"実用性と美しさを兼ね備えた"という枕詞を、近頃頻繁に耳にします。世の中における「人と物」の関係性は、さまざまな仮説と可能性を孕みながら変化の途上にあり、その模索の過程で人は前述のような価値を求めているのでしょう。"デザイン"の本来的な意義は「美」と「実」をつなぎ合わせる点にこそあり、この方向で社会が発展すれば、プロダクト・デザインの領域がますます洗練されていくのでは、と密かに楽しみにしています。

さて、そこで重要になってくるのが、一人一人が自分自身の「見る目」を養うということです。メディアを運営している立場でこんなことをのたまうのは恐縮ですが、周辺の演出を取り去って、その物単体を見つめたとき、素直にいいな、使いたいな、と思えるか。そしてそのとき、自分なりの判断基準を持つことができているのか。情報量が倍々ゲームで増え続ける現代において、これはたいへんに難しく、そして大切なことだと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、そんな時代性を象徴し牽引するブランドの一つに、〈チャコリ（CHACOLI）〉を推します。まずは御託を抜きに、以下ご覧ください。

リリースから間もないながら、神宮前の名店「グラフペーパー（Graphpaper）」において大きく取り扱われ、堅実な評価を得る同ブランド。今回、同ショップの別注により、A4サイズに対応するスタンダードな3型が、カーキとネイビーの製品染め仕上げによって展開されます。

絶妙なサイズの仕切りと持ち手の長さなど、緻密に計算されたかのような見事なバランス。既存の無骨なトートバッグとは異なる知的な印象を感じさせます。もちろん丁寧な縫製や上質なレザーパーツも魅力で、クリーンなイメージだけに終始せずきちんと人の体温が通っているな、と。素材にしっかりとしたハリがあるので、自立する点も気が利いています。

発売は、明日12月5日（土）から。モノの性質上、数をたくさんつくることができない、、、というのは決してコマーシャルワードではありません。冬のコートに品良く合わせてみてください。プレゼントにもオススメです。コツコツと突き詰められたブランド/プロダクトの価値がきちんと伝わるといいなあと願ってやみません。モノづくりの哲学・実学は一つの文化的資本であると、やや大げさなフレーズで締めくくりたいと思います。