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演出・豊田利晃と渋川清彦にインタビュー。台風連発のこの時期こそ見るべき舞台『怪獣の教え』が9月21日(水)より再演。

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横浜から六本木へと場所を変えて、『ポルノスター』『青い春』『ナイン・ソウルズ』を手がけた映画監督・豊田利晃による演出の舞台『怪獣の教え』が再演します。

窪塚洋介、渋川清彦、太田莉菜という豪華な出演者に加えて、映像+音楽+演劇=ライブシネマという臨場感あふれる形式で、横浜赤レンガ倉庫で公演を行ったのが2015年11月。そしてこのたび、規模を拡大し、9月21日(水)〜25日(日)にて、六本木で行われることが決定しました。

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ストーリーは以下の通り。

小笠原諸島の青い海。海の上を漂う一隻の船。船の上には二人の男。国家の秘密を暴露して、政府から追われる天作(窪塚洋介)。パラダイスで生きることの葛藤を胸に抱く、島育ちのサーファーの大観(渋川清彦)。天作は東京で事件を起こし、島へ逃げて来た。従兄弟の大観に船を出してくれるように頼んだ。無人島にでも隠れるのだろう、と大観は思っていた。しかし、天作の目的は別にあった。祖父から教えられた、『怪獣』を蘇らせることだった。一隻の船に乗り込むと二人は海へ出る。昨夜、二人はひとりの女性と会った。世界の島を転々としながら暮らす、アイランドホッパーのクッキー(太田莉菜)。クッキーは怪獣の教えの秘密を知っていた……。

直前ではありますが、演出家・豊田利晃さんと俳優・渋川清彦さんに見所や、前回との相違点、演劇の魅力についてお話を伺ってきました。

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(左)渋川清彦 (右)豊田利晃

ー豊田さんの小笠原諸島(以下、小笠原)での体験やサーファーとの出会いが、この物語のきっかけだとお聞きしました。

豊田:小笠原でひらめいたことや感じたことが物語の元になっています。小笠原という場所は、東京から丸24時間以上もかかるようなところで、ぼくにとっては別の惑星という存在です。時間の流れ、ライフスタイルもいわゆる“東京”とは違い、生活圏と自然との距離がとても近い。この物語は、そういう小笠原から見る東京の物語だとぼくは思っています。

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ー小笠原という場所だからこそ対比的に浮かび上がる“東京”の姿ということですね。横浜から六本木へと、場所が変わったことでなにか意識することはありますか?

豊田:前回は横浜赤レンガ倉庫という風通しもよい、気持ちのいい場所でした。今回は都心の六本木ということで、物語の性質上、ここでこそやらないとダメだろっていう場所だとは思っています。

ーなるほど、東京のど真ん中ですからね。そのほか内容や気持ちに変化はありますか?

豊田:内容でいえば、新しいシーンがひとつ増えたり、映像や台詞はちょこちょこ変わっていますね。あと場所が大きなスケールに変わったことで、スクリーンは倍近くになり、客席は3倍に。それに合わせて見せ方を変えています。

渋川:ぼくの場合は、演技のいろいろな面で精度をあげていく感じです。

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ー豊田さんは映画監督として何本も撮られていますし、渋川さんはいくつも映画に出演されています。映画と演劇のちがいはなんでしょうか?

豊田:映画は監督のもの、演劇は俳優のものだと考えています。舞台はひとたび始まってしまえば、あとは俳優のスタイルや考え方が表れてくるものだと思うので。演出だけだと舞台が始まってしまうとやることがあまりなくなってつまんないので、ぼくは映像やってます(笑)。

渋川:極端なこといってしまえば、俳優が最後の台詞をぜんぜん台本とはちがうものにしちゃっても誰も止められないんですよ。

豊田:たとえばこの舞台でも、そこでオチ飛ばすか! っていうハプニングもあって(笑)。長い台詞のなかでずっとボケてボケて、最後にオチがあったんです。でもそこを飛ばしてボケたまま終わる、なんてこともありましたね(笑)。

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ーそれも舞台の醍醐味ですよね。でも、ストーリーを拝見すると、てっきり社会性が強そうなイメージでした。

渋川:笑いは絶えませんよ。そこは豊田さんは、やっぱり関西人ですからね(笑)。

豊田:(笑)。まあ、やっぱり劇場内が静まりかえっているとさびしいですから。

ー前述みたいなハプニングも含めて、生のよさが演劇のよさといわれますが、その魅力はなんだとお考えですか?

豊田:若いころよく見てたのが、演劇の維新派、ダムタイプで、いわゆる伝統的な演劇は苦手だったんですよね。自分自身、(中村)達也さんたちとTWIN TAILというユニットでライブを10年以上やっていて、そこに俳優がいたら楽しいんじゃないかというのが今回のスタートでもあるんです。そして、生のよさというのもやっぱりあって、気持ちがあがるんですよ。ライブはやってて楽しい。その日で結果がわかりますしね。映画は何日もかけて構築するものですから。演劇の場合は、失敗しちゃっても、乗り越えていけるという。

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ー最後に、物語に登場する“怪獣”はなにを象徴するんでしょうか?

豊田:大いなる力。いわば地球の力だと思っています。ひとは地球を破壊して、都市を造ってきた。そのツケがいま回ってきているのは明らかだと思うんです。小笠原は台風銀座といわれるくらいですからね。圧倒的な地球の力を感じられたのが小笠原だったんですよ。そんなものを象徴しているとぼく自身は考えています。

大いなるテーマをはらみながらも、俳優だけでなく、音楽、映像によって五感を揺さぶり、物語へと観客を引き込むこちらの演劇。俳優の生、音楽の生、映像の生を重ねていくことでそのボルテージはほかの劇作品ともひと味ちがったものになるでしょう。台風が次々と襲来するこの時期に、この劇が公演されるというのは、はたして必然か、偶然か。劇場の外へと続くかのような、その物語をぜひ体感してみてください。9月21日(水)〜25日(水)にて、「Zepp ブルーシアター六本木」にて。

Photo_Ryo Mitamura(豊田利晃&渋川清彦)
Text_Shinri Kobayashi


怪獣の教え

日程:9月21日(水)〜9月25日(日)
会場:Zepp ブルーシアター六本木
演出・脚本・映像:豊田利晃
出演:窪塚洋介 渋川清彦 太田莉菜
音楽:TWIN TAIL
中村達也(Dr) ヤマジカズヒデ(Gt) 青木ケイタ(Sax&Fl) / GOMA(Didgeridoo)

kaijuno-oshie.com

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