宰治のキャリアは1933年から1948年にかけてのわずか15年。その短い時間の中で、20世紀の日本文学に強烈なインパクトを残した文豪です。そんな彼の小説に森山大道が最初に触れたのは中学時代のこと。学校を厭い、ストリートを学び舎として映画や小説にのめり込んだ時期に、太宰文学に魅せられたそうです。

本展は、森山大道最新写真集『Daido Moriyama：DAZAI』の刊行とともに企画・開催。写真集では、彼の70年代から現在に至るモノクローム作品とともに、太宰の代表作の中の一篇『ヴィヨンの妻』が収録されています。

1947年に発表された『ヴィヨンの妻』は、戦後すぐの中野を舞台に飲み屋に入り浸り、つけも払わずに飲み屋の運転資金を盗むという自堕落な詩人の夫の姿を妻の視点で綴っていく短編です。太宰の小説は女性を描くときの文体が突出していると森山は言います。「『ヴィヨンの妻』をはじめとする太宰の小説は、僕が、嗅覚や視覚を通して感知し記憶した戦後のイメージと、ぴたり符合する」と森山。森山大道が考える太宰治の世界観、ぜひ会場でご覧ください。